第184話
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番組のオープニング曲は『シャイニングパラダイス』。
シャイニングボーイズのみなさんがスケートボードに乗って登場すれば会場は一気に盛り上がる。
『……ぱらだ〜いす〜〜♪』
終わりの決めポーズもバッチリ。当たり前だけど、以前よりも動きが滑らかで安定している。
『きゃーアイキく〜ん』
『カイキ』
『サイちゃーん』
『ダイキくーん』
今日の観覧者は番組の関係者だけだと聞いていたけど、それでも彼らのファンは多いようだ。
曲が終わればスタッフさんが即座に動き、彼らの使っていたスケートボードを撤収する。
——あれは念動かな……
念動を使った片付けはとてもスムーズだ。その間、歌い終わった彼らは笑顔を振りまきながらゆっくりとスタジオの中央に移動すれば番組がはじまる。はずだったが、未だに観覧者に向けて手を振ったりウインクしたりしていたよ。
ファンサービスなのだろうけど、番組的にはカットになるのかな? 渡されていた台本とちょっと違うな。
でも、スタッフさんはストップしていないからこのまま待つしかないんだけど。
——ん!
観覧者席から俺のことを見ている香織さんやミカ先生、アヤさん、ミルさんと目が合った、気がしたのでそちらに顔を向けたら、みんながすぐに手を振った。
シャイニングボーイズのみなさんではなく俺の方を見てたのか……
——そうか……やばい、これはうれしいかも……ん、あそこの人……
シャイニングボーイズの後輩にあたる星河輝隊が見学に来ていると聞いていたけどあの人たちかな?
少し離れて座っている3人。マスクにサングラスをかけていて怪しさしかないけど……
たぶん関係者だからかな? 誰も気にしていないようだ。
「みんな〜元気してたかな」
「今日も、俺たちシャイニングボーイズが頑張っている君(女性)を応援するからな」
カイキさんがそう言ってから、カメラに向かって指先を向けウインクする。
「ちょっとカイキ。応援したいのは俺っちたちだけじゃないよ……ほ、ほらよく見てよ。来てくれてるよね? 今日のゲスト」
「そうだな。おいアイキ」
たぶん彼らはいつものくだりだったのだろうけど、早く進めろ、というマリさん(南野マネージャー)から指示を途中で見たアイキさん、カイキさん、サイキさん、ダイキさんの4人が一瞬だけ目を見開く。
すぐに平静を装った、つもりのようだけど表情が堅くなっている。
動揺したのか、サイキさんはちょっと噛んでいたようだし……
でも、そのまま続けているって事はオッケーなのだろう。
「そうだね、ではさっそく! 本日のゲストは……」
アイキさんの合図でカメラがゲストの方に向けられた。
「どうも〜紫ゆうです」
紫さんがカメラに向かって両手を振る。
ゲストの1人は『うたコラボ』でも共演したことのある紫さんだ。
収録前にちょっと挨拶したけど、4月から始まったドラマ『ドクターコトリ』の番宣も兼ねてきたのだとか。
俺はドラマ見ないから知らなかったけどメンバーのみんなは知っていた。
紫さんから「このドラマでは主役の女医をしてるから時間が合う時は見てほしい」って言われた。
そうだよな、共演者のチェックくらいはしていないと失礼だよ。申し訳ない事をした。
一言二言くらいは、MCのシャイニングボーイズと話でもするのかと思えば、カメラはあっさりと次のゲストへと移る。
紫さんも、えっ!? というような顔をしているけど、いいのかな……?
「崎宮麻子です」
崎宮さんは大人びて見えるけどまだ大学生らしい。そんな崎宮さんは椅子に座ったまま、どこからか取り出したけん玉を持って……決めポーズ? カメラに向かってけん玉を構え鋭い視線を向ける。
なぜそんなポーズをしたのだろう、とその時は思ったけど、どうやら崎宮さんも紫さんと同じくドラマの番宣を兼ねて出演したらしく、早速番組の宣伝をしようとしていたってわけだ。
でもその時、シャイニングボーイズのみなさんは何事もなかったようにスルー。けん玉も触れる事なくスルー。崎宮さんは驚いて目を見開いていたね……
ちなみに、そのドラマは学園を舞台にしたアクション学園ドラマ、学園シリーズの2作目で『桐の花学園II』というらしい。
月影陽子と日向陰子の2人がヒロインで病み落ちした生徒会『病徒会』と戦う。
崎宮さんはその月影陽子役で、陽子の扱う武器がけん玉なのだ。ちなみに日向陰子はおはじきだ。
強そうにみえないけど、そのドラマを楽しく見ているツクシが言うには、毎回、けん玉とおはじきを飛ばしてバッサバッサと病徒を倒していく派手なアクションは見ていて爽快らしい。
俺は見たことないけど特撮ヒーローみたいな感じなのかも。
そんな崎宮さんとも楽屋で挨拶したけど、俺は蚊帳の外だったんだ。視界にも入れてもらえなかった。
俺の挨拶はスルーされたけど、ツクシたちとは普通に接していた。
心当たりはないけど、知らない間に嫌われることでもしたのだろうか……
そして最後は俺たち武装女子。
「武装女子のタケトです」
「シマです」
「ナコです」
「チコです」
「ツクです」
挨拶は5分程度なら自由に話していいと言われていたけど、この流れでは5分も話せない。
先に挨拶した先輩方に倣って簡単な挨拶に留める。
