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神の居ない世界にて  作者: アウラ
2.Can he kill?
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48.

「随分と手荒な事をしたんだな、中将様?」


 ヘッジホッグ部隊を結成した日の夜遅く、作業を続ける喜助の元にエリザベスが訪れていた。


「何の事かな?」


「例の特殊部隊だよ。なんつったかな……」


「ヘッジホッグ部隊の事かい?」


「わかってて言わんでくれ」


 許可も得ずにソファーに座ったエリザベスは喜助の態度に呆れて溜息をつく。


「部隊の空気が最悪じゃ作戦なんてまともにこなせる訳ないだろうが」


 エリザベスはヘッジホッグ部隊の事を知っている。何故なら――


「だったら隊長は君に譲るよ? そのために隊長を預かっている(・・・・・・)んだから」


 喜助は元よりヘッジホッグ部隊の隊長をやるつもりはない。

 あくまで名前だけの隊長だ。


「何度も言うがその件は断る。ワタシは9月で辞めると決めてるんだ。それは以前言っただろ?」


 以前――喜助が自棄酒気味のエリザベスに付き合った夜にエリザベスは喜助に軍を辞める事を告げたのだ。


「だが言ったよね。君の部隊をもう1度だけ作ろうって」


「聞いてもねえし頼んでもねえ」


 実際その話を聞いていたからヘッジホッグ部隊について知っているのだが。


「ほらぁこのままだと部隊が崩壊しちゃうよ?」


「脅してるつもりか? ワタシには関係ないね」


 エリザベスは鼻で笑う。


「中将権限を使おうかい?」


 それに対して挑発する喜助。


「やる気かい? そうでもすればすぐさまワタシはあんたとの契約を切って第壱都市(ニューヨーク)に戻るだけさ」


 エリザベスは歪な状態ではあれど客員教官だ。

 喜助の権限でどうにか出来る相手ではない。


 それを理解しているから喜助も無茶な事をせずエリザベスを軽く脅す程度で部隊に入るよう言い続けているのだ。


「まったく……困ったものだねぇ。このままじゃ本当に崩壊しちゃうよ?」


 喜助の言っている事は事実だった。


 それは以前は部隊を率いていたエリザベスも理解している。


 それ程にまで第一印象とは重要なもので最初が上手くいかないと後にまで響いてくるのだ。


 この事態を解決出来るだけのパワーを持った人物――エリザベスがいればすぐにでもヘッジホッグ部隊の現状を打破出来るだろうと喜助だけでなくエリザベスですら考えている。


「それにあの部隊の組合せは最悪を極めている」


 エリザベスは1人1人名前とその性格や能力を思い返して言う。


「赤嶋秋雄少尉を何故実質隊長の副隊長にしたかだ。これでは佐畑信次一等陸曹の能力を潰すようなもんだ」


「せめて赤嶋秋雄が平の隊員だったらと言いたいのかい?」


 喜助がエリザベスの言葉を継いで言う。


「それ以前の問題だ」


 赤嶋秋雄――指示に従わない言わば自己中心的な人物だとエリザベスは評価している。


「だからこそ彼を平には出来ない。誰がどうやろうと部隊の崩壊は必至だろうねぇ」


 だがその実力は確かなものだ。


 作戦行動は合理的で少々真面目が過ぎるがしっかりとこなす。


 性格以外十二分に有用な彼が作戦外で勝手に行動しても問題のない状態にすればいいと喜助は考えたのだ。


「ならば佐畑信次一等陸曹についてはどうだと言うのだ」


 佐畑信次――僅か1年にして2階級上げた期待の新人である。


 その真価は彼の頭脳にある。


「作戦立案に長けた参謀向きだ。だが赤嶋秋雄が彼の作戦に従うとは考えにくい」


 秋雄が従わなければ作戦は形を成さないだろう。


 故にエリザベスは秋雄の立場が信次の能力を潰すと考えるのだ。


「まぁ丸腹君もいるしねぇ」


 喜助は顎髭を触って言う。


「それが最悪に拍車を掛けているんだ!」


 エリザベスの怒鳴り声が部屋に響く。


 丸腹満太――阿羅機士(アルハーダー)の実力はある一点に秀でておりエリザベスから見ても優秀であると言える。


 だが組合せが悪かった。


「赤嶋秋雄のストレスの捌け口にしようとでも考えているのか!?」


 秋雄や満太の性格を知る者からすれば、満太が秋雄の標的となるのは必至なのだ。


「そのための――


「そのための木下香織一等陸士か?」


 喜助の言葉を被せるようにエリザベスが言う。


 木下香織――一等陸士であるがその実力は並の一等陸士以上。

 社交性が高く誰にでも親しめるある意味で稀有な才能の持ち主だ。


「部隊の緩衝の役割をしてくれると思うよ」


 満太が秋雄に虐げられてもすぐには崩壊しない役割を果たすだろうと喜助は考えている。


「それが最悪だと言うのだ。あんたは人として間違っている」


 エリザベスは喜助を糾弾する。


「作戦遂行において最良の条件にするのが部隊編成者の任務だ。あの4人に()を足せば作戦が終わるまでは崩壊しないだろう」


 結城陽里――実力は計り知れない程の天才。


 部隊の人間関係では唯一干渉する事がない益にも害にもならないだろうと喜助は考えている。

 さらに作戦遂行を加速させる役割を果たしてくれるだろうとも考えている。


 ヘッジホッグ部隊全員が阿羅機士としての実力は一流であり、能力だけを見るならばあらゆる作戦をこなせるだろう。


 そのような実力者達は総じて歪な性格を持つ。


 喜助にとって最良とはいかに被害を出さずに最大の益が出せるかである。


「もし君がその事について不満があるなら是非にも踏み出してくれ。いつでも席を譲るよ」


「ぐっ……!」


 本来エリザベスには文句を言う筋合いがないのだ。


 喜助がエリザベスの文句を聞くのは第一にエリザベスがヘッジホッグ部隊の隊長になって欲しいからであり、次点でエリザベスが立場を越えた友人であるからである。


「話はここまでだねぇ」


 言う事が尽きたと思った喜助はモニターを閉じたのだ。


「明日も早いんだからしっかり寝ないとねぇ」

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