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そもそも何故陽里がルナリアの住居にいるかと言えばヘッジホッグ部隊全滅時へと話は戻る。
死体を湮滅処理する時にその一連の過程を目にしてしまったルナリアが可能な限り胃の内容物を吐き出し、それすらも処理し終わった時にはルナリアは先の戦いもあって疲弊しきっていた。
一方、処理した本人である陽里は疲れた様子はないのだがこのまま人目を忍んで活動し続けるには流石に無理なようでルナリアの様子もあってどこかで休憩しようと提案する。
しかし陽里はいつもの任務を遂行するつもりで基地を出ており所持物は阿羅機とそれを収納するための亜空機、野戦食代わりの「極めて不味い」の代名詞である栄養錠剤が数錠だ。
通信機は既に自分を含め全員分を破壊済みでリサイクル以外に使い道はない。
要するに今の陽里は帰る場所も金もないホームレスなのだ。
一刻も早く休みたいルナリアは陽里が協力者である以上彼を見捨てる事は出来ず、結局自分の部屋に泊める事となった。
もちろん自室には寝させず廊下で寝かせるのであったが、事故防止及びそれによる事故により2人は現在ルナリアの寝室にいる。
ありふれた高層マンションの中層部分の一室、1Kの小さな部屋で日当たりは悪くないと言う1人暮らしに最適な場所だった。
「お腹空いた」
既に陽は高く昇っており時刻は午前10時である。
夕食を食べなかったにも関わらず、朝は空腹を気にせず怒りを陽里にぶつけにぶつけて今に至る。
「ご飯にしよう」
陽里が提案するが
「あ……買い忘れた」
ルナリアの昨日の予定では家に帰る前に明日の朝食を買おうと思っていたのだが、予想外の事態に全てが狂わされて買う暇もなく家に着いて倒れ込んだのだった。
「材料は? あったら作るけど」
仮にも居候である陽里が言う。
「そんなものないわよ!」
この部屋には1度も食材と呼ばれるものが持ち込まれた事はない。
理由は至極単純で彼女が料理が出来ないからなのだが、彼女のプライドが陽里にそれを言う事を許さない。
「じゃあこれ食べる?」
陽里は胸ポケットから1錠で1食分のエネルギー類が摂れる栄養錠剤を取り出す。
どう考えても腹が膨らむ事はなく、この空腹感が満たされる事はないと判断したルナリアはこれを拒否する。
陽里は1錠取り出して口に放り込み、水もなしで飲み込む。
この錠剤、表面は甘味料でコーティングされているが、コーティングがなければ非常に不味く口に入れたら速やかに流し込む必要がある。
床で、と言う言葉が頭に付くが寝た事で体力が回復、栄養錠剤でエネルギーを補給したので陽里は既に動ける状態だ。
だが――
「っ!」
部屋に微かに響く音が2人の間の空気を凍らせる。
1人は羞恥心で、1人はそれによる怒りの矛先が自分に再び向く事に対する呆れと諦め。
「た、食べに行きましょ!」
しかし意外な事にルナリアは手を叩いて陽里に提案した。
とは言え今目の前でエネルギー補給した人間に向かって言う言葉ではないだろう。
「何ぐずぐずしてるの! 行くわよ」
再び爆発が起こらなかったのは幸いか。陽里は半ば引き摺られて外へ出る事となる。
「ルナ、一応これでもボクは死んだ事になってるんだけど」
改めて陽里の持ち物を確認しよう。
阿羅機と亜空機、そして栄養錠剤が数錠だ。
つまり彼は今着ているものは下着、軍服のズボンに白のワイシャツ。これだけである。
外を出歩けば一目で軍人だとわかる。
ルナリアの日本人離れした容姿とも掛け合わさって目立ち過ぎるのだ。
「そうね。服を買いに行こうかしら。あたしもそろそろ秋服が欲しいし」
仮にもルナリアは軍全体を敵に回しており本来追われる身の筈であるにも関わらず、ヘッジホッグ部隊から1ヶ月以上も影すら掴ませないでいたのだ。
そのような彼女に出歩くのは危険だと忠告するまでもないだろうと陽里は考えて彼女に付いて行く事にした。
ルナリアが住むマンションはA師団基地からそれ程遠くもなければどちらかと言えば近い方だった。
「ここに居れば基地からの敵襲警報が聞こえるし」
およそ1ヶ月半探し回って見つからなかったのが不思議なくらいの距離で陽里は呆れと驚きで溜息をつく。
ルナリアがどうして戦闘区域にすぐ向かえるかわかったところで次の疑問が湧く。
(どうして今までルナリアの行動が表に出なかったのだろうか)
しばしの思考の末、答えに到達する。
ヒントはルナリアが阿羅機の構造に詳しいのに亜空機について詳しくないと言う事だ。
そもそも阿羅機の装甲は亜空機に分子レベルで収納・保管される。
阿羅機を起動する時に亜空機から部品とも言えるものを次々と取り出していき組み立て――復元するのだ。
つまり亜空機の役割とは阿羅機を分子単位で分解して収納、人工的に作られた小さな亜空間にて保管、そこから取り出して阿羅機を復元する事だ。
今ここで重要なのは復元の要素である。
亜空機のある特定の箇所を破壊すると阿羅機は強制終了して亜空機へ取り込まれるのだが、これは阿羅機の形が亜空機の存在によって保たれている事を意味する。
ルナリアがこの事を知らないのは必要がないからだろうと考えた時、戦場で撃たれて死んだ阿羅機士はどうなるかと言えば魔獣の餌食となるだろう。
結果、銃殺された阿羅機士は後から戦死したように見えるので今まで人知れずルナリアに殺されていたのだろう、と陽里は結論づけた。
そうした事を考えている内に2人はとある喫茶店の前に行き着くのだった。
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