俺たちには宣伝するような番組はないんだけど、せっかくの機会、俺は今日のためにサイキックスポーツの映像を撮影してきている。
サイコロはまだダメだけど、他のサイキックスポーツのをね。俺が各競技に挑戦している映像だ。
ちなみにこの映像はミュージックビデオにも使ってもらえることになっている。
「紫さんと崎宮さんは女優だけでなく歌手としても活躍しているんですよね」
「そうそう。俺っちたちシャイニングボーイズが所属する事務所の先輩で、今日は俺たちのために来てくれたんだよね」
俺たちが挨拶を終えたタイミングでカメラら再びシャイニングボーイズに移り、アイキさんとサイキさんが補足をする。
自分たちのことに触れてもらった瞬間、紫さんと崎宮さんが何かに期待して、その瞳を輝かせていたけど、
「そういえば、みなさん知ってますか? この番組には初めて来てもらえましたが俺たちと武装女子のみなさんとの共演は2回目なんですよね」
すぐに俺たち武装女子の話しになり肩を落としていた。
カイキさんの言葉にシャイニングボーイズのみなさんが頷きそこでゲストの紹介は終わる、かと思いきやカイキさんは言葉を続ける。
「武装女子のみなさんの曲はどれもサイコーで俺たちも大ファンなんですよ。
ボーカルのアニ……タケトさんの歌声がホントサイコーで痺れます。聞いたことないみんなは是非聴いてみてください。
他にも最近ではサイキックスポーツのイメージボーイに抜擢されて活躍されていますね。
実は俺たちもサイキックスポーツには興味があったんですよね。必要な時には是非声をかけてください」
カイキさんだけじゃなく、他の3人も頷き同意していたけど、いやもう。聞いている俺たちはとても居心地が悪かったよ。
というのも、紫さんは笑顔だけどあれは苦笑い。
そして、崎宮さんからは初めて顔を向けられたけど、ものすごく睨んでいた……
後で編集されるだろうから今は許してください。
「それでは、早速輝たい君を俺たちみんなで応援したいと思います。今日の1人目の輝たい君は!」
デンッ!
『漫画家を目指して作品創りに励んでいますが、新人賞に応募する勇気がありません。ヘタレな私に勇気をください。浦木花香さん』
スタジオにあるモニターにそんなメッセージが表示される。
これは番組宛に寄せられた、応援されたい応募者のメッセージ。
このメッセージはゲストが歌う応援ソング(カバー曲)に合わせてスタッフさんが選んでいる。
「浦木さんは勇気がでないのか〜。応募しないことには自分がどの程度のレベルなのかも分からないと思うけど……崎宮先輩どうですか?」
「勇気を出して応募するのも一つの手ですが、そうですね。自信がなく新人賞の応募に踏み切れないというのであれば、SNSを使ってみんなの反応を見てみるのも一つの手かと私は思うのですが……どうですかね」
「なるほど、まずはSNSで発信することから始めてみるのもいいですね」
それから崎宮さんが隣のスタジオに移り応援ソングをカバーする。曲は岡田夜さんの『明日』。
崎宮さんの歌声をはじめて聴いたけど、透き通った声でとても心地よく聴き入ってしまった。
『陸上を頑張っていたけど、ケガをして断念。今はスポーツトレーナーを目指しています。
ただ自分の頭が悪すぎてめげそうになります。応援してください。山田笑子さん』
『二次元オタクの私が初めてリアルで恋をしました。応援してください。内木暗さん』
『憧れの人がやっていたゲーム実況者と同じくゲーム実況者になったけど、あがり症の私でハードルが高くうまくいきません。応援してください。大高望さん』
『好きになってほしい男性ができて、ダイエットをはじめましたが、我慢できずにすぐに食べてしまいうまくいきません。応援してください。太井富子さん』
『コミュ症の私は人と上手く話そうとすると変な口調になってしまいます。どうしたらいいでしょうか。尾宅可奈さん』
『シャイニングボーイズのみんなが好きすぎて推しを決めれません。どうすればいいですか。アイキLOVEさん』
『シャイニングボーイズのみんなと結婚したい。あなたの女さん』
応援してほしいメッセージだけではなく相談メッセージも時折混じっていて戸惑いはしたが、俺たちはメンバーの誰か1人がコメントすればいいのでどうにかなった。
でも代わりのいない紫さんと崎宮さんは言葉に詰まる場面も。
特に相談すらなってないメッセージへのコメント。あれはどうしようもない。スタッフさんはなぜそんなメッセージを選んだ。
もしかして、あとで編集するから気にしていないとか? 香織さんたちを含む観覧者さんたちにはウケてて楽しそうにしていたもんな。
でも、こんなにも精神的に疲れる収録は初めてだよ。
途中から、俺自身が応援ソングに励まされているような気がしたもん。
途中から疲れが見え始めていた紫さんと、俺のことを睨んでいた崎宮さんも俺たちの新曲を聴いて涙を流してくれていたから、もしかしたら俺と同じ気持ちだったのかもね。
歌い終わった俺に握手をしようとしてマリさんから怒られてはいたけど、収録が始まる前よりも良好な関係にはなれたのではないかと思う。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




