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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
84/249

81.

 阿羅機(アルハード)の運用上の問題でフレンドリー・ファイアがある。


 強力な攻撃が時として広範囲に及ぶ場合があり巻き添えを食らう場合が阿羅機開発初期は特に多かった。


 現在ではそのような事を防ぐべくMCASS(バックアップシステム)が味方阿羅機士(アルハーダー)に害が及ぶ場合は攻撃出来ないよう安全装置が働き攻撃の火力がほぼゼロになる。


 しかしそのシステムが常時働くと狭い場所での戦闘が不可能となってしまう。

 なのでこのシステムは阿羅機士が任意で解除出来る仕様となっている。


「IFF《敵味方識別装置》解除」


『IFFを解除しました。友軍兵へ被害を与えないようご注意ください』


 コンマ数秒で1人目の阿羅機士が自分を認識する前に安全装置を解除する。


「あ、陽里くん!」


 その阿羅機士――香織は陽里がこちらに来ている事に、無事であった事に喜んで手を挙げる。


『阿羅機ケラウノスの加速を確認、衝突します。回避してください』


「え!?」


 突如MCASSの予測に香織は体を捻って回避運動を取る。


 だがさらに陽里の雷刃が香織の肩を斬り裂かんと迫る。


『オートガード――砲子(ほうし)による斬撃軌道の変更を試みます』


 香織の阿羅機――シェキナーから6つの卵の形をした機械が現れ5つは浮遊、1つが陽里の雷刃に接触した。


 砲子の1つは見事に真っ二つになったがその代わりに香織に怪我はなかった。


「ちょっと、陽里くん、どう言う事!?」


 突然の攻撃に香織は混乱する。


「見ての通りだよ」


 陽里は雷刃を構え直して答える。


「意味わからないよ! どうして!?」


 陽里の理不尽な行動に香織は戸惑う。


 何故敵対しているような事になっているのか。


 香織がその疑問を考える間もなく陽里は次の一手に出る。


 狭い通路の両壁、天井、そして床をぶつかるギリギリの距離で沿って飛んでいき、香織に再度迫る。


 明らかな殺意。


 香織はIFFを切って不規則に飛んでくる陽里に狙いを定めた。


 陸戦型阿羅機シェキナー、元来阿羅機は近接戦闘用の攻撃手段が多く、逆に遠隔戦闘用の武装(デバイス)は少ない。


 理由は2つ。

 1つ目は火力が高過ぎるために下手に建造物に誤射してしまえば被害が甚大になってしまうため。

 2つ目はMCASSのサポートをもってしても自在に動ける状態を封じない限り当てるのは至難の業であるからだ。


 陽里でさえ魔性犬(デヴィドッグ)程度(・・)ならともかく双頭犬(オルトロス)レベルになると自由落下してる状態でないと当てられない。

 さらに撃つにしても仰角でないと地面にクレーターを作りかねない。


 こうした理由であっても使い所がないために遠隔戦闘に使える阿羅機や武装は開発があまりされない。


 その中でもシェキナーは例外にあたる。


 如何にリスクを負わずに魔獣(ホレット)を討滅出来るかは阿羅機開発の中でも重要な命題であり、古今問わずその答えの1つは遠距離からの攻撃である。


 では、阿羅機の世界における遠隔戦闘戦闘の問題点を不完全と言えどどう解決したか。


「斉射!」


 5つの砲子が正確にケラウノスに狙いを定めて一斉射撃する。


 1つ1つはそれ程強くもないレーザー射撃であるが多門放射によってその交点――対象への攻撃箇所のみ強力なものとなる。


 欠点は精密な射撃をするのにMCASSの演算要領を大きく消費する事、そして攻撃範囲が一点である事だ。


 シェキナーに与えられた武装に使えるMCASSの演算領域をほぼ全て砲子の斉射に与えられた事で未来予知に匹敵する制度で陽里を狙う。


『オートスクエアガード』


 だが5本のレーザーは交わる前に阻まれた。


 ケラウノス唯一の盾――雷環が正方形のバリアを形成して防いだのだ。


「嘘……!?」


 戦闘不能に追い込む程度の火力に調節(手加減)していたがまさか掠る事もなく防ぐとは思いもよらなかった香織は第2射をすぐに準備する。


「遅い!」


 雷環を仕舞っていつの間にか雷槍を取り出していた陽里が香織の懐に迫る。


 ここまで近付かれたら下手に砲子を使う事は叶わず香織は防御姿勢に入る。


 だが陽里も香織が撃てないであろう位置まで攻め込んだはいいものの、雷刃の連続使用時間が過ぎてしまったために雷刃が使えず、やむを得ず雷槍を取り出したが距離が近すぎて槍が振るえずに柄で突く事しか出来なかった。


 殺しきれないまでもダメージを与えるには十分な突きはシェキナーの腹部装甲を凹ませて後方に突き飛ばす。


「な、なんで……」


 香織には全く理解出来なかった。


 いや、理解したくなかった。


「誰かに弱みを握られて仕方なくわたしを攻撃してるんだよね……?」


 吐き気を堪えて香織は陽里に尋ねる。


「脅迫されたから仕方なく裏切ってるんだよね……?」


 だが陽里は答えない。


「ねぇ……教えてよ……。わたし達で出来る事だったら力になるから」


「君に、君達に出来る事はない」


 陽里は雷槍を片手に構える。


 彼我の距離はおよそ15mであり、これは香織からすればいつでも撃てる距離である。


 対する陽里は雷銃と言う自身諸共辺り一面を瓦礫に埋める自爆以外に1つしかない。


 陽里は雷槍を強く握る。

2017/11/28 表現微修正

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