78.
陽里とルナリアの3度目の邂逅の1週間後、和堂の証言によって銃殺事件の犯人の容姿が判明し翌日にはヘッジホッグ部隊にも伝わった。
その2日後、和堂が3人目の被害者となり死亡した。
(3日足りなかったな)
陽里はさり気なく秋雄に和堂の保護を提案し、最初はその必要はないと言っていたが香織と満太が賛同した事で秋雄が提案を受け入れ喜助にそれを進言したが間に合わずに殺された。
この事で陽里が得たものはただ1つ。
強力な情報網を持った何者かがルナリアの背後にいると言う事だけだった。
それに対して失ったものが大きく、結果を良しと思う事はなかった。
容姿がわかった事でヘッジホッグ部隊は本格的に捜査を始めたがその後全くと言っていい程に進展がなかった。
季節は変わり秋になった頃――部隊結成から2ヶ月以上が経った。
「行くぞ……」
いつもの通りに秋雄が部屋に来てはそれだけ告げてすぐに部屋を出る。
「最近苛立ってるね」
その様子を見て香織は陽里に近付いて話し始める。
「そうだね」
「初めの頃は怒鳴り散らしてたけど人って変わるものなんだなぁ」
香織は伸びをして部屋を出る。
陽里もそれには同意してしまう。
香織の言うように人が変わると言う程ではないが態度が柔らかくなった事には理解出来る。
だが――
「おいおせぇぞクソデブ!!」
遅刻した満太を足蹴りで倒して怒鳴る。
「すいません……です」
うずくまってる満太を香織は介抱する。
秋雄が厳しい事に変わりはない。特に満太に対しては。
狙われる対象がA師団の阿羅機士である事から捜査はA師団基地周辺が重点的に行われている。
既に死者は8人へと上り、兵士全員には外出を極力控えるよう通達されている。
そして今日、陽里達ヘッジホッグ部隊は最後の事件現場となったA-4区――旧横浜南部に来ていた。
「二手に分かれて探す。俺様とクソデブにおめぇだ」
秋雄は目で香織を指す。
「今日は地下を探す。日が沈んだらここに集合しろ」
(どうせ見つからねぇだろうがな)
心の中で溜息をついて秋雄は地下街を歩き出す。
「私達も行こう」
「はい」
信次もすぐに動き出し陽里が付いて行く。
敢えて人通りの少ない道を歩いているため2人の足音だけが反響して地下通路を満たす。
一直線の通路ではあるが薄暗く、遠く先が見えない不気味な場所だった。
「これはあくまで私の予想だ」
唐突に信次が話し出す。
「結城、実のところおまえは何か知っているのではないか?」
和堂の証言が冥界犬討滅時の話であった事から同じ小隊であったエリザベスと陽里にも取り調べがあった。
エリザベスはもちろん陽里も“金髪の少女”について何も知らないと答えてその件は終わった。
「知らないです」
「おまえが何か事情があって話せないのだろうと私は思っている。それが何かは知らないがあの時、敵と接触があったと私は踏んでいる」
ほぼ正解の信次の予想に陽里は顔には出さないも内心苦笑する。
「それはどうしてですか?」
興味の湧いた陽里は尋ねる。
「それだ。その言い方だ」
信次は立ち止まって陽里を睨む。
「高々2ヶ月しか付き合いのないおまえの事など大して知らないがその言い方はあまりにも不自然過ぎる」
陽里も立ち止まって信次を見返す。
「私の言い方は明らかにおまえに対する侮辱だ。おまえが裏切り者だと言っているものだからな。それを怒りもせず否定をするどころか理由を訊いてきた。おまえが上から目線で私を見ているのかもしれない。だがしかし、それにしてはこの2ヶ月そのような事はなかった。となれば何かしら知っているからその反応なのだ」
信次の理論的な説明に陽里は納得して頷く。
「……何がおかしい」
その不審な態度に信次は訝しくなる。
「そうですね。佐畑陸曹の仰る通りボクは彼女の事を知っています。ですがそれは裏切っていた訳ではありません」
言い逃れする術はいくらでもあったが陽里は素直に答えた。
「……ではなんだと言うんだ」
僅かに怒気を含ませて信次は尋ねる。
「――」
その言葉を聞いた信次は驚愕と共に目の色を変えて陽里に掴みかかろうとするも――
無数に連続して反響し続ける発砲音を信次は薄れゆく意識の中で捉える。
「く……そ……」
後1秒もせずに意識は完全に潰えると分析しながら腰につけていたある機械のスイッチを押す。
その目はただただ陽里を睨み、その声が彼の脳内に響いた瞬間、彼の世界は閉じた。
『A-4区が戦闘区域に指定されました』
陽里の言った謎の一言、これこそ彼の本音です。
まぁ信次が怒るのには相応の訳があったのですが……残念になってしまったので明かされません。
2017/06/03 微修正




