第174話
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結局サイコロにどっぷりとハマってしまったらしい『ぽっちゃり男子』の彼らとは……
「ゴザル丸でござる」
「デス蔵ですぞ」
「ンゴ郎んご」
「だが氏だが」
「俺はタケトと言います。よろしくって、ええ、どこにいくの?」
とこんな感じで、本当にひと言挨拶するだけで終わった。
まあ、なんというか『ぽっちゃり男子』の彼らは俺のことよりも俺が使っていた俺専用のサイコロ、サイコロ・ブジンの方に興味があったんだよね。
だから俺との挨拶もそっちのけ。彼らはサイコロ・ブジンに駆け寄りじっと見つめた後にアオイさんとアカネに詰め寄っていた。
「アカネ殿。某の次の報酬はあのようなカッコいいサイコロが欲しいでござる。そうでござるな、某の専用機ならば……サイコロ・コロ丸、そんなところでござるかな」
「そうですぞ。専用サイコロしか勝たんですぞ。しかし、ござる丸がそうくるのであれば、吾輩はサイコロ・コロ蔵でいくですぞ」
「じゃあ、オイラはサイコロ・コロ郎でもいいんご」
「ならば俺は、サイコロ・コロガ氏でいいんだが」
彼らも自分専用のサイコロが欲しいらしい。でも、その気持ちはすごく分かるよ。
量産型サイコロはちょっと丸みがあって可愛らしい感じにデザインされた人型タイプのロボットだけど、俺のはシンプルにデザインされた人型タイプのロボット(大きさ、重量は量産型と変わらない)。量産型よりも全体的に少し角張っていて男性向けっぽい。
俺をイメージしたデザインらしいけど、すごく気に入っている。
そんなサイコロが自分の思い通りに動いてくれるからすぐに愛着が湧くんだよね。彼らもそうなったのだろう。
俺もそうだけど(マネジャーの中山さんが話し合ってくれた)、この分じゃ、彼らのプレイしている姿も撮影されCMとして使われることになるだろうから、彼らの専用サイコロもすぐにできるだろうな。
「我が社のサイコロに興味を持ってもらい光栄だわ。でも、なんだかどこまでも転がっていきそうな名前ですね。本当にいいかしら?」
構わない、と頷く彼らにアカネが自信たっぷりな様子で口を開いている。
「私だったらお団子丸と、ぼた餅蔵と、大福郎と、おはぎ氏ってつける。どう?」
美味しそうな名前だけど俺は嫌かな、なんて思っていたら彼らも気に入らなかったのか、首をぶんぶん横に振っていた。
「う、うん。そうね。アカネの案も悪くないけど……せ、せっかくなら彼らの希望の名前にしてあげた方が私はいいと思うかな」
「そっか。それもそうね」
アオイさんが肯定したことで、彼らの専用サイコロの名前は、コロ丸にコロ蔵にコロ郎にコロガ氏に決まったっぽい。
彼らからの視線が痛かったし、正直ホッとしている。
ひとりで納得し頷いていたら、彼らはすぐに量産型のサイコロで再び遊びはじめた。
一緒にできなくて少し残念に思ったが、その内一緒にプレイすることもあるだろう。
その時に仲良くできればいいかと気長に行こうと思った。
しかし、彼らとはその日から毎日のように顔を合わせていたが未だに一緒にプレイする機会がないまま、気づけば今日はいよいよ入学式。
入学式と卒業式だけは登校しない組(リモート学習組)の男子生徒も参加しなければならないから先生方は大忙しだ。
ちなみに男子が入学式や卒業式に参加しなかった場合は男性手当てに3年間のペナルティーがある。 ここまで国が強要するという事は、たぶん、女子側にも男性を知る機会を作るためだと、俺は勝手に思っている。
中には、玉砕覚悟で男子生徒に告白する女子生徒がいるらしいけど、俺は一度も見たことないな。
昨年度の卒業式でもそう。保護官さんが側にいるし、外部で雇った警備員さんも目を光らせている。
でも1番は卒業生(男子生徒)の態度の悪さが目立っていたから話しかけようとする女子生徒がいなかった……
