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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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57.Mother and Daughter

新年明けましておめでとうございます。

今年もどうか、どうか拙作をよろしくお願いします!


前回のあらすじ

・香織ママ登場

・陽里×香織(?)

「まさか香織に恋人が出来たなんてお母さん嬉しいっ!」


 手を叩いて大喜びする香織の母。


 想定外の展開に当の2人は思考停止(フリーズ)してしまう。


「ち、違うって!!」


 先に思考復帰(レジューム)したのは香織の方だった。


「そうなの?」


 明らかに娘の言葉を信じていないような目だった。


「そうだって! 会ったのだって昨日だよ!?」


 忘れてはならないがヘッジホッグ部隊は結成2日目である。


「ホントに~?」


「ホントだって!」


 香織は顔を膨らまして言う。


 そう言った母娘の会話を陽里はただ無言で眺めていた。


 茶化し合ってお互いの近況を話して思い出話に花を咲かせる。


「だってそれお母さんが言ったからでしょ!」


「違うわよ。香織が言ったんだって」


 喧嘩もまたコミュニケーションの1つだろう。

 次第にヒートアップしていっているが水をさす事もないだろうと陽里は冷茶を飲んで走らされてかいた汗で失った水分の補給をする。


「あんたね、昔から頑固過ぎ!」


「お母さんにだけは言われたくないね!」


 ……意思疎通と言い難いものになったがこれも母娘だからこそのものだろう。


 思わず席を立ちたくなった陽里だが時計を見るとそろそろ出ないと間に合わない時間だった。


「歓談中悪いのですが――


「「誰と歓談だって!?」」


 母娘喧嘩の勢いに負けかけた陽里はそれ以上何も言わずに時計を指差す。

 息が合ってる事を言うのは藪蛇だろうと陽里は思った。


「あ、そろそろだ……」


 香織の一言で喧嘩は一気に鎮静した。


「お父さん、帰って来ないわね」


 さっきまでの威勢はどこへ行ったのか、香織の母も悲しさを浮かべる。


「仕方ないよ。お父さんによろしく言っといて」


 香織は立ち上がって玄関へ先に向かう。


「ごちそうさまでした」


 陽里は冷茶を飲み干してコップをテーブルに置く。


「待って」


 立ち上がろうとしたところで香織の母が陽里を止める。


香織(あの子)、昔からいろいろ我慢しちゃう子でね。転んで怪我して痛くても泣くの我慢して……。私達に怪我を見せないで化膿しちゃってホントに大変だったわ」


 香織の母は一旦区切って冷茶を飲む。


「そのくせ優柔不断と言うか引っ込み思案と言うか1人で抱えちゃって誰にも打ち明けないし、ああすれば楽なものを何かと理由つけて行動に移さないのよ」


 それは先までの香織の事を言っているかのようだった。

 両親に会いたい事を我慢し続けて、会いたいと口に出す事を恐れ、機会があっても逃げようとする。そんな少女を。


「何をストイックに自分を追い込んでるか知らないけど親からしたら堪ったものじゃないわよ」


 香織の母は両手を腰に当てて溜息をつく。


「そう言えばお名前を聞いてなかったわね」


 終始母娘の会話だったため陽里が入り込む余地は――彼が積極的だったらあっただろうが――無く香織の母は自分の娘といたこの少年について何も知らないでいた。


「結城陽里と言います。きの……彼女とは同僚です」


 苗字はこの場では呼ぶのもかと言って名前で親しげに呼ぶのもどうかと思った陽里は敢えて三人称を使う。


「そう。陽里君ね」


 さも当然のように名前の部分だけを呼ぶ。


「頑固で時々手に負えない性格だけどいい子なのよ。親の贔屓目かもしれないけど。うふふ」


 彼女は手に口を当てて笑う。


「どう? 今のうちに確保しとかない?」


 陽里に詰め寄った香織の母は笑ってそう囁く。


「彼女とはそう言う関係じゃありませんので」


 陽里は顔は笑ってはいるが目が笑っていない香織の母から距離を取る。


「陽里君でしょ? 香織をここに連れてきたの」


「どうしてそう思うんですか?」


「何年あの子の母親やってると思うの? あの子の考えてる事なんてお見通しよ。あの子があの子の意思で来るとは思わないわ」


 香織の母はどこか遠くを見るかのようにして言う。


「良くてマンションの前で入ろうか入らまいか考えて時間が来ちゃうってところかしら。優柔不断よね」


 実際にそうなりかけた香織である。


「あの子の背を押したのはあなただと思ったのよ」


「……」


 陽里は黙秘した。

 と言うより答えに悩んだ。


「ボクだけじゃありませんよ」


 それは事実だ。


「ふふ。まぁそう言う事にしとくわ」


 だが香織の母はそれが謙遜だと思って流す。


「でも陽里君なら香織に合うと思うんだけどなぁ」


 その言葉に陽里はどう反応していいか困惑した。


「……それはなんでですか?」


 苦し紛れに出て来た言葉がそれだった。


「頭が良さそうで目がいい。香織の抱えてるものがわかりそうなところよ」


「ボクはそんな事出来ませんよ」


「嘘ね。まったく下手なんだから~」


 香織の母は陽里を叩く。


「どうしてそう思うんですか?」


 陽里は訊く。


「母の勘よ」


「……」


 こればっかりは陽里は何も考えられなかった。


「まだー?」


 玄関で香織が呼ぶ。


「娘を頼んだわよ」


 香織の母は陽里の背中を叩いて送り出す。


「その……保証は出来ません」


 陽里は困った具合で言う。


「いいのよ。あの子の好きなようにするのが1番だから。これは親の余計なお節介よ」


 結局何だったんだと陽里は思いながら玄関へ向かう。


「遅いよ。お母さんと何話してなの?」


 香織が陽里に尋ねる。


「まさか……お母さん!」


 何かに気付いた香織は母を睨む。


「まだ恋人かどうか疑ってるの!?」


「さぁどうかしらねぇ」


 そうはぐらかす香織の母。


「だからそう言う関係じゃないから! とっとと行こ」


 そう言って香織は陽里を手を引っ張ってドアを開ける。


「うわっ!」


 香織がドアを開けると背の高い男がいた。

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