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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
34/249

33.

ブクマ感謝感激です!

今後ともどうかよろしくお願いします。


前回のあらすじ

・おお新よ、しんでしまうとはなにごとだ!

冥界犬ボスがあらわれた!

・雷槍がこわれてしまった!

(へぇ折れるんだ)


 陽里がまず最初に感じたのはそれだった。


 双頭犬(オルトロス)のビルを容易に破壊出来る突進にすら耐えたと雷槍を冥界犬(ケルベロス)は一噛みでいともたやすく噛み砕いて折ったのだ。


 そして陽里の眼前にはそんな頭が2つ、己の頭を食い千切らんと口を大きく開けて迫ってきている。


 普通の人間ならこの状況に絶望するだろう。


 目の前の怪物からしたら阿羅機(アルハード)の装甲ですら豆腐のように柔らかいと感じるだろう。


 それが2つ。


 陽里の頭に齧り付こうと迫る。


(ま、肝心の槍頭が壊れてなければボクでも直せるか)


 結城陽里は普通の人間ではない。


 天才と呼ばれる異常な人間だ。


 その異常性に拍車を掛けるかの様に陽里の顔は笑っていた。


 膝に力を抜く。


 すると陽里に訪れるのは一瞬の浮遊感。


 すぐさまブースターが起動する。


 超加速――直進ではなく後ろへ回転運動へ。


 抜いた膝への力を再び掛ける。

 両足のつま先にまで力を入れる。


 そして蹴る。


 高度0mの超々低空飛行による高速バック宙で陽里は冥界犬の2つ頭を両足で蹴り上げた。


 残りの頭も対応出来ずに吹き飛ぶ。


「生憎ボクの阿羅機は空戦型だ。陸上生物と同じ動きをすると思わない方が身のためだよ」


 10m弱蹴り飛ばされた冥界犬は余裕を持って着地して3頭とも憤怒の顔で陽里を睨む。


「雷刃」


『ブレード展開します』


 白銀色に輝く直刀の刃が青白く輝く。


 雷槍とは違って完全な近接戦闘用の武装(デバイス)


 陽里と冥界犬が同時に距離を詰めに動き出す。


 相対速度はマッハを超え、常人ではお互いの姿を見る事すら不可能だろう。


 カンっと軽い音が暴風と火花と共に響く。


 先とは立ち位置を交換した陽里と冥界犬。


 両者が何かしらのダメージを受けた様子はない。


 陽里の雷刃は冥界犬の爪に当たったが斬れる事はなかった。


(強固な爪だな。まるで盾だ)


 冥界犬の爪は煙を出すだけでこれが陽里の雷刃が爪を焦がしたものなのか、ただ接触による摩擦熱によるものなのかはわからない。


 いずれにせよ陽里は冥界犬の爪を警戒し、また冥界犬は陽里の雷刃を防ぐ手段であると理解する。


「もう1回」


 陽里は雷刃を両手で握って正眼の構えを取る。


 同様に両者が同時に動き出す。


 最大の違いは陽里が踏み込まずにブースターで距離を詰めたところだ。


 無挙動のため次の動作が完全にわからなくなった冥界犬は咄嗟にブレーキを掛けて再び前足で地面を叩き付ける。


 飛び散ったアスファルトの一際大きな破片を陽里はただ雷刃で切り裂く。


 陽里のその予備動作を見た冥界犬の真ん中の頭が再び火炎放射を放つ。


『オートスクエアガード』


 だが陽里には火の粉1つ当たる事はない。


 そして陽里はブレーキを掛けてはいない。


 ついに距離は詰まる。


 この時になって陽里は左足を地に付けて体を急停止させる。


「せいっ」


 残った右足に全ての運動量を与えた回し蹴りが冥界犬の3つある内の右首を打ち付ける。


 冥界犬が錐揉み状に回転しながらビルに突っ込む。


 陽里はすぐさま雷刃のブレードを再展開させ、冥界犬に斬りつけるべく距離を詰める。


『結城陽里。冥界犬の能力がわかったぞ!』


 突如エリザベスからの通信が入る。


『それは――』






『篠原作真一等陸士及び五十嵐新二等陸士の死亡が確認されました』


 そのMCASS(バックアップシステム)から通信が入った時、エリザベスは絶句した。


(昔を思い出すのもここで悔しくしても意味がない)


 双頭犬を討滅し終えたエリザベスは歩き出す。

 地割れなどの地属性とも言える魔法を使った双頭犬によって街は廃墟と化しており生身で歩くには非常に不便であった。


 その通信はエリザベスが巨大地割れを越えた辺りで入った。


『ランクA相当の魔獣(ホレット)を感知しました。結城陽里一等陸士が冥界犬と戦闘を開始した模様』


「ランクAだと!?」


 エリザベスは驚愕する。


 通常ランクAの魔獣ともなれば数は少ないものでその特徴はあまり詳しく調査されていない。

 だがそれでもランクAがその身体に宿すエネルギーはランクCやランクBをも凌駕する事は知られている。


 一般にエネルギー(の密度)が大きいと魔獣などを感知するセンサーに引っ掛かりやすい。

 それもランクCと区別がつかないと言った紛れ方は不自然である。


「気配を消す魔獣……か」


 賢い(wise)――と言うよりずる賢い(clever)魔獣にあるとされる能力。

 エリザベスにも苦い記憶があり陽里にも忠告した恐ろしい能力である。


(おそらく奴がこの一連の流れの元凶だろう)


 エリザベスは瓦礫を乗り越えて周囲に魔獣がいない事を慎重に確認する。

 魔性犬と言えどもエリザベスは生身であるために出会ったら最期になるのは必至である。


「元凶……?」


 ふと心の中で呟いた事を口に出す。


「ランクA……魔法を使えるのは当然……魔性犬だらけ……内側から発生する……」


 エリザベスが思い当たった1つの可能性。


 急いで陽里に通信を入れる。


『結城陽里。冥界犬の能力がわかったぞ! それは召喚だ!!』

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