22.
「なぁ陽里、何してん?」
夜、陽里はパソコンを操作しながら考えている。
「ボクの阿羅機の武装についてちょっと考え中」
「ほぇ~。空戦型阿羅機ケラウノス」
新は風呂上がりの様子でバスタオルを持ちながら陽里の画面を見る。
「オレっちとおんなじ陸士なのになんで空戦型?」
「それエドベル教官にも言われた。拘りはないけど事情があるんだよ」
「どんな?」
「話が長くなり過ぎる」
「ちぇ」
特に不貞腐れた様子もなく不満を表す言葉を吐く。
「まぁ貰い物なんだよ」
「ふーん。でも陸戦でそれって使いにくくないか? 細かい動き出来ないだろ?」
陸戦型と比べて空戦型の最大の欠点、それは機動性にある。
陸戦型は地面を叩き付けるように移動するためにアクセルやブレーキが良く市街地などの入り組んだ地形に対応出来る。
一方の多くの空戦型は何もない空などでの使用が考えられているためブースターなどで制動をかける。従って強力な機動性は得られず市街地で使おうものならビルに突っ込む事が不可避である。
多くの空戦型は、である。
「ボクのケラウノスは空戦型の弱点を補ったやつなんだよ」
ただしケラウノスはその弱点を克服した。
「従来のイオンエンジン型のブースターに電磁圧縮機関が入ってるんだよ」
「でんじあっしゅくきかん?」
新の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「普通のイオンエンジンブースターだとただプラズマイオンは放出してる形だけど、これに電磁的に蓋を閉めて圧力を限界にまで上げてるんだよ。で、必要になった時にその蓋を開ける。すると爆発が起きる」
そう言って陽里は爆発のジェスチャーをする。
「それだとそのままの意味で爆発しちまうんじゃ」
「まぁそこで電磁圧縮の応用。ブースターにかかる負荷を今度は守る」
蓋としての負荷を高める作用から一転、負荷を低める作用に変わるのが特徴である。
「ただ欠点としてはちょっとした損傷でも使えなくなる。と言うかこれでもまだ機動性が陸戦型並かそれ以下だった」
「でも、エリザベス教官との模擬戦では陸戦型並以上だったぞ」
あの時、確かにエリザベスの阿羅機ダーインスレイヴを上回る機動と速さでもって勝利したのだ。
「そこで機体そのものの重さを減らそうと踏んだ訳。結果は紙防御」
「うげ……」
装甲を減らしに減らす事となり気付いたら軽い一撃でも死にかねない程の耐久度となってしまった。
「その結果得られたものは空戦型の持つスピードに加えて陸戦型の機動力。あのブースターはかなり重くて全体の重量としては並なんだけどね」
「恐ろしいもんだな」
新は呆然として感想を漏らす。
「で、武装でそれらの問題を解決しようと試みてる」
現在ケラウノスの武装は――
「まず雷刃。直刀の形をした電撃版レーザーソード。普通にレーザーソードでもいいのかもしれないけどケラウノスの特性にマッチしたのがこれだった。まぁ相手の表面が導体ならかすりでもすれば一撃で仕留められるしいいかな」
「おまえとは絶対に戦いたくないと思った」
「で、次に雷槍。見た感じ普通の槍だけどこれも雷刃と同じで槍頭の部分が刃になってる」
「なんで槍の形なん? 斬るだけならその雷刃でもいいと思うんけど」
すかさず新が疑問に思う。
「これの特徴は槍頭じゃなくてこっち」
陽里は画面上に映る柄の底面を指す。
「小型のブースターかい……」
「そう。これは投槍に使う。威力を引き上げるためにあってビルの1棟は貫けるし衝撃を周りに撒き散らす事もないから雷刃が近接用なら雷槍は中距離用にも使える武器ってところ」
「ほー。じゃあこれはなんだ?」
新は3つ目の項目を指す。
「あぁ、これは雷銃。雷槍は近接用にも使えるけどこっちは完全に中距離用。仕組みは単純、荷電粒子砲の仕組みだよ」
「荷電粒子砲ってあの大きなやつじゃなかったか? 一発あたり1億8000万kWhも消費するデカブツ」
「新、それっていつの時代の話? 確かに阿羅機の武装以外で荷電粒子砲を作るとしたら大きくなるけどそれでも人が辛うじて持てるくらいのサイズになるよ」
「あれ? そうだったか?」
知識が足りないなぁと新を軽く罵って陽里は画面を操作する。
「荷電粒子砲は地磁気や太陽風で照準が定まらないからMCASSなしで撃てないのだけど1番の課題はチャージに時間が掛かるところ」
「阿羅機の出力ならすぐにチャージ出来るんじゃないんか?」
「その阿羅機の出力を雷銃は超えてるんだ」
「うげ……」
その理由は雷銃の射程――飛程に関わる。
荷電粒子砲を大気中で撃った場合、途中までは減衰する事がないがあるところで急激にエネルギーを失い、ついにはゼロとなってしまう。その距離を飛程と言う。
そのエネルギーが高い程飛程は伸びるため一般に射程を伸ばす事と威力を上げる事が同義となっている。
「ま、雷銃の飛程は1kmいかないんだけどね」
「それだけあれば十分じゃないんか?」
「うーん。それ以上のものにすると街を破壊しかねないんだよね」
その威力と射程距離の問題上、ビルなどの大きな障害物に当たると衝撃波を生み出す。
地面に向けて撃てば巨大なクレーターを作り出してしまうのだ。
また、荷電粒子砲で飲み込めるサイズであるならば内側で衝撃波が生じるため、双頭犬サイズならば跡形もなく討滅してしまう。
「だから1kmくらいは何もない方面に撃たないと怒られると思う」
それを誰に、と言わないのが陽里らしい。
「こんな感じで阿羅機の火力を上げてるのだけど――
「防御面が何もないんだな」
新が陽里が言わんとする事を当てる。
「そう言う訳。まぁ3週間暇だしゆっくり考えるよ」
「え!? 今なんて言った!?」
新は驚いて立ち上がる。
「ゆっくり考えるよ」
「違うそこじゃない」
「3週間暇」
「ど、どう言う事だ!」
その反応を見て陽里は気付く。
まだ自分の処罰を新に伝えていないのだと。
「あ、3週間出撃禁止食らったから。おやすみ」
陽里はパソコンを閉じてベッドに入るのだった。
「ちょ、聞いてないぞ!」
「そりゃ言い忘れたからね。明かり消してね」
「羨ましいぞおい!!!」
普通の兵士は新のように戦いから遠ざかって喜ぶものだが陽里は全く喜べないのだった。
雷銃の電力については某アニメの荷電粒子砲を参考にしました。
阿羅機ケラウノスについては今後も説明する場面があるので気にしないで大丈夫です。
追記
12月5日ケラウノスのブースター構造についての設定を変更
12月9日さらに変更しましたが元に戻しました。
空気圧縮→プラズマ放出(電気推進)
設定がいい加減で大変申し訳ありませんでした。




