12.
短めですがご容赦ください。
出撃から4日経った日。
いつものように起床時刻に鳴り響くアラームを聞くや否や新を叩き起こす陽里。
「今日は休みのはずっしょー」
ぐえーっと呻き声が本日第一声の新が文句を言う。
「それでも朝食の時間は変わらない」
今日は貴重な休日である。
「そりゃそうだけどさー。ギリギリの時間でもいいっしょにー」
「誰さ、昨日外を案内してやるって言ったのは」
昨夜、新はA地区にやって来た陽里のために案内すると言い出したのだ。
初めの内は断ろうとする陽里であったがやけに積極的な新に怪しさを覚えるも根負けして行く事となったのだ。
「やっぱなしにごふっ!!」
不届き者には強烈な拳骨を与える。
「行くよ」
「ういっす……」
結局は普段と変わらない時間での朝食となるのであった。
「で、陽里はどこに行きたいんさ」
「タオルとか欲しいね」
「タオル!? こう……服とかそう言う類じゃないんか普通?」
「男同士で服を買いに行きたいの?」
「……そりゃ良かねえな」
一部にしか需要も供給もないものを新は進んで求めたりはしない。
「じゃあ、ガールズウォッチングとかどうよ」
「新、その内お世話になるかもね」
誰にとは言わない陽里である。
「美人さんに捕まるならいいかも」
それに対してどうしようもないのが新である。
「なら訓練で巫山戯てればいいかもね」
「確かに、エリザベス教官にならタコ殴りされてもいいなぁ」
「昨日も鞭打たれてたね」
「いやぁ、時々手を抜くんよ。そうするとすぐさま見抜かれてはドドドドッって走ってきては打ってくれるんよねぇ」
「へぇ」
陽里はお茶を飲んで目を瞑った。
「ほぅ、わざと手を抜いたのか貴様」
「時々叩かれたい衝動に駆られるんよ」
「そうか、なら今すぐにでも一生分叩いてやる!!」
新の首を掴んで持ち上げるエリザベスの顔には青筋が何本も立っていた。
「え、ええええエリザベス教官!!」
「名前で呼ぶ事を許した覚えはない!」
新の鳩尾に膝蹴り。
(痛そうだな)
陽里は何喰わない顔で新の行く末を見守る。
周りも特に気にした様子がなく普段の流れとして扱われてしまっている。
果たしてその原因は新にあるのかエリザベスにあるのか。真相は謎である。
「エド……ベル教……官、いつから……そこに」
腹を抑えて新はエリザベスに訊く。
「ガールズなんたらのところからだ」
尚、陽里は新の後ろでエリザベスが食事をしていた事を初めから知っていた。
敢えてエリザベスの話題を出したのは明らかに確信犯と言えよう。
「あ、あれはほんの冗談と言うか」
「ほぅ、ではわざと手を抜く事について聞こうか」
「そ、それもがふん」
何ともよくわからない言語を吐き散らしながら新は再び鳩尾を膝蹴りされる。
「嘘は良くないと言ってるよな」
エリザベスは笑顔を浮かべる。
嘘を言っている事を前提にしているあたり普段の新の行いが悪いのか、エリザベスの強引さに起因するのか。
「これからは手を抜きません」
「そうか、ならば褒美に一生分殴り飛ばしてやるから外に出るといい」
どうやら自白したところでも刑は執行されるようだ。
連行された新を放って陽里は残りの朝食を食べて外に出た頃でも新はまだ殴られていた。
「ごべんなざい」
何言ってるかよくわからない。
「あん?」
エリザベスはうつ伏せに倒れた新の肩を踏んで威圧を掛ける。
「ずびばぜんでじだ(すみませんでした)」
「それで一生分か?」
「いっじょうぶんでず。ぼんどがんべんじでくだざい(一生分です。ホント勘弁してください)」
「これに懲りたら2度と手を抜くなよ」
「いえずばぶ(イエスマム)」
本当にタコ殴りにされたんだな、と思って同情は一切せず新を見下ろす。
「お、来たな。買い物に行くそうだな。調度手が足りなかったんだ。来い」
手が足りないとはなんだ。せめて人と言ってもらいたい。
陽里は新と同じ扱いはされたくないと切に思うも首を横に振る事は許されないこの状況ではこう言うしかなかった。
「イエスマム!」
「よろしい、では30分後ここで待て」
こうして男2人女1人の仲良し……とは言えない買い物が始まる。




