25.
その警報は夜明け前に鳴った。
『警報、警報。A-4区に高出力生命体を確認。担当士官は直ちに編成し迎撃を開始せよ。繰り返す、A-4区沿岸に高出力生命体を確認。担当士官は――』
ヘッドスプリングで起き上がった陽里はすぐさまに新の腕を掴んで床に叩き落としては着替え始める。
「いってえー!!! 何するん!?」
「出撃だ。急いで支度しろ」
寝ぼけ眼の新も状況を理解して着替え始める。
3週間半、敵襲が何度があったにも関わらず出撃出来ないでいた陽里は遂にこの日が来たと意気揚々としていた。
「こんな時間にかよ! ちっとは礼儀を付けて欲しいものだな」
エリザベスはネグリジェを晩酌をしたままのテーブルに脱ぎ捨てて着替えを取る。
そこに連絡が入る。
『エドベル中尉』
「こちらエドベルです」
ハンズフリーで応答する。
『至急1中隊4小隊を組み次第出撃せよ。ランクB相当だと確認された。エドベル中尉、貴殿を本出撃でのみ臨時で中隊長とする』
「イエッサー」
通信を切って舌打ちをする。
「24人でってほぼ全員じゃねえか」
エリザベスはズボンとシャツだけ着替え終わって上だけ羽織って部屋を出た。
「今来た」
「鹿島師団長!」
喜助が司令室に来た時にはその機能に支障は出ない程度に人が集まっていた。
「ご苦労」
喜助が席に座ると早速眼鏡を掛けた女性が報告に来る。
「現在の状態ですがA-4区から北上して特A区へ向かっていると考えられます。密集して移動しているためか総数は不明です。避難指示は既に出しております。現在出撃準備中です」
「わかった。中隊長は誰だ?」
「臨時でではありますがエドベル・エリザベス中尉に任命しました」
「彼女か……」
喜助は溜息をしてしまう。
「何か問題が?」
「いや、彼女が最善だろう」
「そう思って彼女にしたのですが……」
何か致命的なミスをしたのではないか心配そうに言う。
「犠牲が少なくない数で出そうだな」
「……」
防ぎようもない事なので彼女は何も言えない。
「まぁいい。エドベル中隊を先遣部隊とする。続けて特A区との境界に向かわす部隊を編成せよ。移動ヘリの準備をすぐに用意せよ。事は重大だ。しくじる訳にはいかない。気を引き締めろ」
「「了解!」」
「むぅ……」
遠くで警報が鳴っている事に気付いた少女はすぐさま支度をして部屋を出た。
「遅い!! 何をしていた!!」
最後のメンバーが来たところで怒声が響く。
「す、すいません。着替えに――
「理由はどうでもいい。ほれ、とっとと食え」
エリザベスは彼にレーションを投げた。
「貴様らも食べながらでいい。場所はA-4区、敵数は不明。だがランクBはいるだろう」
その言葉を聞いてざわめく。
「うるせぇ黙れ! すぐに4小隊で向かう事となった。第1から第4小隊で向かう。残りの第5小隊は後続の出撃隊と合流しろ。わかったな!」
「「んんんんん!(イエスマム!)」」
「ふっ、何言ってるかわかんねぇぞ。こっちだ」
エリザベスは笑いながらヘリポートへ向かう。
(だがやはり北へと出現場所が移っていってるな)
今回はA-4区――旧横浜市戸塚区と栄区――前回はそこから南、前々回も南。
出現場所がゆっくり北上している事がわかる。
(何か今回は胸がざわめく……。不吉な予感だ)
死線を越えたエリザベスとしてはこの感覚は取るに足るもので冷や汗が出始めた。
(今まで出てくるタイミングが昼だった)
何故今になって夜明けなのかをエリザベスは考えるも答えが出なかった。
そうこうしている内にヘリポートに着く。
ヘリが既に2機待機していた。
「第1第2と第3第4で分かれて乗れ!」
「「イエスマム!」」
各人がヘリに乗り込んでいるところで1人の男が陽里の肩を叩く。
「おまえはあの時の飛び降り野郎じゃないか!」
「えっと、宗田爽司陸曹。お久しぶりです」
ヘリパイロットの爽司が陽里を見つけて声を掛ける。
陽里がA師団に所属して初めての出撃の時に爽司のヘリによって戦地へ移動しいざ着陸する時に陽里は着陸を待たずに上空200mから飛び出したのだ。
「あの時は肝を冷やしたぞこら」
「雑談はそこまでだ!」
エリザベスは爽司と陽里の肩を強く握りしめる。
「「……イエスマム」」
やはり般若の前では爽司も何も言えないようだ。
「全員揃ったな。宗田三等陸曹、出撃してくれ」
「イエスマム!」
ヘリは夜も明けぬ暗く雲が覆われた空へと飛び出し、南西の方角へ向きを変えて羽ばたいていった。
2017/06/03 小隊→中隊 分隊→小隊へ変更




