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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
14/249

13.

「で、こうなると」


 痣があちらこちらに残っている新が嘆くが陽里もこれには同情する。


「レディーの買い物に付き合うとはこう言う事を指すぞ」


 エリザベスはしゃがんで商品を物色しながら言う。


「こんなの聞いてませんって!」


 新の両腕には衣服の入った鞄袋が左に2つ右に3つの計5つ。

 さらに彼の両手には箱が4つ抱えられていた。


「言っていないからな」


 そう笑って立ち上がる。


 場所は旧横須賀に位置するショッピングモールの一角、服飾店である。


 薄いピンクのレディーススーツのような服に黒のハイヒール、いつものアップ調の髪型に飾りを付けたシンプルながらなかなかなファッションだった。


 一方の陽里達と言えばベージュのズボンに黒いプリントTシャツと白い羽織であったり、紺のジーンズに黄色のTシャツと言った特に拘りのない服装であった。


 エリザベスが店員に目を合わせて片手を上げて呼ぶ。


「これを買いたいのだが」


「はい、ありがとうございます」


(まだ増えるんか……)

(今度は左腕にかな)


 エリザベスと店員が笑顔であるのに対して新は白目を剥き、陽里は新が持たされるであろう荷物がどこで持つか我関せずとした顔で予想する。


「おい、なんで陽里は持たされないんよ」


「日頃の行いじゃないかな」


 陽里も実はと言うといつ自分に矛先が向くのかヒヤヒヤしているのである。


 だが今の状況で陽里が取れる行動と言えば自分と言う存在をエリザベスに感知されないように気配を薄くして被害現場(この事)に関わらないようにするのが限界だった。


 そうしてしまえば今度は新から恨みを買う訳で――


「エドベル教官!」


「なんだ?」


「陽里も手持ち無沙汰だから持ちたいそうです」


 売られるのだった。


「そうなのか?」


(参ったな)


 陽里の思考が加速する。


 この場でどのような返答がベストか。断る事は出来るか。断れないなら次点で何がベターか。

 それぞれに合わせたシミュレーションを一瞬の合間で行う。


 まず、断る事は可能であると結論が出る。

 おそらく今の状況なら「自分は買いたいものがあるので先に買ってきます」などと言えばその間は許されるだろう。

 ただし新の恨みも買う事になるのだが。

 しかし戻ればその恨み分をぶつけられるのと、先の言葉は後で持つと言う意もあるために一時的な逃れでしかない。


 では断らないで持つ量を減らせる事はできるのかだが、これは無理であろう。

 持つ事を引き受ければ新が調子に乗るだろうからだ。


 ならば諦めてしまおうかとも考えてしまうが新の身を見てそれは嫌だと考える陽里。

 荷物を持つ事自体は苦痛ではないが折角の休日であり満喫したいのが本音である。


 従って陽里が取る手段と言えば――


「すいません、異動したばかりで物が足りなく買いたい物が多くあるため先に自分のを買ってもよろしいでしょうか?」


「なっ!」


 新、絶句。


「そうか、そう言えばそうだったな。許可しよう」


 ちなみに休日であるためエリザベスにそんな権限はない。


「イエスマム!」


 軽く敬礼して陽里はこの場から早足で去る。


(すまんな)


 そう心の片隅で新には謝罪しとく。


「では五十嵐新、左のバランスが悪いな。左腕にこの袋を掛けておこう」


「そんなー!」


 こうして新の両腕には衣服の入った鞄袋が左右に3つずつと両手には箱が4つ抱える事となった。


(陽里ぃぃぃ覚えとけよおぉぉ!!!!)


 鬼の顔がそこにはあった。






 陽里がエリザベスに言った事は詭弁でもなく事実であった。


 特A師団内では必要な衣服と最低限の荷物さえあれば師団内で支給される物が多くあるので生活に困らなかったが、A師団ではそれらが支給されず自ずとどこかで購入の必要が出てしまったのだ。


 思えば特A師団のメンバーも支給品を使う人は少なく――支給品も十分に上質な物であるが――休日に出掛けてはかなり上質な物を買ってきていた気がする、と陽里は思い出す。

 陽里はそう言った拘りがないために今まで生活上必要最低限以下の物しか持っていなかったのだ。


 尤も、それは生活上(・・・)と言う条件が付くのだが。


(取り敢えずタオルは必要だな)


 特A師団では部屋で使うタオルしかなかった。


 これはそもそも訓練で汗をかくと言うものがなかったためである。


 エリザベスの訓練でようやく汗をかくレベルの人間が普通の訓練で汗をかくと言うのはなかなか難しいと言うもので、さらに特A師団と言う第参都市(トーキョー)で最も安全な地での訓練と言うものは相当に温いものであった事も陽里がタオルをあまり必要としない理由に拍車を掛けるのであった。


 しかし過去は過去、今の陽里が所属しているのは戦線になりつつあるA師団である。


 陽里はタオル売り場に着いてタオルを手に取り始める。


(吸水性を取るべきか、持ち運びに適した物がいいのか)


 騒がしい空気とは一変、物静かな空間で陽里は物色をする。


 すぐ隣に有名キャラクターがプリントされたタオルなどデザインが重視された物があるにも拘わらず、陽里は機能のみを見て判断する。

 もしここに新がいたら「そんなつまんないデザインよりこっちにしようぜ」と言って陽里を引っ張りそうなところであるが、新は現在エリザベスの手となっているためあり得ない話である。


「これなんかいいかな」


 陽里が手にしたのは無地の白いタオルであった。

 陽里が値札をひっくり返して値段を見る。


「高いな」


 そう、陽里が踏み入れていたのは高級タオル店であった。

 所謂ギフト用のタオルを売っている店である。


 第一兵団の、それも特A師団にいた陽里は薄給ではないため金銭に支障はない。


 だが陽里はとある方面に対して低くない額で費やしているため、タオル1枚に安いタオル10枚は買えるであろう額を払いたくないのである。


 ケチと言うより致し方ない犠牲だ、とは本人の言葉である。


 陽里がタオルを戻すそんな時、サイレンが鳴った。

茶番もとい平和回が終わるの早いですね(苦笑

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