「おはようございますタケトくん」
今日は新山先生から先に挨拶をされてしまった。
新山先生が可愛らしく手を振っているので俺もすぐに手を振って応える。
「新山先生、おはようございます」
入学式で忙しいだろうと思ったから断っていたんだけど、今日も待っていてくれた。
ミルさんとサイコロについて語っていたから気づくのが遅れたよ。
いつものようにミルさんが俺の後方に下がると、新山先生が俺の隣に並んだ。
「新山先生、入学式の準備は……」
「大丈夫よ」
新山先生が心配しないでと俺の肩に軽く触れてくる。
気のせいじゃなければ、先生からのボディータッチも増えたと思う。
今だって新山先生の歩く位置が近いから、歩くたびに新山先生の肩が何度も触れている……
気にしないようにしているけど、どうしても新山先生から好意を持たれているように感じる。
でも、勘違いだったら気まずくなることが分かっているので、なかなかその話題に触れることができない。
——ふぅ……
俺はリラクセーションを意識して勘違いしそうになる心を落ち着かせる。
ホント、リラクセーションを使えてよかった。
新山先生とはサイコロの話はまだできない。昨日のテレビの話でもしようかと思っていると……
「ん? あの人は……」
のそっと校舎の裏側辺りから男子生徒が姿を現した。
俺と新山先生に気づいていないその男子生徒は保護官から少し遅れてゆっくりと着いていく。
——……?
サンちゃんでもないしタケヒトくんでもないとなると残りは3年生の陸奥利先輩しかいない。
「陸奥利勝くんのようですね」
やっぱり。新山先生が目を少し細めて陸奥利先輩に訝しげな視線を向けている。
そんな表情をする新山先生は珍しい。何かあったのだろうか……
あれ? というか何で陸奥利先輩は登校しているの?
サンちゃんやタケヒトくんは俺よりも登校してくる時間が遅い。それなのに陸奥利先輩は俺よりも早いぞ。なぜ?
「ぶひっ、おい、早いんだな。もっとゆっくり歩くんだな」
「……はい、かしこまりました」
以前見た時よりも明らかにスカート丈が短くなっている保護官のお尻あたりに視線を向けて、にやにや顔で着いて行く陸奥利先輩。
——……
変態か? と一瞬思ってしまったが、この世界の男性が女性に興味を持つことの方が珍しいのできっと気のせいだろう。
それにスカート丈は今年になってから全体的に少し短くなっているから今の(ファッション)流行りなのだろう。
隣にいる新山先生だって少し短くなってるし、家ではミルさんのスカート丈も少し短く、というか、もうあれはミニスカートだね。まあ俺的には眼福だけど。
妊娠してお腹を冷やせない香織さんとネネさんが悔しがるくらいスカート丈を少し短く(ミニスカートまではない)することが流行っているのだ。
それでも、サンちゃんやタケヒトくんは気にしてない。いや、それ以前に気づいてもいないっぽい。
それがこの世界の男性の感覚なのだろう。俺だけがおかしいのだ。
だから俺は、なるべく視線を上げるように意識して目のやり場には気をつけている。
そんなことを考えている間に陸奥利先輩は3年生の校舎に入っていった。
「実は三年生を受け持つ先生方から……ううん。ダメよね。ごめんなさい、今のは聞かなかったことにしてくれる」
——ええ……
「……は、はい」
気軽に話していい内容じゃなかったのかな? でも話の途中でやめられたら気になるじゃないか。
気になるよ、って視線を先生に向けていたけど、先生はそれ以上は何も語ってくれずに、気づけば教室に着いてしまった。
モヤモヤした気持ちのまま、席に着いたけど、なんとなくミルさんからも視線を感じる。
気のせいかもと思いつつも視線をそちらに向けてみればこくりと頷いたミルから『すぐに戻って来ます』とテレパスが届き、ミルさんがスッと消えた。
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