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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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84.You can’t do it

前々回・前回のあらすじ

・香織がフラれました

・満太(死体)が陽里によって蹴り飛ばされました

 不意に秋雄の目の前に白い何かが飛んできた。


 秋雄はそれが何かわかった瞬間、右足を引き摺りながらも可能な限り優しくキャッチし、それを静かに床に置く。


「ふっざけるなあああああああああああああああ!!!!」


 最大火力で加速した秋雄は満太を殺した人物へと走り迫る。


 右脚から血が出るがそれを無視してシルエットがはっきりした段階でまたもや銃弾が飛び出す。


 直感で左腕で防げばそこに弾が当たった。


 装甲を貫けず衝撃だけが秋雄を襲う。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すううううううう!!!!」


 右手で強く握られた炎剣を振り上げる。


 抹殺すべき敵は銃しか使わない。近接戦闘に持ち込めば勝てる。


(振り落とした瞬間が貴様の最期だ!)


 渾身の力で振り落とされた大剣は何かに当たって振り切る事が出来なかった。


「あん?」


 秋雄はその姿を確認する。


「て……めぇは……!」


 そこには雷槍の柄で防いだ白銀色の阿羅機(アルハード)――陽里がいた。


 続いて狙撃銃を持ったレモンイエローの少女を見る。


「そうか、そうかよ」


 秋雄は理解した。


 陽里はこの目の前の殺人鬼(ルナリア)と繋がっていたスパイなのだと。


 その真っ赤な血は信次のものか、そろそろここに来る筈だった香織のものか。


「反逆指定……第参都市軍第一兵団A師団、結……!」


 その言葉は最後まで宣言される事はなかった。


「ボクが手負いの相手に負ける筈がない」


 炎剣を弾いた陽里はすぐさま雷槍で秋雄の首を斬り取った。


『エラー。もう一度対象人物を指定してください。エラー。もう一度――』


 焼き切れたために出血せず意識が残ったままの秋雄の脳内にMCASS(機械仕掛けの神)が届く。


 呼吸出来なくなった彼は、もう神に祈りすら届かない。


「2体目、デュランダル、討滅完了」


 転がった秋雄の頭を見下した陽里が雷槍を彼の目に向けて突き刺した。






「これからどうするの」


 秋雄の死ぬ様子を間近で見ていたルナリアはその場で吐き散らし、胃には何も残らず落ち着いた今でもまだ吐き気が残っていた。


「まずは4人共死体を処理する」


 陽里は未だ阿羅機のままの満太の屍を引き摺ってルナリアの元へ戻ってきて答えた。


「あちらこちらにあるから1ヶ所に集めてからこの場で処分出来るものと出来ないものに分けるつもり」


「まさに悪鬼ね……」


 手伝う気はないようでルナリアは横目で陽里の作業を見ながら呟いた。


「道徳と実利のどちらかを取れと言われれば――


「わかったわよ」


 話が長くなりそうだったので適当に答えたルナリアは狙撃銃を整備しだす。


 続いて信次の遺体を回収し、香織だったものの元へ向かう。


 そこは血の泉と化しており陽里を悩ませた。


(装甲が堅いと体を斬っても焼き切れる事はないのか)


 信次の機体を知らないのでヘッジホッグ部隊4人の阿羅機を比べた中で1番装甲が薄いのは陽里のケラウノス、次いで秋雄のデュランダルだ。


 逆に1番堅いのは防御特化のアイギス。

 従って香織のシェキナーは2番目に堅い防御を持った阿羅機となる。


 後にルナリアから聞く事となるが、シェキナーの防御性能はかなり高く正面から雷刃でよく斬れたものだと賞賛される。


(どうしようか)


 証拠隠滅のために各人の死体を処理するのが目的であるが、一通り血が出て既に固まりかけているこの現状を打破する方法を陽里は考える。


 1分程考えたが結局案は浮かばなかった。


(取り敢えず運ぼう)


 陽里は香織だったものを抱きかかえる。


 カタンっと何か落ちる音がした。

 古式武装(オールドデバイス)ユメザクラだった。


「ごめん。頂くよ」


 陽里はユメザクラを自身の亜空機(イクスペーサー)に収納してルナリアの元へ戻る。


 陽里が戻るとそこでは息絶えた満太の周りを彷徨いていた。


「何してるの?」


 陽里が気になって尋ねる。


「銃弾の回収よ。ただ胸に手を突っ込みたくないの」


「結構使った気がするけど全部?」


「白銀色の弾だけよ。あれ1個で一般人の給料1ヶ月分らしいわ」


 陽里は満太の空いた胸を見て手を突っ込む。

 これには思わず目を背けるルナリア。


「これかい?」


 真っ赤になったその手には血に塗れながらも輝く銃弾が。


「……ヨーリってやっぱり悪鬼よ」


 その後もう1つの白銀弾を見つけて残すは4つの死体処理となった。


「機体は処分出来そうにないし今後の何か役に立てるかもしれないから持って行こう」


 陽里はそれぞれの亜空機の特定の箇所を壊して阿羅機を解除する。


「始めからそうすれば良かったじゃない」


「大体は魔獣(ホレット)に襲われれば喰われ続けたりして維持する機能が壊れて強制解除されるけど、今回みたいに最低限の攻撃でだと解除されない」


「それとなんの関係があんの?」


「今この時をもってヘッジホッグ部隊、ボク達の部隊が全滅したと記録に残る」


 尤も調べられるまでわからない情報だけどね、と陽里は付け足す。


「つまり、捜査に来た部隊は何者かにほぼ一撃で全滅させられたと思わせる事が出来る」


「ミイラ取りがミイラにでもなったのかしら」


 ルナリアが嗤う。


「少なくともボクはね」


 と陽里が返す。


 全員解除したところで陽里も自身の阿羅機を解除する。


「残すは死体を燃やすか溶かしたりしたいんだけども――」


 その後ルナリアはトラウマになりかねないものを見せられてしばらくは陽里を恨む事となった。

言っとくが秋雄が弱いんじゃない! 陽里が強すぎるんだ!

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