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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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79.

前回のあらすじ

・信次を『控室』に招待しました

『A-4区が戦闘区域に指定されました』


 MCASS(バックアップシステム)が告げた事で陽里達は阿羅機(アルハード)の起動が可能となった。

 言い換えれば“敵”がそこにいる事を示している。


「やっと見つけあがったか。デュランダル……起動しろ!」


 秋雄は早速起動させる。


「オイ達もすぐに向かうです。アイギス、起動です!」


 続いて満太が。


「陽里くん達……どうか無事で。シェキナー、起動して!」


 そして香織が自身の阿羅機を起動させる。


 淡黄色に桃色のパーツらしきものがいくつか取り付けられた陸戦型阿羅機、それがシェキナーである。


「逃げられる前に追うぞ!」


 3機の陸戦型阿羅機はその地面がある限り自由自在に動ける高い機動性を駆使して複雑に入り組んだ地下街(ラビリンス)を走り抜ける。


「結構距離があるな……」


 走りながら秋雄が舌打ちをする。


 不幸にも秋雄達と陽里達は捜索範囲のほぼ対極にいたため緊急時にのみ許される非常スイッチを押した場所――陽里達の元へ到着するには数分を要する。


「その前に逃げられる可能性が大です」


 一回り大きな阿羅機に入った満太が言う。


「敵は2km以上遠くから射撃出来る腕前だと思われるんですよね」


 陽里達のところへ直接向かったところでそこに(ターゲット)がいるとは限らない。

 寧ろその半径2km強を探さなければ見つからないだろうと香織は考える。


「ちっ……。3人で分かれて周囲3kmを包囲して潰す。聞いてたか?」


『聞いてます』


 通信で陽里が答える。


「てめぇとメガネですぐに追え!」


『了解』


 通信が切れる。


(陽里くん……どうか無事で……)


 一先ず陽里の生存を確認できた香織は安堵し彼の無事を祈り続けた。






「だそうだ」


 白銀のフォルムに青と黄色の装飾――空戦型阿羅機ケラウノスを起動させていた陽里は目の前の人物に声を掛ける。


「あたしを殺すの?」


 その人物――ルナリアは射殺する勢いで陽里――正確にはケラウノスを睨む。


「聞きたい事がある。そうでなかったらとっくに仕留めていた」


 信次の死亡及び阿羅機の起動が可能となった瞬間には陽里はルナリアに迫っていた。


 時速にして200km強で迫り来る陽里にルナリアは応戦するも悉く躱され今に至る。


「何? あたしがあんた達を狙う理由? 言ったでしょ復讐だって」


 銃を陽里に向ける。


「そんな事はどうでもいい」


「どうでもいいって……!」


 ルナリアは引き金を引く。


 至近距離からの急所を狙った一撃。当たれば阿羅機に包まれていようが中の人間を殺すに十分なものだった。


 だが陽里は無事だ。僅かにケラウノスの機体に傷が付いただけであった。


「ルナの技術は大したものだよ。でもどこを狙ってくるかわかっているのなら少しでも避ければ装甲を貫かない」


 撃鉄が下ろされる瞬間、陽里はセンチメートル単位で動いた。


 ケラウノスは装甲が薄く、その中でも特に薄い箇所がいくらかあるが、陽里はその部位を全て完全に把握していた。


「あんたにはあたしの気持ちなんてわかんないでしょ!」


「それはルナが何も話さないからだ」


 間髪入れずに言った陽里の言葉が反響して地下通路を満たす。


「何か事情があるんだってその悲しそうな目を見ればわかる。ただ、君は何も話さないからボクはどうしようも出来ない」


 陽里はケラウノスを解除する。


 すなわち武装を解除しルナリアはいつでも陽里を殺せる状況になった。


「あたしの目が憎くないの? この紫色の目が、この不気味なまでに明るい髪の色が神和国人を連想させないの!?」


 ルナリアはその容姿で恐れられ、嫌われ、蔑まれてきた。


 祖母が今では神和国となった地の生まれでその血がルナリアには流れている。

 だから自分が神和国の人間ではないと断言出来なかった。

 もしこの瞳と髪が黒かったならばと思わなかった日はない。


 どうせ陽里(こいつ)も同じだとルナリアは決めつけていた。


 だからこそ――


「ボクは好きだ」


――期待してしまうのだ。


「なんで……」


 彼女の手が震える。


「なんでなんでなんで!! あなたは阿羅機士(アルハーダー)、神和国の敵でしょ! だったらなんで……!」


「ルナは神和国人じゃない。それは君が1番知っている事だ」


 来る日も来る日も敵国民と言われ続け、気が付いたら自分が神和国の者だと思い込んでしまっていた。

 自分はそうじゃないと否定し続けるもいつの間にか認め始めていた自分がいた事にルナリアは気付く。


「ボクはその瞳の色、髪の色が素敵だと思う」


 陽里は感じた事をそのまま伝えた。


「……何口説いてるのよ」


「え?」


 今までの流れに自身の行動に不審な点、あるいは誤解させる内容があったかどうか陽里は瞬時に検索をかけ、思い当たる点を見つけたので謝ろうとしたが


「いいわよ! その口説き、乗ってあげるわ」


 初めてルナリアは不敵な笑みを見せた。


「ヨーリ、あたしに協力して」


 ルナリアは手を差し出す。


「あたしの望みはたった1つ――復讐を果たす事。それが終わったら……あ、あたしを好きにしていいわ!」


 顔を真っ赤にして陽里とは目を合わせないようにするも差し出した手ははそのままだ。


「じゃあボクの望みを聞いて欲しい」


「な、何? あたしの復讐が終わるまで……その……あまり無茶な願いは聞けないわよ」


 もじもじしながらさらに顔を赤くするルナリア。

 普段が白い肌であるためその変わり様は顕著だった。


「何を勘違いしているか知らないけどボクの要求は簡単だ」


 それは陽里が2ヶ月以上抱えていた衝動――


「戦わせてくれ」

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