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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
28/249

27.

「3」


 魔性犬(デヴィドッグ)の背中を斬り裂いた陽里は雷刃を粒子化させて亜空機(イクスペーサー)へと仕舞う。


『残存する魔獣《ホレット》――14体』


「まだ討滅数は11体か」


 陽里とエリザベスが3体ずつ、2人を除く第1小隊の2ペアが2体、第2小隊が3体の計算となる。


「他の隊員はどうなのでしょうか」


 陽里はここから最短距離にいる次の(ターゲット)を探しながらエリザベスに問いかける。


「第3小隊と第4小隊も無事だと言いがな」


 第1小隊と第2小隊は同じ地区の北と南に分かれて戦闘を行っており、残りの2小隊はここよりやや北にある別の地区で戦っている。


 通信1つで安否はわかるが戦闘中での不意の通信は死に直結するため迂闊な連絡は出来ない。


 従ってただ目の前の敵を1体でも早く減らしながら無事である事を祈るしかない。


「北東に3体(たむろ)してますね」


「とっとと行くぞ」


 エリザベスは地面を蹴って加速する。


 陸戦型阿羅機(アルハード)の特徴として地面に強烈な衝撃を与える事で加速させ、ホバークラフトの要領で速度を維持すると言う物がある。


 これの欠点として亜音速まで加速させるとなるとアスファルトが木端微塵になると言う点がある。


 つまりエリザベス――彼女に限らず多くの陸戦阿羅機士(アルハーダー)も、であるが――が通った跡は大体破壊の痕跡がある。


 対して陽里の空戦型阿羅機の加速方法はジェット噴射なので全力並でなければ(・・・・・・・・)街を破壊せずに済む。


「陸戦型の阿羅機も空戦型のようにすればいいものなのにな」


 陽里の移動を見てエリザベスを愚痴る。


「機動性や敏捷性に欠けますよ」


 空戦型の移動システムを陸戦型に適応できないのはカーブが空と陸では異なるためである。


 通常の空戦型は曲がる時は円を描いて曲がらなければならない。


 一方で陸戦型は、特に市街地においては直角に曲がる必要がある。


 そうした軌道の違いのために空戦型の構造を陸戦型に適応出来ないでいた。


「ならば貴様のその機体はなんだと言うのだ!」


 これはあくまで通常の空戦型(・・・・・・)の話である。


「制御性を捨てれば適応出来ますよ」


 陽里の機体――ケラウノスは陽里の技術があってこそ華麗とも言える卓越した動きを可能としており、並の阿羅機士が使ったところで空の彼方へと消えるか地面にめり込むかのどちらかになるだろう。


「通常の阿羅機を使えばもっと恐ろしいものになりそうだがな」


「学生の時は支給された訓練用の陸戦型阿羅機を使ってましたよ」


「一体どうして……」


 訓練用と言えば使いやすさに特化したものの筈である。


 エリザベスはどうして陽里がそこから操作性が極悪のものに移ったか頭を抱えようとするが――


『接敵』


 MCASS(バックアップシステム)の言葉によって雑談モードからすぐさまスイッチが切り替わる。


「雷槍。フレーム展開」


『フレーム展開』


 陽里の片手にすぐさま白銀色の槍が現れ、その槍頭は雷で形作られる。


 そして速度を一切殺さず槍を投げる。


 魔性犬が気付いた時は既に遅かった。


「4,5体目討滅」


 2体とも串刺し団子のように頭を横から貫かれた。


 陽里はまだ速度を殺さずに最後の1体との距離を詰めにかかる。


「よせっ!」


 エリザベスが制止の声を掛けるもあっという間に距離を詰めた陽里は応戦しようとした魔性犬の頭を掌底打ちで怯ませて背中への踵落としで地面に伏せさせる。

 その衝撃は小さなクレーターを作る程だったにも関わらず魔性犬はすぐさま起き上がろうとする。


 だが陽里の動きはそれを上回る。


 貫いた槍を魔性犬の頭から引き抜いて今度は6体目の魔性犬の目に突き刺す――が距離が足りず脳にまで刺す事が出来なかった。


 魔性犬は目を通じて脳に莫大な電流が流れて激しい痙攣を起こす。


「6」


 事実上戦闘不能になった魔性犬は相手にすらならない。


 陽里は今度こそ脳にまで槍を刺した。


「何故そう生き急ぐのだ」


 エリザベスは呆れ果てていた。


「生き急いでるつもりはありません。ボクだけで倒せると思ったので」


 実際に陽里単独で魔性犬3体を同時に相手をしても何の苦もなく為せる。


 エリザベスはそれを理解していてもどうしても言いたい事があった。


「貴様は圧倒的に経験が足りない。あの3体を倒せても直後に気配を隠した魔獣に喰われる可能性だってあるのだぞ」


 陽里としては1体でも多くの魔獣を討滅したいと言う欲求に従った結果なのであるがそれを言葉に出す訳にもいかず。


「……善処します」


 陽里は直後に今の言葉を取り消したい衝動に駆られる事となる。


『南より魔獣が急速接近中』


 突如ビルが爆ぜる。


「ちっ、派手に暴れあがって」


 エリザベスが爆発したところを睨む。


 砂埃が晴れてその姿が明らかとなる。


「曲がり損ねってビルにタックルってか? それとも脅しのつもりか?」


 エリザベスは僅かに武者震いをしてニヤリと笑う。


「結城陽里一等陸士、先の発言、言った側から無下にするなよ」


「……イエスマム」


 通常の魔性犬を2回り大きくした巨大な黒い犬。

 目は赤く犬とは形容し難いまさしく魔獣の顔。

 そしてその象徴――2つの頭。


双頭犬(オルトロス)――ランクBです。ご注意ください』


「手を出すなよ?」


 エリザベスは陽里の前へと進んで自身の阿羅機の武装(デバイス)――血薔(けっしょう)を出現させて臨戦態勢となった。

次回:エリザベスVS双頭犬(前編)

追記

2016/11/30 誤字修正

2017/06/03 小隊→中隊 分隊→小隊へ変更

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