95.
「ど、どう!?」
半ば開き直りの状態で勢い良くドアを開けて控えめな胸を張って陽里に見せた。
ひだが少なめの黒い膝丈プリーツスカートに今朝から着ている白のブラウス。
それが学校の制服感を引き出しており陽里は自身の知恵だけで考えたコーディネートは失敗だったかと溜息をつく。
しかしその溜息がルナリアにとってのスカートのチョイスが不満なのだと捉えて眉間に皺を寄せたが黙ってドアを閉めて2着目に着替える。
「……どう?」
適当に選んだのがダメだったのかと思い直して今度は少し自信なさげに陽里に見せる。
それはベージュの膝丈フレアスカートだった。
下は膝から上は肋骨の下辺りまでで脚が長く見えるデザインのようだ。
「お似合いですよ」
そこにさっきまで遠くから様子を覗いていた女性店員がいた。
ルナリアの容姿はあまり見かけないものではあるが、客に変わりはないと思ってプロ根性が彼女を前に踏み出させた。
「そ、そう……かしら」
ルナリアが陽里の方を見ると彼は気付くか気付かないかぐらいの驚きを露わにし、すぐさま頷いた。
「こちらに紺色のデニムのブルゾンはどうでしょう」
店員が迷わず見つけてルナリアに渡す。
しぶしぶ着てみて陽里の方をまたもや見る。
「お似合いですよね?」
店員も陽里の方を見て訊く。
10代前半向けの服が多かったがその中で少数派であったそうでない服がルナリアを歳相応に見せて彼女を美しく見せていた。
それは陽里も同感で、そうだねと頷いた。
「じゃ、じゃあこれにする!」
ルナリアは迷いもせず購入を決めたのだった。
「お支払いは――」
「ボクが払うよ」
元はと言え陽里が勝手な提案でこの結果となったのだから良かったにしろ悪かったにしろ自分に責任があると感じて陽里が払った。
「素敵な彼氏さんですね」
「か、かかかかかか彼氏!?」
店員がスカートとブルゾンの入った袋を手渡すと同時に爆弾を投下したのだった。
「いえ、この人とはそのような関係じゃないですよ」
陽里は特段気にした様子もなく店員に誤りを伝える。
「そうだったんですか? あまりにもお似合いでしたので、つい」
笑顔で世辞を言う店員だが奇妙ささえ抜きにしてしまえば、彼女の主観でもルナリアは美少女と分類される容貌で陽里も決して悪い容姿ではない。
「ち、違うからっ!」
顔を真っ赤にしてルナリアは陽里を引っ張っていった。
「ありがとうございました!」
その様子は店員にとっては微笑ましいものであった、と言うのは言うまでもない事だろう。
一方引っ張られていった陽里は店から遠ざかるとルナリアに指を突き付けられる。
「ヨーリ、次はあなたの番よ!」
ルナリアの怒っている様子から何か癇に障るような事をしただろうか、と陽里は考える。
「やっぱり服気に入らなかったの?」
ルナリアの機嫌を損ねる原因としたらそれくらいしかなく陽里は訊く。
「そんな事ない!」
ギュッと袋を抱きしめるルナリアはハッと気付いて陽里に袋を渡す。
「持つ約束よね」
怒ったかと思えば笑って陽里に袋を渡す様子は喜怒の激しいものであったが、陽里は怒っていた理由が服選びのせいではないと知って心なしか安堵していた。
「それであたしがヨーリの服選んであげる」
袋を受け取った陽里は再度ルナリアに引っ張られて男物の服屋に連れて行かれる。
そこは2店並んで同じカジュアルなメンズ服を扱っており、それはショッピングモールの都合で追いやられてここに寄せ集められたのかどちらかが敢えて隣に位置取って競合に持ち込もうとしたのか定かではない。
何にせよ選ぶのに苦労はしないだろう、と言うのが陽里の第一印象だった。
そもそも陽里は服に拘りはしない。
先のルナリアへの服選びも視覚異常を起こすようなルナリアの服装――現在もそれを着ているが――が原因でその解決策の試行と衣服への興味が成した行動なのだ。
まして己が知り得る限り自分の服装を気にしない陽里が今になって、先程の事を通しても興味を持つ事はない。
適当に無作為に選んだジーンズによっぽど酷い組み合わせではないTシャツを選んで何か羽織ればそれで十分だと陽里は考えていた。
しかしルナリアがそうはさせなかった。
「ヨーリって身長どのくらい?」
「この前の測定では176cmだった」
実は喜助を除くヘッジホッグ部隊の男4人の中で1番背が低いのは陽里である。
これは陽里が小さいのではなく偶然他の隊員が背が大きかった事による。
香織と喜助を除けば平均身長180cmである事が何よりもの証左である。
「あたしより20cmも大きい……」
背が高い事が羨ましいのかルナリアはジト目で陽里を見る。
「まぁいいわ。このあたしが選んであげる」
そう言ってあちらこちら店内を巡って間もなく陽里の元へ戻ってきた。
「ん」
押し付けるように渡すルナリアは無言で着ろと言っていた。
陽里はそれらを受け取って試着室へ入る。
結論から言えば当初陽里の考えていたものとあまり変わりはなかった。
黒のチノ・パンツに灰色のジャケットだ。なんとワイシャツはそのままである。
「どうかしら?」
自信ありげな様子で訊くルナリア。
だが思い返して欲しい。ルナリアのセンスは決して良い方ではないのだと。
確かに無難――男物の服とは得てしてそう言うものではあるが――であり問題はない。
だが胸を張る程のものと思い浮かべればモデルが着るレベルとまでは求めないもののやはり何か感じさせるものがあると考えるだろう。
「いいと思うよ」
陽里は事実に変わりはない事を言った。
そして陽里はこのルナリアがコーディネートした服の他に同系統のズボンをもう1つ、ワイシャツとTシャツを買ったのだった。
投稿数は100ですが本編が100話目でもないし記念的なものは特に……って話数飛んでる!?
(投稿時、76話が欠番していたので急遽穴埋めの話を97話目に作る事が決まった瞬間でした)




