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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
57/249

54.

2日連続でブクマだと……!?

感謝感謝です!!


ルナリアサイドの話です。

前回のあらすじ

・銃弾の性能がアップした!

「それで試させてもらえるのでしょうね」


 ルナリアは笑顔を崩さない店主に言う。


「2.5kmもある部屋なんてあるはずありません。ぶっつけ本番でございます」


 誰も使った事のない弾薬を用いていると言うのにこの言い様である。


「最近は魔獣(ホレット)が現れないんだけど」


 その本番すらここ数日来ていない。

 おそらく冥界犬(ケルベロス)の件が大き過ぎたのだろうとルナリアは考える。


「そもそもこの第参都市(トーキョー)に魔獣が現れる事自体が異常事態だったのですよ」


 重要拠点を攻められるなど軍からしたら言語道断だった事だろう。


「知らないわよ。そんなの」


 ルナリアはアイスココアを飲み干してグラスをテーブルに置いた。

 なお、氷は食べていない。


「ルナリア様はここに来て1年目でしたね」


「そうよ。ここに来た時にはもう魔性犬(デヴィドッグ)がいたわ」


 寧ろそう言う話を聞いたからやって来たのだ。


「まさかマスターがいるなんて思わなかったけど」


「ええ、驚きです」


 もっと以前に出会っていた2人だが再会するとは2人共思わなかったのだ。


「どこか魔獣の出るところはないの?」


 もう1つの(ターゲット)は見飽きる程いるけど、とルナリアは小声で付け足す。


「やはり日本海付近でしょうかね。戦線に出れば間違いなくいる事でしょう」


「嫌よ。人間的生活がしたいに決まってるでしょ」


 ルナリアは第参都市外での生活は一種の完全管理社会であり管理外の人間は生活スペースがない事からホームレス生活となると思っているため断固拒否する。


「ならばもうそのもう1つの敵に絞るべきでしょうね」


 店主はルナリアのグラスをカウンターへ持っていき氷を捨てて洗う。


「狙えそうなのいる?」


 ケースから銃弾を取り出して眺めながらルナリアは訊く。


「そうですね……」


 洗う作業を止めて店主は思案する。


「幸い彼らはわかりやすい見た目をしてる事ですし巣に帰る道中で仕留めれば良いのでは?」


 そう言ってグラスをすすいで布巾で拭く。


「まるでフィッシングね」


 待つ根気の要りそうなものだと思ってルナリアは鼻で笑う。


「ならばいっその事巣にでも入りますか? 虎穴に入らずんば虎子を得ずと言いますし」


「冗談じゃないわよ。そんな自殺志願者(バカ)はいないし欲しいものがある訳でもないし」


 店主のジョークに呆れるルナリア。


「貴重な資源が手に入る機会なのですがね」


 店主はわざとらしい残念な顔を浮かべる。


「それはマスターが欲しいだけでしょ」


 ルナリアは店主の目的がわかってさらに呆れる。


「ちゃんとルナリア様にも還元致しますよ?」


「行かないって言ってるでしょ」


 ルナリアは銃弾を仕舞ってケースを閉じる。


「結局どうするのですか?」


 店主は先までの冗談を止めて真面目な雰囲気で訊く。


「あたしはあたしの目的を果たす。それだけよ」


 ルナリアは立ち上がってアイスココア代を払って店を出る。


「ご来店ありがとうございました」


 店主は役者のように深々と頭を下げてルナリアを見送った。


「冥界犬の件もありますし気を付けた方がいいとは思いましたがこれぐらいなんとかしてもらわないとこの先もなんとか出来ないでしょうし、まぁいいでしょう」


 誰にも伝わらない独り言を呟いた店主はテーブルを拭くのだった。






 店から出たルナリアは重いケースを両手で握って地下鉄で移動する。


 着いた先から直接デパートとして開放されている高層ビルを昇る。


 幸い屋上に人はおらず、さらにハシゴで登ったところの死角に隠れてケースを開ける。

 二脚を取り付けてひとまず置く。

 続けて双眼鏡を取り出して街を覗く。


「まぁそう簡単にいたりはしないわよね」


 こう呟けば物欲センサーがバグってくれると思ってルナリアは呟く。


 だがそんな願いも虚しく見つからないでいた。


「げ……」


 決して過ごしやすい気温ではなかったが曇りと言う天気はこの夏においてはまぁまぁだったと言うのにいよいよ晴れ始めて太陽が現れ始める。


「現れて欲しいのはそっちじゃないっての」


 太陽とターゲットを同一にするのはどうかとルナリア自身も思うがこの場にツッコミを入れる者はいない。


 日焼け止めも塗っており、それに日焼けを気にする事もないため引き続きここで待つのも構わないルナリアであったが熱中症を起こすのもバカバカしいと思ったルナリアは後数分探すと決めた。


「暑い……」


 そう決めてから1分も経たずに音を上げる。


 確かにエネルギーと質量の変換が可能となったが地球に蔓延るこの暑さ(エネルギー)が質量に変換される事はない。


 寧ろその逆で地球上の極々一部の質量がエネルギーに変えられている。


 地球から宇宙へと熱が出ていかない限り、理論上は温暖化すると言う事だ。

 つまるところエネルギー保存則とエントロピー増大の問題でいたるところで冷房を使った結果、外が暑くなるのだ。


「なんてどうでもいい事考えてるくらいに頭がイカれたのかしら」


 そして見つけたのだ。


 初めは暑さで幻覚でも見たのかと疑ったが頬を抓っても痛く、改めて見てもいたのでどうやら本物のようだ。


「探せばいるものじゃない」


 早速銃を構える。

 伏せ撃ちと言う構えで二脚の効果を活かしてかつ照準のブレを抑える構えだ。

 ただし服が汚れるので下にビニールシートを敷いている。


 呼吸を整える。


 距離およそ2.3kmの超遠距離狙撃。


 ターゲットは茶髪の少女。隣には黒髪の男がいる。


(カップルなのかな? ってそんな事考えてないで集中……)


 呼吸を止めて――


「バンッ」


 心臓を貫いただろうと確認したルナリアは急いでケースに銃を仕舞う。


(思ったより音が大きいわよ! 次会ったら絶対に文句言ってやる)


 弾薬に使っているオクタニトロキュバンの爆発音が大きく、もしかしたら人が駆けつけるかもしれないと予感したルナリアは心の中で店主に呪詛を吐きながら急いで撤収するのだった。

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