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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
41/249

40.And she says…

「いただきます」


 新の遺品整理が終わった夕方、陽里は1人で食堂にて夕飯を食べていた。


 3日前までは新のくだらない話に付き合っていたがその声はもう聞こえない。


「ごちそうさまでした」


 ものの数分で食べ終わった陽里は手を合わせて呟く。


(1人で食べるとやっぱり早いな)


 話す――いや、話しかけられる相手がいないため黙々と食べる事に集中していた陽里は食べ終わって気付く。


「よう」


 席を立とうとしたところで赤髪の女性――エリザベスがトレイを置いて座りだす。


「エドベル教官」


「まぁ1人で食うのもつまらねえし付き合えって」


 陽里が半立ちの状態から腰を下ろしたのを確認したエリザベスは手を合わせる事もなく早速食べ始める。


「会議は終わったんですか?」


「あぁ終わった。長かったなー」


 水で食べているものを流し込んだエリザベスは陽里にコップを渡す。

 もちろん水を入れてこいと言う意だ。


 何も言わずに陽里は自分の分も入れてエリザベスに渡す。


「貴様が出会した冥界犬(ケルベロス)のように単体が複数体を出現させる能力について大々的に認識を広める事が決定した」


「そうですか」


「今まで極稀に神和国領土にいたってだけで知られてなかったからな。ワタシも伝え聞いてでしか知らん」


 どうやら陽里が討滅した冥界犬は相当マイナーな能力を持っていたようだ。


「会議の議題はほとんどそれについてだ。ったく、くだらねえ話を長々としあがって」


 唾を吐きかねない程渋った顔をしたエリザベスは水を飲んで落ち着く。


 魔獣(ホレット)の解析は対神和国において最重要項目であり信憑性の確認などの精査が基本である。


 既に討滅し終わった魔獣についての調査であるため進捗が非常に悪く会議は憶測が飛び交うものとなったのだ。


「で、次に貴様の処遇についてだ」


「ボクのですか?」


「あったりまえだろ。ランクAの魔獣を討滅しときながら何もねえってのは軍の面子の問題に関わるんだよ」


 エリザベスは箸で陽里を指しながら声を荒げる。


「そうですか」


 特にそう言った事を考えていなかった陽里は内心では驚く。


「本来だったら昇級だろうが貴様が特Aから降りてきたって話じゃそうはいかねえらしい」


 陽里は特A師団からA師団へ異動願を出してA師団(ここ)へ来たのだ。

 言わば自分から降格するような事をしたため上官達からはある種冷たい目で見られている。


 そんな陽里を昇級させる事は陽里にとって階級や立場は自由に出来るものと認める事になりかねない。

 そう思った彼らは陽里の昇級に反対したのだ。


「まぁ昇級つっても上等陸士や陸士長とかだろうがな。大したもんじゃねえよ」


 とは言え陽里は徴集兵。昇級にもたかが知れている。


「だがさっき言った通り面子の問題がある。そこでだ。結城陽里一等陸士」


「イエスマム」


 突然の階級付きで呼ばれた陽里は姿勢を正して敬礼をする。

 まさにパブロフの犬だ。


「貴様には討滅の武功として七等星勲章(ワンスターオーダー)を授ける」


「ありがたく受勲させていただきます」


「そんなかたっ苦しいのはよせ」


 エリザベスは左手で手を振りながら右手の箸で食べ物を口に運ぶ。


「特Aの下士官程度の連中なら皆持ってんだろう?」


「まぁ、そうですね」


 七等星勲章――連合国軍の中で比較的大きな功労によって授けられる1つ星が彫られた小さなバッジである。


「冥界犬の討滅ともなれば本来渡されるのはもう2つ上のやつなんだろうがな」


「一兵卒には身に余るものです」


「心にもない事を言うな」


 陽里の心を見透かしたエリザベスは残った水を飲んだ。

 見透かされた方は苦笑いで誤魔化しているのだが。


「まぁ冥界犬の能力についても貴様の勲章の話も前置きだ」


 口をハンカチで拭いてエリザベスは肘をテーブルに乗せて頬杖をつく。


「なんでしょうか?」


 陽里は神妙な顔をしてエリザベスに訊く。


「明日付けで貴様をワタシの教育隊から外れてもらう」


「それはどうして……」


「思ったより鳩が豆鉄砲をなんとかみたいな顔じゃないな」


 エリザベスは陽里のポーカーフェイスに面白いと驚く。


 一方の陽里は心の片隅でそこまでことわざが言えるなら最後まで言えるだろ、と突っ込んでいた。


「冥界犬を単独討滅出来るような奴をワタシは教えられる気がしない。卒業だ」


「そうですか」


 陽里からしたら抗議する必要もない事だ。

 教官であるエリザベスから言われたのなら仕方ない。


「それでだ。貴様の今後の配属先だが……」


 エリザベスはわざとらしく溜めてから言う。


「A師団特殊部隊だ」


 エリザベスはニヤリと笑ってそう告げた。

さも次回があるような終わり方ですが第1章はおしまいです。

長ったらしくなりそうな後書きは活動報告に書こうと思ってます。(予定)


☆次章予告

冥界犬を討滅し新たな舞台へと飛び込んだ(飛び込まされた)陽里は実力者(エリート)達と共にする。

A区に訪れた平和、そしてその裏で動く1人の少女。

それぞれの思惑がぶつかる時、運命は歪み始める。

第2章『歩き出した道の跡』


と、その前に間話です。

今後ともよろしくお願いします。


追記

2016/1/15 後書きにて次章の日本語版タイトルを追加

2017/12/23 表記修正

2018/02/16 第1章日本語タイトルを追加(なんとルナリアの画像付き!)

2018/10/23 やっぱり画像を消去

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