4.高校入学式~お兄ちゃんは応援したい~
―湊Side
「さっきのはビビったよな~…」
「ホント、力抜けた…」
四人の背中を見ながら颯汰とさっきの会話について話していると、
―「藍葉くん、プラカード係だよね。 リボン着けもあるから、武道場に来てって言ってたよ。」
「ありがと。ってことで、行ってくるわ」
新入生を先導するプラカード係と、リボン着けのため、武道場に向かおうとすると、後ろから悔しそうな声で
「くそっ、じゃんけんに勝ってれば… せめて麻琴にリボンを着けるだけでも…」
別の仕事があるにも関わらず、付いてこようとする颯汰だったが、考えを読まれたのか
「颯汰~お前は会場での仕事があるだろ~」
と同じ場所を担当するやつに引っ張られて、相棒は叫びながら会場の中へ入っていった―…
―「10分前になったら式の説明をします。その前に3年生がリボンを着けてくれるので立ってください」
先生の声かけと同時に武道場へ入ると、一番前に並んでいる二人が目に入った。
(おっ!これはこれは…)
「柊斗、麻琴ちゃん」
声をかけると、一人は少し驚いた顔を、もう一人は嫌そうな顔をしている。
「湊さん、どうして…」
「俺3組のプラカード係なんだ~ 颯汰とのじゃんけんに俺が勝ってさ~ あいつ、麻琴ちゃんにリボン着けるって、さっきまで一緒に入ろうとしてたけど、見つかって会場での仕事に戻されたんだ~」
「そうですか…入ってこなくてよかったです…」
兄の行動に呆れたのかため息交じりに言う彼女の横で、弟は何か言いたげな表情で見てくる。
(まさか、こんな面白いことになっているとはね~ 颯汰にも見せたいな~)
「あっ、こっち着け終わったら俺が着けたいからとっといてくれる?」
柊斗に着けようとしていた男子を制止し、麻琴にリボンを着け始めると、まさか着けられるとは思っていなかったようで、驚きながら
「え?女子は女子の先輩が着けてくれるんじゃ…」
と小声で聞いてくる。
「あいつに頼まれたんだよね~(嘘だけど)」
本当は男子は男子が、女子は女子が着けるのだが、弟の反応をみたいがために彼女にリボンを着けてみた。
「なんか、すみません。お兄ちゃんの言うこと聞かなくていいですからね。」
俺の嘘を信じて、申し訳なさそうに言う彼女に向かって、ニコッと笑い
「俺がやりたかったってのもあるから。」と言いながら弟をチラッと見ると、黒いオーラを纏いながら睨んでいた。
(おーこわっ)
普段、表情があまり変わらない弟だが、好きな子(麻琴)が関わると、表情が変わって面白い。
本人は隠しているつもりだけど(笑)
そんな弟がかわいくて、つい揶揄ってしまう。ウザがられているのは分かっているがやめられない。
「よかったね。隣で」
リボンを着けながら小声で話すと
「クラス違うのに、わざわざこんなことして… しかもさっき…」
「ん? かわいい弟にリボンを着けたかっただけだよ」
まだ何か言いたげだった弟を制止して言うと、キャーと周りから小さい悲鳴があがる。
それに対して、すごく嫌そうな顔をする弟をニコニコ見ていると、
―「そろそろ入場します。準備してください。」と声がかかる。
「いや~麻琴ちゃんと“一緒に”入場できるなんて嬉しいな~」
二人を交互に見ながら”一緒に”の部分を強調して言うと、麻琴は恥ずかしそうにしながら「あはは~」と愛想笑い、柊斗は苛つきを隠せていない。
(やっぱ可愛いな~ 早く弟の気持ちが伝わりますように―…)
…
入学式後この話を颯汰にしたら、めちゃくちゃ悔しそうな顔をしていた。




