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神の居ない世界にて  作者: アウラ
3.There is nothing in his pocket
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96.Was it the first date with him ?

 その後陽里の使うタオルやシャンプーなどの日用品を購入し、2人は1階の広場に並べられた丸テーブルを囲って座っていた。


 時刻は昼過ぎで昼食を食べていない事に気付いた陽里であるがそもそも朝食も怪しいものだった事に彼は気付いていない。


 ルナリアは食べる時間が遅かった事もあって空腹はまだ訪れてないようだった。


「……少ない」


 先の購入した服に着替えている陽里の荷物を睨みながらルナリアは呟く。

 その中には脱いだ軍服にルナリアの服、そのままの意味での生活必需品に翌日の食材のみである。


「どうせ明日は移動だし持つ物は少ない方がいいと思っただけだよ」


 それは本当の事ではあるがそれが全ての理由ではないと言う事はルナリアにもわかっていた。


(やっぱり変人ね)


 ルナリアはもう何度目かも忘れた陽里に対する評価を心内で下した。


「なんか暑いわね」


 季節は秋と言えども数字の上では9月である。


 セミも未だ鳴き止まず寒くなるその日まで粘り続ける事であろう。


 とは言えここはショッピングモールの中であり本来冷房が効いている筈なのだが、吹き抜けの広場とあって日光が差し込み暑くさせているのか広いが故に冷房が効きにくいのか、ルナリアにとって外の暑さより幾分かマシだがやはり暑いと言った意味合いなのだろう。


「あ、ジェラートやってる」


 さっきまで視界に写らなかったが涼しさへの欲求が働いたのかすぐにジェラートの移動販売店を見つけた。


 陽里はその言葉に言葉以上の意味が込められていると感じてルナリアを見ると何やら期待した様子で、さらには自身の膝を軽く叩いて催促しているようだった。


 つまりはそう言う事であってここで陽里が無視しようものならいつどこでどう己に怒りをぶつけられるかわかったものではないと彼は心の中だけで溜息をつく。


 流石にルナリアもこの程度で怒る程の癇癪持ちではないがこうした小さな事が積み重なっていけばそうとは限らない。


 陽里と言えど今朝のような長時間に渡る説教は御免被りたいのだ。


「何か食べたいのある?」


 自身に不都合はないので陽里はルナリアに尋ねる。


「それじゃああたしが何か強請ってるみたいじゃない。それに演技臭いし」


 言い方が悪かったのだろうか、そもそも演技染みていた事もバレている。


 面倒だなと感じながらも陽里は再び同じ事を尋ねる。


「チョコ味」


 今朝アイスココアを飲んでいたがそれとは別物なのだろうか、と陽里は喉まで出かかったがわかったとだけ言って買いに席を外した。


 件のジェラート屋は行列とまで言わないまでも人がそこそこに並んでおり陽里が注文するまで数分を要した。


 その間に彼は自分の分は何を頼もうか考えていた。

 数分も考える事となったのは彼が優柔不断だからではなく偏にジェラートを食べた事がなかったからだ。


 アイスクリームとの違いは彼の知識の中に入っている。


(空気の含有量が違うと味が濃くなるのだろうか)


 その比較対象であるアイスクリームでさえ陽里は学生時代同級生に連れられて食べたのが片手で数える程度であってデータが少ない。


(しかし乳脂肪分が少ないんだったっけ。濃厚さは足し引きゼロだろうか)


 などと陽里は通常の人が選ぶために考えない事を考えていたからこそ数分を要したのだった。


 結局彼が出した結論はアイスクリームとは別の物だと落ち着いたのだった。


「いっらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」


 しかしここで陽里は僅かに唸り声を上げる。


(ルナ、チョコ味が4つあるけど……)


 チョコと冠する名を持つ味が4種類、その中でチョコ色をしたのが2種類あった。

 チョコレート、チップドチョコ、チョコミント、そしてチョコクッキーの4つだ。


(チョコ味と言ったらチョコレートの筈……)


 常識人から見て非常識な陽里の常識に照らし合わせた結果がそれだった。


「チョコレート味とモカ味を」


 しかし陽里は知らない。

 チョコ味と言われて必ずしもチョコレート味を欲するとは限らないのだと。


 陽里は知らない。

 ダブルと言う逃げ道を。


 かくして陽里はルナリアの元へジェラートを渡す。


「ありがと」


 幸いと言うべきかルナリアはジェラート屋で4つの『チョコ味』を扱っていたとは知らず美味しそうにその小さな赤い舌で舐め始める。


「これはコーヒー味なのか?」


 陽里もモカ味のジェラートをぱくりと一口食べるが怪訝そうな顔を浮かべる。


「ヨーリってバカなの? コーヒーみたいなあんな苦いだけの味じゃないに決まってるでしょ」


 どうやら陽里はコーヒー特有の味をこのモカ味ジェラートに求めていたが期待と予想が大きくハズレたようだった。


 ルナリアの言う通りそれはその筈でジェラートはスイーツに分類されるものなのだから当然であるのだが、陽里からすればモカ味どころかジェラートすらその味を知らなかったのだからある意味で必然な結果と言える。


 2人がジェラートを食べ終わったところでどちらともなく帰る流れとなった。


「ねえ」


「何?」


 立ち上がった陽里にルナリアが僅かに挙動不審になる。


「これって……デートって言うんじゃないかしら」


 辺りを見渡せば男女のペアが散見される。


 中には女性同士もいるが多数派は男女のカップルである。


 陽里もそれらを確認すると納得したように頷く。


「デートだ」


 陽里が認めてしまった事でその後ルナリアが羞恥で怒りをぶつけてきたのは言うまでもない。

「あ、これデートだ」って1日2日くらい経ってから気付く事が昔はありましたが、今はそう思う要因すらないと言う……。

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