82.One hole shooting
ブクマ感謝感激です!
タイトルを付ける頻度が高くなると、章の終わりが近いのだとわかってしまいやすいものですね(苦笑
よろしくお願いします。
陽里が飛び去ってからルナリアは陽里とは逆の方向に歩き出した。
両腕には無名の狙撃銃が抱えられている。
息を殺して足音を立てずに、しかしなるべく早く歩く。
しばらくすると後ろから爆発音が聞こえた。
(交戦が早い事)
確かに陽里の言葉はルナリアにとって今まで言って欲しかった言葉だった。
だが彼に宿る不気味な邪悪さに眉を顰める。
(仲間なのにどうして……)
非情さと形容すべきか。陽里の容赦のなさにルナリアは溜息をつく。
(ヨーリはあくまで協力者よ。仲間じゃない)
もし自分が裏切られたら、と考えると体が震えてしまう。
つい衝動的に言ってしまったものだな、と自嘲するが前方からも音が聞こえた事でルナリアの思考が切り替わる。
すぐさま銃を構えて暗視スコープを通して目の前の――約3km先の正体を探る。
(陸戦型阿羅機デュランダル……!)
赤く、黒いラインの入った機体から自身の脳に詰め込んだ事典からその正体を探り当てた。
性能も特性も弱点もルナリアは知っている。
陽里の使うケラウノスより1段階以上は防御性能があるが貫けないものではないと見てトリガーに細くて白い指をかける。
(このまま射程圏内に入ったら撃つ)
相手は思った以上に遅い動きでこちらに迫っており慎重さがあるように伺えた。
「ちっ、逆方向にでも逃げたか?」
デュランダルの使い手――秋雄は舌打ちしながら独り言を呟く。
『こっちにも来てないです』
通信で満太答える。
「となると、あっちか」
通信を入れようかと迷ったが万が一交戦中に入れてしまえば命に関わりかねないと思い直す。
すると爆発音が前方より聞こえた。
「聞こえたか?」
『はいです』
「どうやら向こうのようだ。とっとと行くぞ!」
秋雄が踏み込んで速度を引き上げた瞬間――
『前方より高速飛来物』
咄嗟の判断が功を奏したのかブレーキを掛けただけで左肩の装甲に傷がついただけだった。
(まさか……)
秋雄の思い当たった可能性、陽里、信次、香織のいずれかもしくは全員が倒されたと言う可能性が過ぎった。
そして次の獲物が
「俺様だってか」
デュランダルの武装、炎剣を出現させてそれとは別にサーチ範囲を広げる。
秋雄の見える画面に青色が3つ、緑色が1つあった。
青は阿羅機士を示し、緑は一般人を指す。
『2.5km先より射撃したと考えられます』
2.5km先――緑色の点の位置である。
「くそっ、まさかそんなに遠くから撃てるとは思わなかった」
それよりも秋雄にはもう1つ気になる点がある。
(1人いねぇぞ……?)
本来青色の点は4つあるべきだった。
「俺様の部下に手を出すとはいい度胸だ」
再び駈け出した瞬間――
『前方より高速飛来物』
またか、と思いながら得物を振るう。
しかし刃には当たらず炎剣の熱で歪んだ軌道はデュランダルの右腹部へ当たる。
(思ったより速いな……)
秋雄は苛立ちながら2歩目の加速をする。
この時点で秋雄は時速200kmにまで速度を上げた。
『前方より――
MCASSの情報と同時にその金属弾は秋雄の脛にの装甲を破って脹脛にまで達した。
着地が出来ずに秋雄は転ぶ。
制動が出来なくなった秋雄は地面を回転しながらやがて滑る。
『前方――
やっとのところで体勢を直せるところで4度目の闇からの射撃が秋雄を襲う。
「またこの展開ですかです?」
そこに現れたのは白色の阿羅機――満太だった。
「来るのが遅えんだよクソデブ」
秋雄は体を起こして前方を見る。
2発以内に仕留めるつもりだったが4発撃っても仕留められなかった。
それどころか阿羅機が増えて2体になってしまった。
(マズい……)
あの白色に金色の十字架は間違いなくアイギスである。
(攻撃特化に防御特化のペアとか最悪)
相対したくない組合せであった。
だがルナリアに怯んでる暇は次弾を装填してすぐさま撃つ。
狙うはアイギスだ。
だが満太は秋雄を救ったと同時に盾形武装、天照壁――大きな白い盾を取り出して防ぐ。
(あの箇所でダメなの?)
アイギスの代表武装である天照壁の最も脆弱な箇所を完全に寸分違わずに当てても傷が付くだけであった。
満太は今まで付ける事のなかったその傷に驚くも盾を構えながら接近してくる。
30秒もしないでルナリアの元へ着いてしまうだろう。
そうなったらルナリアの死は確定したも同然だ。
「見せてもらうわよ。給料1ヶ月分!!」
取り出したのは白銀色の銃弾であり通常のものと違って2倍以上の密度を持つ。
オスミウムとイリジウムの合金弾で威力は通常の5倍はあると聞いたが実際まだ使った事はない。
ルナリアは薬莢を銃から抜いて白銀弾を装填する。
残り24秒。
ズレた照準を補正。
残り17秒。
引き金を引く。
途端銃が後方に吹っ飛ぶかのような衝撃がルナリアに加わる。
音速を超えた白銀の弾丸はアイギス――天照壁へ吸い込まれていく。
「同じ手は無駄です」
盾を構えたままなので特に何もせず速度を上げてルナリアへと迫る。
だが――
(え……?)
銃弾が盾の中央に触れた瞬間、得体の知れない力が盾に加わる。
男の指1本分の押す力がまるで巨人が殴ったかのような撃力。
だが満太もここで吹っ飛ばされては次の狙撃で秋雄か自分が死ぬだろうとわかっていた。
「おりゃあああああ!!!」
耐えた。
そう確信したが弾丸を弾いた感覚はなかった。寧ろ――
(盾が貫かれた……です!?)
そこには小さな穴が1つ。
幸いアイギスに傷1つ出来なかった。
残り16秒。
既に再び薬莢を抜いて2つ目の白銀弾を装填する。
残り12秒。
「すぅ……はぁ……」
狙う場所は決まっている。
残り6秒。
銃口が光る。
ほぼ真っ直ぐに、重力が働いて放射線状の軌道となるがそれを感じさせない直線的な軌道だった。
風を切る、否、空気の壁を突き破りながら進む白銀弾は誤差100μmで天照壁の穴を通り抜けた。
通り抜けた先――アイギスの最も固い胸部装甲すら突き破り、銃弾は満太の心臓を突き刺した。
即死。
搭乗者が意識を失い、高速で飛来する巨大な金属の塊がルナリアを襲う。
だがルナリアの眼前で弾き返されて再び闇へと消えていった。
「もうちょっと、早く討滅出来てたら盗られなくて済んだのにな」
白銀弾と同じ白銀の金属光沢の機体が血塗れになってそこには立っていた。




