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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
20/249

19.

「さて、説明してもらおうか、ああん?」


 机を叩いてエリザベスは陽里に怒鳴りつける。


(デジャヴだな)


 目を合わせたら殺されそうな気がした陽里は目を伏して言い訳を探す。


「偶々の休暇中に偶々休暇先で警報が鳴り、偶々屋上にいて、偶々亜空機(イクスペーサー)を持ってきていたので阿羅機(アルハード)を起動し偶々飛べそうだったので飛んで現地へ向かって、偶々魔性犬(デヴィドッグ)3体と双頭犬(オルトロス)1体を討滅しました」


「はぁ……。どこから突っ込んだらいいものやら」


 流石のエリザベスも陽里の下手過ぎる言い訳に怒りを通り越して呆れ返る。


「まずは亜空機の携帯だ。何故持っていた」


 亜空機とは阿羅機を格納するための小型機械である。

 これによって阿羅機を粒子化させて持ち運びを可能とさせる。

 さらに亜空間化させる事で質量を無視出来るため利便性は高い。


 阿羅機士(アルハーダー)の多くは腰に付けている。

 だが街中で銃を持った兵士が彷徨(うろつ)く事と同じく破壊兵器を持ち歩くのは物騒極まりない事である。


「民間の中で特に魔獣(ホレット)の警報がなければMCASS(バックアップシステム)が起動を認証してくれない筈です。仮に阿羅機を起動出来たとして民間人に武器を構えた時点で強制的に武装解除される筈です。これがあるから軍規には亜空機の携帯について書かれていないと愚考します」


 要は陽里達阿羅機士は機械仕掛けの(MCASS)の許しなしに阿羅機は使えないと言う事だ。


「とんだ屁理屈だな」


 エリザベスの陽里を睨む目が厳しくなる。


「……」


 これには黙する陽里。


「まぁいい。マナーや慣習についてとやかく言うのはワタシの柄じゃないしな」


 一旦区切ってエリザベスはコップに入った水を飲む。


「でだ。どうして指令なしで戦闘を行ったか答えろ!!」


 先より強く机が叩き付けられる。


 コップの水もこぼれそうになり、もし飲んでいなかったらこぼれていただろう。


 もしかしたらそれを防ぐために飲んだのではないか、と妙な事を考える陽里だった。


「自分が戦闘を行える状態でそれに対して支障がないと考えたためです」


 実際に陽里は非戦闘区域では被害を全く出していない。


「……そう言えば陸士のくせして空戦型を使ってるんだったな」


「成り行きで」


 陸戦型の阿羅機が亜音速並の移動をする時、地上を走行する事となる。


 だが市街地の場合その路面は通常の利用を目的として作られているために阿羅機の走行に耐え得るだけの耐久性がなく、路面を破壊しながら移動する事となってしまう。

 復旧の面から移動は徒歩などに限られてしまう。


 従って空でも飛ばない(・・・・・・・)限りヘリで戦地へ移動するのが得策であると言う事だ。


 つまり陽里の使う阿羅機ケラウノスは――空戦型阿羅機なのである。


「一体どんな経緯でその阿羅機を使う事になったかは聞かん。だが軍の秩序を乱すような行為を許すつもりはない!」


 そしてまた一口水を飲む。


「尤も、貴様がいなければランクBの双頭犬を討滅するのにさらに犠牲が出た可能性もある」


 それは犠牲がいた事を示唆していた。


「さて、貴様には何が1番辛い処分だろうなぁ」


 既にエリザベスに怒りはないようで、代わりに悪魔のような笑みを浮かべていた。


「……」


「そんなポーカーフェイスをしても無駄だぞ」


 エリザベスは陽里の顔を覗いて考える。


「そうだなぁ。これは罰にはならないが貴様なら罰になるだろうな」


 エリザベスは閃いたかのように悪魔の笑みを全面に出した。


「結城陽里一等陸士」


 有無を言わせないはっきりとした声を上げる。


「イエスマム!」


「貴様は今日から3週間、出撃を禁ずる!」


「……!」


 陽里は絶句する。


「ふん、その顔、見たかったぞ?」


 エリザベスはニヤニヤして腕を構える。


「それは罰にならないのでは? 寧ろ褒美であると考えられます」


 陽里としては出撃できない事態は避けなければならない。


 このA師団に来た理由がなくなってしまう。


 陽里にとってはその期間が3週間だとしても避けたい事だった。


「ならばこうしよう。双頭犬の討滅の褒美だと――


「ではその褒美、辞退させてもらいます」


 陽里はすぐさま褒美を断る。


「言っただろう? 貴様への罰だと。他の連中には褒美だと言うだけだ」


「ぐっ……」


 陽里はその事を指す意味を悟ってしまった。


 つまりこの罰はエリザベス個人としての私刑なのだ。


 陽里は確かに双頭犬を討滅しており通常ならば褒章ものであるが、陽里は出撃の命令なしに出撃してしまった。


 さて、これは命令に違反した訳ではない。出撃するなとは言われていないのだから。


 だがだからと言って司令を出す人間からしたらいい迷惑であり、そのような不穏分子は早々に更正ないし排除するべきである。


 そんな中、指揮官の予想から外れたものが現れた。


 双頭犬――ランクBと言う魔性犬(ランクC)と比べて非常に危険性の高い魔獣が潜んでいた。


 これには司令部も焦ったようで応援をすぐさま出し、万が一に備えて特A師団にも警戒すべきと報告したのだ。


 幸か不幸か結果としてこの対処は無駄と終わった。

 陽里と言う不穏分子(イレギュラー)が討滅してしまったのだ。


 流石の司令部も陽里の活躍を無視する事は出来ず罰する事は難しくなった。

 そこでエリザベスが動く事となったのだ。

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