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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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59.

「そうかそうか。香織とは同僚なだけか。それはすまない事をしたなぁ。ははは」


 香織の一撃によって騒動(カオス)は収束し、香織の父は玄関で説教を受けながら陽里と香織の関係を理解した。


「叩き過ぎです」


 陽里は逃げるように香織の父の申し訳なさゼロの謝罪を受ける。


「いや何、香織が男を家に連れて来たと思ってな」


 だからと言って殺気を放つのはどうかと陽里は思う。


「大切な1人娘を盗られてお父さん嫉妬かしら?」


 手を頬に当てて香織の母が茶化す。


「父とは娘を手放したくないものなのだよ母さん」


「ふふふ」


「ははは」


(なんなんだ……)


 陽里は香織が一体どうやったらこの両親から生まれたのか不思議でたまらなかった。


「なんかごめんね。お父さんが暴走して」


 香織だけが申し訳なさそうにしているのだった。


「うん、大丈夫」


 フィジカルの面では、と言う言葉が頭に付くが。


「ってもう行かなきゃ!!」


 トラブルがあったものの時間に遅れる訳にはいかないのだ。


「そうか……」


 急にシュンとした香織の父。

 喜怒哀楽の激しい人である。


「お母さんお父さん元気でね」


 香織が2人に手を振る。


「香織も元気でね」


「困った事があったらいつでも相談するぞ!」


 香織の両親も笑顔で送り出す。


「うん」


 一瞬泣き出しそうになる香織だったが無理にでも笑顔を作ってもう1回手を振る。


「陽里君も元気でね」


「ありがとうございます」


「いいか、香織に手を出したら貴様の指全部をすりおろしてやるからな!」


 香織の父の警告に陽里は苦笑する。


「それじゃ、いってきます」


「「いってらっしゃい」」


 ドアが閉じて部屋に静寂が訪れる。


「見送りに行かなくて良かったのか?」


 閉まったドアを見ながら香織の父が母に訊く。


「お父さんこそ」


 母が父を小突く。


「俺はいい。そこまでしたら思わず引き止めてしまいたくなる」


「私だってそうよ」


 2人共それが香織にとって良くない事だとわかるから玄関まででの見送りにしたのだ。


「去年の春は泣いていたと言うのに今回は笑って出て行ったぞ」


 香織の父はニヤリと笑う。


「それだけあの子が成長したのよ」


「そうか……。父としては寂しいものだな」


 今度は哀しい顔になる父である。


「あの子だって大人にもなるわよ」


「大人の女……。はっ!!」


 途端香織の父から殺気が湧き上がり怒りの表情となる。


「しつこいわよ」


「すいません」


 ドスの利いた声で香織の父を黙らせる。


(これは当分時間が掛かるわね。父親(こっち)はなんとかするから香織も頑張るのよ! ……って香織自身も気付いてないだろうなありゃ)


 娘の未来を楽しみにしながら香織の母はある事を思い出す。


「それよりお仕事早退してきたんですって?」


「そうだ。香織のためにな」


 胸を張って香織の父は嬉しそうに答える。


「香織はもう出て行ったわよ」


「知っている」


 何を当然な事を、と言った顔をする。


「もうここにいる用事はないわよね」


「……何が言いたい」


 母のただならぬ何かを察した顔をするの父は険しい顔になる。


「昼ご飯食べたら会社には行きなさいね」


 それは有無を言わなさい迫力ある声だった。


「……はい」


 呆気無く屈したのだった。


 父より母の方が強いのだと香織は知らないのだった。






「なんか騒がしかったよね。ごめんね」


 香織の実家の最寄りの駅から集合場所へ地下鉄で向かう途中、香織が再度陽里に謝る。


「楽しそうな親御さん達だったよ」


「バカにしてるでしょ」


 陽里の玉虫色の返答に香織が頬を膨らませる。


「してないよ」


 尤も、困惑し続けたのだが。


「お父さん、白髪が増えてたな……」


 自分がいない間、苦労していたのだろうかと香織は思い悩む。


「お母さんもシワが出来てたし」


 香織の年齢からしたら40代~50代であろう。

 妥当と言ってしまえばそこまでだが、娘との幸せな日々を考えれば何かあったのかもしれないと思うものである。


「でも会えて良かった」


 顔を綻ばして呟く。


「ありがとう」


「ボクは提案しただけだ。副隊長が敢えて目を離しただけだよ」


 秋雄が3手に分かれるように言ったのは香織が顔を出せるようにするためだったのではないかと疑っている。

 その場合、満太と香織のペアにすれば1番の手段だが最後の判断を陽里に任せたのではないかと陽里は考える。


 その真意はわからないが、もしかしたら今朝の突き飛ばした事について不器用ではあるが謝罪の代わりだったのではないかと陽里は予想する。


 尤も、秋雄に直接訊いても答えないだろうが。


「そっか」


 陽里の推測を聞いて香織は納得する。


「ねぇ」


 香織が陽里の腕を突く。


「名前で呼んでもいい、かな?」


 上目遣いで陽里を見る。

 それは決してわざとではない天然の行動だった。


「好きにするといいよ」


 だがそれが陽里に効果がある訳もなく、素っ気なく許可するのだった。


「陽里くん、ありがとう」


 満面の笑みを浮かべる香織に陽里は礼に答えるのだった。


「って陽里くんもわたしの事名前で呼んでってば!」


「機会があったらね」


 列車のアナウンスは目的地に着いた事を告げる。

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