61.
ブクマ感謝です!
え、さらに感想も頂いただと!? ありがとうございます!!
「食ったですー」
膨れ上がった腹をさすって満太が満悦な顔になる。
「あの体型がああして出来上がったのか」
「食費どのくらいなんだろう」
信次と香織がその様子を見て変な事を呟く。
「おいクソデブ、とっとと行くぞ」
満太の丘のような腹部を肘打ちして秋雄は歩き始める。
地下街――地下鉄に沿って、時には隣り合わない駅を繋ぐように伸びた通路の左右に商店や住居が並んだ第参都市のもう1つの姿である。
地上から生える高層ビルも一部は地下にも伸びており、その中では地下が入り口と言うものもある。
大きな地下通路では人通りが多いため商店街としては良い機能を持ってる反面、居住に関しては窓がないため景色は悪い。
そのため商店としては地価が高いが住居としては低い。
従って地下街の住宅区に住む者達は第参都市の中で下流階級に属する者となる。
「午後からは地下だが人通りが少ないところを集中させる」
「参ったな」
秋雄の言葉に信次が頭をかく。
地上も一部は立体交差の道があるがいずれも目視が出来るためどうしたらそこに辿り着くかがわかる。
だが地下の場合そもそもそこに交差している道があるかどうかすらわからないため行きたい場所に辿り着く事は困難なのだ。
ナビゲーションを使って最短ルートで真上に行こうと思ってもぐるりと大回りする場合も少なくないのだ。
人通りが少ない道と言うのは地上や地下商店街に行くのにその道を使う必要がない道である。
長く複雑な道を通った先が人通りが少ない道なのだ。
もちろんそれは1ヶ所だけではない。
無数にあるそれらに通るのは途方もない時間が必要だ。
「全員で分かれて探索だ。以上」
秋雄はそれだけ言って歩き出す。
「待て、万が一冥界犬並の魔獣に出会したらどうするんだ。ここは全員か二手に分かれるべきだ」
信次が秋雄に提案をするが秋雄は振り返って信次を睨む。
「俺様に指図するな」
これに対して信次は何も言い返さず、秋雄の指示に従う事になった。
結果から言えば何の収穫もなく日が暮れて任務は終了した。
午後は話す相手もおらず終始無言で歩き回っただけで集合の連絡が来ては何もなかった事を報告するだけであった。
「オイ、もうヘトヘトで歩けないです……」
部屋にて秋雄から解散を告げられた後、満太が疲労と主に空腹で倒れる。
昼にあれだけ食べておきながらそれらはどこへ行ったのか誰しもが少なくとも興味を持つ事だろう。
「満太さん、食堂に行けばご飯食べられますから」
香織がそう言った瞬間、満太はクラウチングスタートを決めて走っていった。
「わたし達も行こっ」
香織が陽里に手を出す。
「そうだね」
陽里は読んでいた本を閉じて立ち上がる。
「佐畑一等陸曹もどうですか?」
香織は信次にも声を掛ける。
「私は先輩に仕事が終わるまで待ってろと言われてな」
香織を一瞥もせずにパソコンで何やら作業をしながら信次はやんわりと断る。
その返事を聞いた陽里は何も言わずに部屋を出て食堂へ向かう。
「え、ちょっと待ってよ! お先に失礼します!」
香織は信次に挨拶をして陽里を追う。
「ちょっとなんで先に行っちゃうの!」
今朝の事もあって余計腹を立てる香織。
「別に一緒に行く必要もないでしょ」
「え?」
陽里は香織の言葉を「一緒に食べる」と誘ったのではなくて夕食を「食べよう」と勧めたのだと思ったのだ。
「違うって」
そのような認識の誤りを正して香織は再度誘う。
「別にいいけど」
陽里は気にした様子もなく食堂へ歩き出す。
「陽里くんの、バカ……」
頬を膨らませて香織は陽里に聞こえない大きさで呟く。
「おやおや、これはこれは期待の新兵達じゃないか」
「鹿島師団長!」
そこへ喜助が現れる。
「君達デキちゃってるのかい?」
ニヤニヤと喜助は笑って香織に尋ねる。
「そ、そんな事ありません!!」
何故顔が熱くなっているのか自分にもわからないが香織は必死に否定する。
「そんな顔真っ赤にして言われてもねぇ」
ニヤニヤとして顔を近付ける。
「あまりやり過ぎるとセクハラになりますよ」
見かねた陽里は喜助に一言言う。
「あちゃー。これはいけないねぇ」
額を叩いておどける喜助。
(彼女にも同じ事言われたなぁ)
流石はエリザベスの元弟子だと思いながら喜助は妙な感心をする。
「これから夕飯かい?」
「はい」
香織が答える。
「なら一緒にどうだい?」
喜助は酒を飲むジェスチャーをする。
「わたし達お酒飲めませんよ」
現行法では飲酒は18歳からとなっている。
「まぁまぁ酒は冗談としてご飯は食べれるだろう?」
「でも流石に一兵卒が師団長と一緒にと言うのは……」
平社員が社長と一緒に食べるのと同じようなものだ。
香織は恐れ多いと恐縮する。
「一応隊長とその隊員だよ?」
ヘッジホッグ部隊の隊長は喜助である。
それならば問題無いだろうと言って喜助は誘う。
「……はい」
微妙に残念な雰囲気を出しながら香織は喜助の誘いに乗った。
「結城君も来るよね」
「お言葉に甘えてありがとうございます」
正直飯が食えればどうでもいいと陽里は考えるが断るだけ時間の無駄だと判断した。
「じゃあ行こうか」
そう言って食堂に行こうと思っていた喜助は陽里と香織にばったり会い、なんやかんや理由を付けて誘う事に成功したので外食にする事に決めた。
もちろん陽里と香織がどこでの食事かを知るのは数分後の未来の話だ。




