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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
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36.16 seconds

前回のあらすじ

・おお、モブ1よ、しんでしまうとはなさけない!

・陽里、ヒロインと空の逃避行

「下がってて。……雷銃2丁セット」


 その呟きと共に陽里の両手から2つの雷銃が握られる。


『チャージ開始。完了まで16秒』


「16秒間耐えてやる」


 陽里は飛んで冥界犬の前まで来る。


 冥界犬は一瞬恐怖で怯むがすぐに距離を取ろうとする。


(その僅かな隙で十分だ)


 陽里の左足の蹴りが潰れた目にヒットする。


 普通の大型犬の8倍強の大きさを誇る化け物と言えど傷口に塩を押し込めるような攻撃には堪えたようだ。


 しかしランクAと言うものは伊達ではなく反撃に噛み付こうとする。


「よしそのまま来るんだ」


 陽里は200m先にあるビルまで飛行して冥界犬をギリギリまで引きつける。

 あろうことか冥界犬はひとっ飛びで200m跳んだ。


「初めからそうすればいいものを。……もしかしたら負荷のかかるのかもしれないな」


 さっきまで150mも跳べなかったのは何かしらの制限を掛けていたのだろう。


 速さも相当なもので目で追うのが陽里ですら精一杯であった。


「よし、次だ」


 空戦型特有の地形に縛られない動きで陽里は冥界犬から逃げながら誘導する。


『10……9……8』


 半分を切ったところで冥界犬は口を大きく開ける。


(火炎放射か)


 今ここで雷銃を仕舞って雷環を出して防御してしまえばチャージが無駄になる。


 陽里が取れる手段は回避しかなかった。


 だが冥界犬の放ったものは違った。


 それは炎より熱く、重みのあるものだった。


 消防ポンプのように多量にそして高圧で一直線に放たれたレーザーのようでそうでないもの。


(溶岩!?)


 炎やレーザーとは違い重力の影響を受けたそれは僅かであるが放物線を描く。


 その僅かな軌道のズレが陽里の紙一重で避ける算段に計算ミスを生ませた。


「ちっ、チャージに演算割きすぎた」


 MCASS(バックアップシステム)による冥界犬の攻撃予測が間に合わず溶岩砲にケラウノスの飛行ブースターに当たる。


『警告、飛行ブースターが損傷しました。自動修復を行います』


「その必要はない。今はチャージが優先だ」


 高度400mからの自由落下。このままならば地面に激突する前に撃ち貫けるのは確定だった。

 このままならば(・・・・・・・)


『同様攻撃の前兆を観測』


放冷時間(リキャスト)がないのか!?)


 逆さまに落ちた状態から仰向けの体勢にして撃つ姿勢となった陽里が見たものは冥界犬が陽里の真上で落ちながら再び溶岩砲を出すべく口を開く姿だった。


(違う、開く口が違う)


 2つある内の片方からは涎を垂らすように溶岩が垂れていたが、もう片方――片目の潰れた方は口を大きく開けて陽里を殺さんとその隻眼で睨んでいた。


『6……』


(チャージを諦めて撃つべきか? しかしそれでは倒しきれない)


『5……4……』


 このままでは間に合わないと諦めて片方の雷砲を牽制代わりに使おうと思ったその時――


「――っ!」


 冥界犬はあらぬ方向へ溶岩砲を放った。


 何かと思えば放とうとした頭の目が潰れている。

 両目を潰された冥界犬が狙いを陽里に定める事は出来ず放った先はどことも言えないところだった。


『3……2……1……』


 落下した空中で2頭とも溶岩砲を放った冥界犬に為す術はなくMCASSによるカウントが0となる。


「雷霆……14体目、討滅」


 音もなくしたこの瞬間、極太の光の柱が大空へと舞い上がる。


 誰しもがもしこれが地面に向かって撃たれていたならば辺りは廃墟と化していたに違いないと感じる事だろう。

 紛れもなく破滅の光であった。


 次に轟くは爆音。

 瞬間的に局所的に数万度に達した空気はその膨張により音速を超えて衝撃波を生み出す。

 あまりの衝撃波は周囲の窓ガラスをすべて粉砕する。


 中心部は周囲からの衝撃波によって圧縮された高圧になった空気がプラズマ化が発生する。


 冥界犬に見えた世界は光だけだった。

 もう一瞬でも身体が融けるに時間を要していたら、意識を保っていたならばその轟音と、神話をも凌駕する灼熱の地獄を味わう事となっただろう。


 そして再び静寂が訪れる。


『対象の生命反応がロストしました』


 聞くまでもなかった。そこには何も残っていないのだから。


 着地の際出来たクレーターの真ん中で陽里はビルに狭まれた空を見て一息つく。

 出撃前は夜明け前の黒い雲に覆われた空であったが瑠璃色となり今や空色となっていた。


『飛行ブースターの応急修復が完了しました』


 ようやく自動修復が完了してすると陽里はすぐに飛び出していた。


 行き先はもちろん彼女のところだ。

長かった冥界犬戦が終わりました。

次回より事後処理編もとい1章エピローグです。

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