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3/6

憑りつかれた卓球少女だった恵ー2

運命の全国中学校卓球大会

そして、全国中学卓球大会の県予選が始まった。

この大会の成績が、強豪校からの推薦を左右する。

ここで全国大会への切符を手にいれれば、卓球選手としての道が開くが、敗退すれば大抵の子は受験勉強に舵を切ることになる。


母は見ていられないほどナーバスになっていた。

私は、ただ静かにラケットを握る。


個人戦、3回戦まで接戦を演出しながら勝ち進んだ。

ついに“魔の準々決勝”へ。


相手は――前回わざと負けた西田さん。

でも西田さんはあの勝利から自信をつけ、連勝を重ね、今や優勝候補。


第1ゲームは探り合いの展開。11対9で私が取る。西田さんはちょっと固くなっていてミスが多い。前回は接戦だったし、西田さんの中では私はまだ強者なのかも知れない。自然な流れで私が取った。


私は第2ゲーム以降の流れを組み立てた。第2,第3ゲームは私が落として第4ゲームで追いつき、最終ゲームは接戦ながら敗退。


第2ゲームは西田さんの土俵に乗った。

台から離れてロングボールの打ち合い。観衆受けする展開。

ギャラリーも増えてきた。

9対11で落とした。


西田さんは強くなっていた。

取りにくいコースに放ったボールが、強烈なドライブで返ってくる。

下位の選手なら支配できる。

でも上級者相手だと、完璧な支配は6割が限界。

支配を組み立てる前に勝敗がついてしまう。


第3ゲームも同じ展開。

7対11で落とした。西田さんはゾーンに入ったみたい。

強打のコース取りが冴えわたってきた。私は何とか返球するのがやっと。

新しいサーブも繰り出してくる。

たぶん、西田さんはこの試合の中でさえ進化している。

まだまだ強くなる選手だ。


休憩タイム。

予想通り「ドライブ戦で付き合うな」という指示。


――これも、私の支配の一部。


試合を組み立てるためには、監督すら支配しなきゃいけない。


第4ゲーム、私はストレスが溜まっていた。西田さんと本気で勝負したい。

前の2ゲーム、3ゲームで西田さんの動きは頭に入った。いろいろな支配パターンが浮かんでくる。


私は前陣速攻に切り替えた。

強打のブロック。意表を突くカットボールの返球。前後への揺さぶり。

ロングドライブも思いっきりスピンをかけて返球した。

1ゲームくらいブレーキを踏まないでプレーしてもいいよね。

11対6で取った。


そして最終ゲーム。

点を取り合う接戦で負ける予定だったが、西田さんのミスが急に増えた。

6対2で私が大きくリードしてしまった。


卓球はナーバスなゲーム。4ゲーム目でちょっとやりすぎたかも。

西田さんから見たら、予想もできないボールが返ってくる前のゲーム展開は相当なプレッシャーだったみたい。


完全に試合の流れは私側・・・


西田さんの監督からタイムが入る。ナイス、監督。

私も西田さんのサーブレシーブを2回ミスしてゲームの流れを変える手伝いをした。


西田さんは息を吹き返してくれた。

強烈なドライブが戻ってきて、私もロングで応戦。

西田さんの得意技を出させながら集まったギャラリーを満足させる接戦を演出する。


8対8まで戻したが、西田さんの返球がだんだん甘くなってきた。

今度は体力の限界らしい。肩で息をしている。3ゲームでゾーンに入って強烈なドライブを打ち続けた反動が来たみたい。

このままでは私が勝ってしまう。いくら何でもこの展開で私も甘いボールを返したら、手加減がばれてしまう。


私は西田さんのボールを渾身の力で強打してネットに引っ掛けた。そしてちょっと蹲って足を押さえた。足がつったことにした。


監督がタイムをとってくれた。ナイス、監督。

足の筋肉を伸ばして冷やす応急処置。

まだ戦えることをアピール。これで西田さんも少し休めたはずだ。


最後は低調な内容になってしまったが、9対11で西田さんが勝った。

西田さんは勝った瞬間、がくっと膝をついたが何とか立ち上がって監督に向かった。

チームメイトが歓声をあげている。

西田さん泣いてる?

まだ準準決勝なのに。でも何だか眩しい・・


私も監督に頭を下げる。

母の姿は、もうどこにもなかった。


ほっとしたような、怖いような、複雑な気持ち。

結果は計画どおりだったが、支配の快感は全くない後味の悪い結末。

吐きそうなくらい。


でも、これで普通の中学生に戻れる。

この時は、普通の中学生って何だ分かってなかったけど。


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