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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
35/249

34.

前回のあらすじ:名探偵エリザベス

 エリザベスによって冥界犬(ケルベロス)の能力の1つが告げられた。


「遅いですよ!」


 陽里は雷刃を構え直して目の前の魔獣(ホレット)と相対する。


『ふっ、無事なようだな。それと返事が違うぞ!!』


 陽里の耳が割れんばかりに怒鳴るエリザベス。


「イエスマム」


 ひとまず通信を切る陽里。


(しかし焦った)


 冥界犬を回し蹴りでビルに突っ込ませて怯ませたところでとどめを刺そうとしたところで冥界犬から魔性犬(デヴィドッグ)が突如飛び出してきたのだ。


 寸でのところで雷刃で防げたものの折角の冥界犬へとどめを刺すチャンスをふいにしてしまった。


 陽里は愚直に突撃してきた魔性犬の首を斬る。


 その時には既に冥界犬は起き上がっていた。


「なるほどね。犬系を召喚出来て気配も消せる。ボク達からしたら何もないところから湧いて出てくるように感じる訳だ」


 時々、冥界犬は気配を消した状態で魔性犬を何体か出現させて襲撃していた。

 そしてその冥界犬は夜に密かに北へと移動していた。


「今日中には特A区にでも着くと考えての大襲撃なのか何なのか……」


 陽里はそこまで呟いて再び雷刃を正眼に構える。


(今となっては考える事でもないな。わかったところで冥界犬を討滅すればいいだけの事)


 陽里のやるべき事に変わりはないのだった。


 3度目の仕切り直し。


(それにしても自動で雷環を使うと雷刃へのエネルギー供給が足らなくなるのか)


 先の激突で自動で火炎放射を防いだは良かったが雷刃の青光りが消失し刃としての機能が一時的にであるが失われてしまった。


 仕方なく回し蹴りで怯ませたが陽里はその仕様に不満を募らせる。


 ケラウノスの武装(デバイス)の欠点は1種類の武装しか使えない点にある。

 1つ1つが強力故に生じる欠点だ。


 陽里がそうこう考えている内に冥界犬が再び仕掛ける。


「仕方ない。速度制限の解除を申請」


『解除理由の提言を求めます』


「ランクA魔獣の討滅手段」


『審議中……』


 陽里は冥界犬の攻撃を往なしながらMCASS(バックアップシステム)の答えを待つ。


『速度制限及び加速制限を解除しました』


 MCASSが告げるや否やケラウノスの2機のブースターが破壊的なまでの出力を噴き出す。


 辺りの高層ビルを破壊しながら冥界犬の周りを縦横無尽に飛び回る。


 3つ頭が上を向いたその時、陽里は雷刃を振り上げた。


「すまない、下だ」


 一閃。

 冥界犬の真ん中の首が1つ落ちる。


「ガァーッ!!!」


 残った2頭が絶叫を上げる。


双頭犬(オルトロス)の時に首は全て落とさないと討滅出来ないと知った。嘘泣きなのは知っている」


 振り上げた雷刃を今度は振り落として2つ目の首を斬ろうとした瞬間、火炎放射が飛ぶ。


(ちっ……)


 すぐさま雷環で防ぐも攻撃の手を止めてしまった事に心の中で舌打ちをする。


 それはレーザーのような一線が太陽のように光る一撃であった。

 辺りは融けて溶岩が出来ており、水蒸気の濃い霧も同時に出来ていた。


『対象が逃走を始めました』


「逃すものか! っと」


 追いかけようとしたところで3体の魔性犬が道を塞ぐ。


「放置する訳にもいかないしな」


 数秒で魔性犬を討滅した頃には霧が晴れて視界が良好になったが冥界犬の姿は見つからなかった。


『1.8km西に高エネルギー反応。冥界犬のものと思われます。さらに同地点に阿羅機士(アルハーダー)2名を確認しました』


(なんで東に逃げて西にいるんだ)


 おそらくその2名は陽里が逃がした日下部と和堂であろう。


 陽里が可能性を考える。


「こんな状況で仇討ちか」


 篠原を殺した人物への復讐。


 冥界犬から逃げて安堵した先に思い立ったのだろうと陽里は推測する。


 すぐさま上空に飛び立ってマッハの壁を突き破って目指す。






「あのビルの屋上だ!」


 和堂が叫ぶ。


 指差すのは近くの中で群を抜いた高さを誇る超高層ビル。

 陸戦型のため一飛びで屋上に辿り着くのが無理だと感じた日下部と和堂は低めの高層ビルに飛び乗る。


『冥界犬が接近中』


 MCASSが齎す情報によって2人は戦慄が走る。


「まさか……」


「おいバカな事言ってんじゃねえ」


 脳裏をよぎるのは陽里の死であった。


 新、篠原に続く3人目の死。


 だが冥界犬は2人に悠長に考えさせる暇を与えなかった。


 ドシンっ


「おわっ!」


「なんだ!?」


 2人が乗るビルが崩れていく。


「このままじゃ落ちるぞ」


「かと言って降りたって冥界犬に殺られるだけだ!」


 人は混乱状態に陥ると前へも後ろにも下がれず立ち止まってしまう。


 ここで1番重要なのは動く事だった。


 黒い大きな影が2人を包む。


 3つ首――否、2つ首の冥界犬が2人の頭上に跳び上がったのだ。


 2人は死を悟って目を瞑る。


「「……」」


 だがいつまで経っても(それ)は訪れない。


 不思議に思って日下部は目を開けると苦しそうに横たわる冥界犬がいた。


 辺りを見渡しても誰もいない。


 改めてよく探してその原因がわかる。


 約200m先、遥か高く伸びた塔の上で1人の少女が煙を出している銃を構えていた。


「君が……」

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