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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
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18.First contact

 陽里が振り返るとウェーブのかかった月のようなレモンイエローの髪の少女が銃口を向けて睨んでいた。


「手を挙げて武装を解除しなさい」


 彼女は親の仇を見るかのように陽里を睨みつける。


(真っ直ぐで透き通ったアメジストの瞳)


「綺麗だ……」


 陽里が彼女を見てそう思った時には呟いていた。


「は?」


「君の瞳、宝石のアメジストみたいに綺麗だって思った」


 そして彼女の月のように輝くレモンイエローの髪がその瞳を一層際立たせていた。


「な、なんなの!? この状況でナンパとか信じらんない!」


 少女は呆れ怒って思わず持ち上げていたスナイパーライフルを落とす。


「おっと」


 陽里はケラウノスをまだ解除していないのでその加速力をもって一気に詰め寄ってそれをキャッチする。


「こんな重い物をアサルトライフルみたいに持たない方がいいよ」


 陽里は片手で持っているが10kgは超えている代物である。生身の少女が持つには少し重過ぎる物だ。


 彼女は陽里からそれを奪い取るかのように強引に取っては大切そうに抱く。


「……ありがと」


 そして小さく呟く。


 果たして銃を拾ってくれた事に対してか、双頭犬(オルトロス)から助けられた事に対してか。


 その少女は何もそれ以上は言わず立ち去ろうとする。


「ボクを殺すんじゃなかったの?」


 1度目は喉に、2度目は背中を狙ったのだ。


 少なくとも1度目は明確な殺意の元に撃たれたものだった。避けなければ最悪死んでいただろう。


 陽里は少女に問いかけるも――


「別に」


 一蹴されてしまう。


「陽里だ。ボクの名前、結城陽里」


 どうにか引き止めようとした結果が自分の名前を出す事だった。


「ヨーリ?」


「なんか発音がおかしい気もするけど、あってる」


「そう」


 少女は再び立ち去ろうとする。


「君の名前は?」


 陽里は少し慌てて少女に尋ねる。


「ヨーリに言う必要はないわ。さよなら」


 そう言って少女は微笑して今度こそ去った。


「……」


 陽里はその微笑みに思わず固まってしまう。


『報告。第一兵団A師団本部より通信が入っています』


「あ……」


 何かを察したようで陽里はフリーズから立ち直る。


『繋げます』


「待っ――


『結城いいいいぃぃぃぃぃ陽里いいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!』


 いくら阿羅機でも通信による鼓膜へのダメージを防ぐ事は出来ない。


 耳を抑えながら――意味はないが――受け答える。


「結城陽里一等陸士であります」


『貴様ああぁぁ!!! どこにいるー!!!』


 4日前に聞いた怒声より3倍増しの怒りで満ちていた。


 音声は音割れを起こして何を言っているか辛うじて聞ける程度だ。


「偶然近くで――


『そんな事は知っているー!! いいから早く帰投しろ!!』


 まともな理由も言っていないのに勝手に理解されて困惑する陽里であった。


 彼にわかる事は4日前の二の舞かそれ以上の何かが待ち受けていると言った事くらいである。


『わかったな!!!』


「は、はい」


『そうじゃないだろ!!』


「イエスマム!」


 陽里は首を振って腹を括って帰投のためのヘリに向かう。






「行ったわね」


 そこは先程の屋上。


「まさかケースを置いて出てちゃった側から忘れただなんて言えないもの」


 少女は屋上から北へと飛び去るヘリを見て独り言を呟く。


 胸にはスナイパーライフルが抱えられている。


 銃器を抱えて持ち帰ろうものなら不審がられて即取り調べ室行きである。


 少女はケースを開けてスナイパーライフルを解体していく。


 地面やビルの窓ガラスを見れば話は別だが今しがた戦場だったとは思えない静けさが街を支配している。


 つい最近までは大勢が住んでいたここも今では人が住んでいない地区である。


 音を立てるものは野良の動物か風によって飛んだゴミくらいであろう。


「あの時も静かだったな」


 彼女が思い出すのは陽里が放った雷霆――荷電粒子砲であった。


「てかもっと早くから言いなさいよね!」


 陽里が耳を塞げと同時に放ったために彼女は耳を塞ぐ事に間に合わず轟音を直で聞いてしまったのだ。


 彼女は静かだったと言うが爆音で耳が一時的にやられてしまったため、陽里が放った瞬間に鳴った高音域の爆音が聞こえなかったのだ。


 ちなみに彼女が文句を言うのはその直後の雷特有の低音域の爆音だ。


 実際は高音域の後に低音域の爆音が鳴ったと言う事である。


「それにしても……変な人。あたしの目がキレイだなんて」


 レモンイエローの髪にアメジストのような瞳。

 一目で純日本人ではないだろう事がわかる。寧ろその姿形は――


「みんな神和国の人間だろって言うのに」


 ケースに入れ終わった彼女はそれ以上何も言わず両手で持ってその場を後にするのだった。

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