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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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60.

「なんでこうなる」


 秋雄が悪態の限りを尽くす。


「私に訊くな」


 料理メニューを見ながら信次が言う。


「はぁ……」


 香織が溜息をつく。


「何食べましょうかです」


 満太は候補をいくつか挙げながら指を折る。


「……」


 陽里は無表情に無言で本を読む。


 ヘッジホッグ部隊一同はファミリーレストランの一角にて昼食をとっていた。


「そもそもお昼ご飯の事を考えなかったのが間違いなんです」


 香織が秋雄に向かって言う。


「あん? 俺様が悪いと言うのか!?」


 秋雄がテーブルを叩く。


「思い返してみてください」


 出来事は12時前に戻る。






「おせぇぞ!」


 開口一番に秋雄が怒鳴る。


「まだ12時前です」


「んな事はわかってる」


 陽里の事務的な口調で正論を言われた秋雄も自分の言った事を理解している。

 ただギリギリ間に合った陽里と香織に待たされた事に苛ついていただけだ。


「……ちゃんと寄り道していないだろうな」


「あの――

「はい」


 疑うように秋雄が確認をしたのに対し、正直に言おうとした香織、さらにそれに被せた陽里の肯定だ。


「ならいい」


 そう言って秋雄は2人から目を離す。


「ねぇ陽里くん」


 小声で香織が陽里を呼ぶ。


「あくまでボクの予想。真相は副隊長しか知らない」


 香織が両親に顔を出せるようにしたのが秋雄によるものなのかは陽里もわからない。


 下手に言うより言わない方がこの場合いいだろうと陽里は秋雄の問いに対して嘘をついたのだ。


 ぐぅぅ。


 そんな音がした。

 1人を除いて他4人全員が音の発生源を見る。


「お昼食べてなかったです」


 満太の胃袋が渇望の声をあげたのだ。


「わたしもお昼ご飯食べてません」


「私もだ」


「ボクも」


「ちっ……」


 満太以外にも香織に信次、陽里も昼をとる前に集合したのだ。


 それに対して秋雄は舌打ちをするが彼も同じである。


 軍人である以上、非常食は持ち合わせている。

 だがこれを食べれば良いと誰も口には出すつもりはない。


 必要な栄養素を詰めて圧縮した結果、野戦食(レーション)にすらならず1粒の大きめの錠剤になったのだ。

 ゴミが出ずに高速で補給できるが当然腹は膨れず空腹感に変化は訪れない。


 最後の砦ともなる味についてもごちゃ混ぜなものであるため非常に不味く、甘味料をコーティングしただけなので飲むしか手段はないため一瞬の甘さしかない。


 従ってこの栄養錠剤は戦闘・遭難時などの極限状況下では生存率を上げるための命綱となるが、そうでもない限り使おうとは誰も思わないのだ。


「30分後に集合だ」


 秋雄の言葉でまともな昼が食べられると安堵する4人。


 秋雄も含めて全員が近くの外食店で食べようと考えて近くを見渡す。


「「あ……」」


 異口同音に声を漏らす。


「そう言えばこの近くに食べるところここしかないんだっけ」


 地元出身の香織の言葉が4人を沈黙させる。


「行くしかねぇだろ」


 ただし別々食べるぞ、と言わん目で秋雄は店に入る。


 4人も続いて入った。


「いらっしゃいませ!」


 営業スマイルで女性店員が彼らを迎える。


「5名様でしょうか。喫煙席と禁煙席がございますがどちらになさいますか?」


「いや、1人だ」


 秋雄はさも当然のように言う。


「かしこまりました。ではこちらにお名前をお願いします。ただいま満員でして10分少々のお待ちとなりますがご了承ください」


 現れた空間画面に名前を書くよう伝える店員。


「これ別々で食べてたら間に合わないよね……」


 香織が言う。


「栄養錠剤は簡便してくださいです!」


 食べた事があるのか満太はトラウマを思い出したかのように嘆く。


 2人共秋雄に聞こえる具合で言っていたので不満を聞いていた秋雄は頭をかいて店員に告げる。


「禁煙席5人だ」


 数分後、5人は席に座る事となる。






「昼を食ってからにしとけば……」


 イライラしながら秋雄は水を飲む。


 険悪な雰囲気が漂うボックス席に座る他4人も同感であるが香織は特にその気持ちが大きかった。


 後30分あれば母の料理を食べれたかもしれなかった。父とももっと話が出来ていただろう。

 香織にとっては世界中どこを探してもただ1つしかない場所なのだ。


 目に見える香織の不満気を感じ取った陽里は彼女に付き合わされた身もあって、彼女の父とこれ以上いたくないと言う気持ちが勝り、ある意味この状況に安堵する。


 全員が決まり終わって店員を呼ぶ。


「ご注文は……お決まりでしょうか……?」


 営業スマイルで注文を訊こうとしたがただならぬ嫌なものを感じ取って言葉に詰まる。


 少なくともこれから飯を食べる雰囲気ではない。

 民事訴訟における原告と被告の間に立つ裁判官となった気持ちである。


 尤も彼らは半々に分かれて対立していると言うよりバトルロイヤルのようなものだが。


「トマトチキンステーキ。ライスにスープはコンソメ」


「天ぷら蕎麦を」


「カルボナーラとミネストローネお願いします」


「サバの味噌煮定食」


 秋雄、信次、香織、陽里の順で注文する。


「オイは――」


 満太はメニューをペラペラとめくりながら言う。


「サーロインステーキBBQソース仕立てとチーズインハンバーグのデミグラスソースで。それと3種のチーズ盛り合わせピッツァと豚骨チャーシューメン大盛りお願いしますです」


「か、かしこまりました……」


 ただならぬ様子をも塗り替える満太のマシンガンオーダーに店員は注文の復唱すら忘れて店奥へと逃げてしまったのだった。


「食い過ぎだろ……」


 秋雄でさえ目を張って驚いていた。

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