10.
10話目にして実戦回
なおヒロインはまだ登場しない模様
補足です。
次回の後書きにも書きますが『魔性』と敢えて読んでいます。間違いではないのでご了承ください。(ルビ読みしている人には関係ないのですが……)
無減速での着地による衝撃でアスファルトは抉れてしまっていた。
陽里はそれを気にする素振りも見せず静かに歩いて抜け出す。
「敵数を計測」
『周囲2kmの敵数を計測します。……全6体、表示します』
コンピュータのバックアップを受ける事で物陰に隠れているものも含めて敵の数を計測し、阿羅機の画面に表示される。
「沿岸で確認されたって言っていたけどもう陸に上がってるのか。雷刃……展開」
『ブレード展開します』
全長およそ120cmの直刀が陽里の右手に出現し、MCASSの声が彼の脳内に言葉が響くと同時にそのエッジが光り出す。
高圧大電流が生み出す電撃剣。
陽里は狙いを定めてビルとビルの曲がり角へ歩き出す。
陽里がそこへ辿り着いた瞬間、黒い物体が陽里に襲いかかる。
「1」
だがそれが陽里の機械甲冑を傷付けるどころか触れる事すら叶わなかった。
それが地面に着く頃には2つの物体へと分けられていた。
その直後陽里の背後から再び黒い物体が跳び掛かる。
陽里は振り向いて雷刃を振り上げる。
だが、切り落としたのは爪であった。
黒い物体は後ろに飛び下がって低い姿勢で陽里の様子を伺う。
止まった事でその正体がわかる。
「犬か、普通だな」
『魔性犬――ランクCです』
黒い犬――魔性犬はその本能に従って逃げの姿勢を取る。
「遅い」
陽里が一歩踏み入れたところで魔性犬との距離が詰まりその首を焼き切る。
「2」
大型犬サイズの首なし犬が倒れる。
「次は……そこか」
前方300m先に2体の魔性犬がこちらを睨んでいた。
「雷槍……展開」
右手の雷刃が光の粒子に分解されてそのまま形を変えて槍の形となる。
槍頭の真ん中が抜け落ちた継ぎ目のない白い槍が現れた。
「フレーム展開」
『フレーム展開』
そしてその真ん中が淡い青白色の光を出す。
雷神と同様、高圧大電流のまさしく雷を纏った槍を陽里は300m先からこちらに走る魔性犬に向かって投げる。
「3、4」
槍は2体の内、片方の頭部を貫いてそのまま背中を抉る。
だがそれでも勢いは止まらず魔性犬を貫通して背後のビルにも穴を開ける。
そしてビルの向こうにいた魔性犬の心臓を突き刺した。
「直線上にいる方が悪い」
誰にでもなく陽里は呟くが、誰かがいたらこう言うに違いない。「(魔性犬よ)ご愁傷様」と。
そのような神業をやってのけた陽里は特に思い浸る事もなくこちらに向かってくる魔性犬に対して真っ直ぐに立って待ち構える。
手には何も武器を持っていない。
「がぁぁぁぁっ!!」
口を大きく開いて魔性犬は高速突進で噛み付こうとする。
しかし、残り僅かと言うところで顎に強烈な衝撃が走る。
その一撃で顎の骨が折れたと自覚した瞬間には横腹に再び衝撃が加わる。
跳び掛かっているために衝撃を地面に逃すことも出来ず蹴り飛ばされてビルにぶつかる。
意識を失わなかったのは幸いなのか、再びこの痛みを与えた機械甲冑に爪で屠ろうと思考するも目の前には誰もいなかった。
「5」
噛み付かんとする魔性犬の顎に膝蹴り、回し蹴りで横腹を蹴ってビルまで吹き飛ばした陽里は追撃をするべく亜音速で迫っていた。
そして魔性犬が立て直す瞬間に陽里は跳び上がって魔性犬の頭上から蹴りを落とした。
衝撃は頑丈な皮膚を通り越して魔性犬の脳を破壊したのだった。
「後1体」
陽里は最後の1体を探すが見つからない。
「検出範囲外に出たのか?」
『周囲5kmを検出中……』
2km圏内ならすぐに検出出来るがそれ以上の場合時間がかかるため、普段は使わない広域検出を使う。
『周囲5kmに反応はありません』
「流石に検出ミスはないだろうし」
不可思議な事態に陽里は投げた槍を回収して考える。
「周囲2kmの魔性犬の血液を検索」
『了解しました。……表示します』
そうして映されたのは8ヶ所であった。
最初の2体は真っ二つにしたため表示数が2ヶ所多くなる。
よって7ヶ所は陽里によって討滅された魔性犬の血である。
「討滅されたのか?」
まだエリザベスが引き連れる予定の隊は来ていない。
そうなると爽司の可能性があるが単独行動を止めようとした本人が単独行動とは考えにくい。
8ヶ所目に行くと予想通り最後の魔性犬が死んでいた。
「片目だけ潰れてる」
徐ろに陽里は魔性犬の潰れた目に腕を突っ込んだ。
ぐちょっと音がしてごそごそと腕を動かして引き抜いた。
「……なんだこれ」
血に濡れた金色の物体を陽里は眺める。
『銃弾が該当されました』
「銃弾? これで魔性犬を討滅出来るのか……」
陽里は困惑して銃弾を観察をする。
この時代の戦争で銃弾は使わない。使っても意味がないのだ。
行き過ぎた威力を持つ武器に対して防具はそれに追い付こうと進化した結果、大抵の銃弾は無効化されてしまったためだ。
当然、魔性犬に撃ったところで硬い皮膚に弾かれてしまうだろう。
『急所のために皮膚に弾かれなかったものと考えられます』
「一発で目玉に撃ち込めるのか……」
陽里自身実弾の銃を扱った事がないため可能かどうかわからないが、高い確率で出来ないだろうと予想する。
「ごらああああ! 結城陽里ぃぃぃぃ!!!!!」
振り向けば迷彩柄の阿羅機が猛突進してきていた。
『当たった場合の死亡率は8割です』
冷静にそう分析するMCASSに冷汗を流して陽里は避ける。
どうやら試練はこれからのようである。
語られる事はないのでここに……。
エリザベスは自身と陽里を含めて6人で討滅しようと思っていました。
残りの4人の実力はA師団内で見て上の中ないし下程度。
これだけの戦力なら事故がなければ勝てるだろうとエリザベスは思っていました。
1対1でタイマン張っておそらく勝てるような相手を陽里は5体連続で倒した訳です。
戦力が大量投入出来ない理由はいずれ本編にて。




