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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
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37.Interaction

今回は短めです。申し訳ありません。

 陽里が少女の元に戻ると彼女は銃口を陽里に向けていた。


「さっきはありがと」


 陽里はその状況を気にする様子もなく少女に礼を言う。

 少女の助けがなければ冥界犬(ケルベロス)との戦闘はより熾烈なものになっただろう。

 陽里自身は負ける可能性を考えていないようではあるのだが。


「別に。あの時の借りよ」


 陽里は双頭犬(オルトロス)の討滅の時にもこの少女の目の前で雷霆を放った事を思い出す。


「そう。じゃあボクは帰るよ」


 陽里は背を向けて帰投しようとした時――


 パンッ


「待ちなさい」


 阿羅機(アルハード)の装甲諸共陽里の膝を撃ち抜く。


 流石に初速マッハ3を超える銃弾を至近距離で撃たれたらMCASS(バックアップシステム)でも反応出来ない。


「「手を挙げて武装を解除しなさい」」


 2人の声が被る。


「ちょ、バカにしてるの!?」


 少女が顔を赤くして声を荒げる。


「どうしてボクを殺さないんだい?」


 膝の痛みの素振りも見せず陽里は少女に訊く。


「さっきも援護しなかったらボクも多少は怪我をしてただろうし冥界犬と一緒に撃ち殺す算段だってついた筈だ」


 少女からしたら漁夫の利が狙えた筈なのだ。


「でも君はそんな事しなかった。魔獣(ホレット)以外にも阿羅機士(アルハーダー)も君にとっては敵なんだろう?」


 陽里からしたら彼女が取った行動はどう考えても非効率的な手段でしかなかったのだ。

 だから一時は冥界犬にとどめを刺すのを一旦諦めようとしたのだ。


「それは……。あなたが強いだけ……よ」


 双頭犬のみならず冥界犬ですらほぼ無傷で単独で討滅出来る程の実力者を彼女は見た事がない。

 そのような相手を殺すのは至難の業であろう。


「本当にそう?」


 だが陽里はその答えは違うと言った。


「……何よ」


「君の言葉には動揺と躊躇いがあったように聞こえた。それに――」


 陽里は阿羅機を解除して振り返って少女を見る。


今は(・・)殺そうとする目じゃないよ」


 陽里は微笑んで少女を見る。

 解除した光の粒子2人を包む様は幻想的であった。

 だが実際は阿羅機を解除しただけであって2人に感慨はない。


「……」


 少女は顔を真赤にして手を震わせる。


「ごめん怒らせ――


「あなた一体何者?」


 陽里が謝ろうとするのと同時に少女は陽里に尋ねる。


「結城――


「ヨーリ。名前しか知らないわ」


「名前憶えてたんだ。呼ばなかったから忘れてたと思ったよ」


 少女の様子は初めての人に対するものとは少し違ったが名前を今まで呼ばなかったため、陽里は彼女が憶えていた事に僅かだが嬉しさを覚える。


「あたしはヨーリの事を何も知らない」


「ボクも君の事何も知らない」


 すかさず陽里が返す。


「ルナリア」


 聞き取れるか聞き取れないかのぼそっと小さく呟く。


「ルナ……君の髪色と同じだ」


 (ルナ)を彷彿とさせるレモンイエローの髪が風になびく。


「ヨーリ、あなたにとってあたしは敵じゃないの? 今日だって仲間を2人は殺しているのよ」


 少女は――ルナリアは銃を構え直して陽里に訊く。


「それはルナに何か理由があるから。違うかい?」


 銃の存在を認知しないかのように気にせず陽里は平静に訊き返す。


「違わないけど……」


 ルナリアは目を伏せて答える。


「ボクは仇討ちはしないと決めてる。したところで無駄だしね」


 陽里は上を向いて目を閉じる。


「それにボクが討つのは魔獣だ。人じゃない」


「……そう」


 ルナリアは悲しげな顔をして銃を下ろす。


「そろそろ帰投しないと上官に半殺しにされそうだな。ボクは帰るよ」


 陽里は屋上の端に立つ。


「待って」


 ルナリアの言葉に陽里が振り返る。


「また……会いましょ?」


 不安そうに陽里を見るアメジスト色の瞳がそこにはあった。


「ああ、また今度」


 陽里は微笑んで飛び降りる。

 直後に阿羅機を起動して陽里はヘリの待つ場所へと飛んで行った。


「また今度」


 1人残ったルナリアは銃を胸に抱きしめてそんな無責任な言葉を復唱するのであった。

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