18話『決意』
「……何でだよ!? 信じてくれるのなら、その返答はありえないだろ!」
俺はクローゼさんに詰め寄った。
「私一個人としては貴方の話を信じます。ただ、私はあくまでクラリス様の配下。主人の意にそぐわないことをするつもりはありません。クラリス様がリェンツェ国王陛下を信じると仰る以上、私もそうするつもりです」
「……国が滅びても?」
「主人の意向に従います」
クローゼさんは迷いなく即答した。これが従者としてのあるべき姿だと言いたげなその態度は、単なる子どもに過ぎない俺には全く理解ができない。
結局、何をしてもあの未来は変えられないのかよ……!?
だが、そんな俺の思いは早とちりだったようだ。
「ただ――主人の身に災いが降りかかることを予期していながら、それを無視することは従者として失格。また、主人の心意にも気づいていながら、それを蔑ろにすることもまた同様……」
そして、クラリスの方を見てクローゼさんは――跪いた。
「クラリス様、どうかご命令ください。この身は貴女の傀儡。どう果てようと後悔はありませんが、降りかかると予見できる火の粉を無視できる程愚かではありません。どうか、リェンツェ国王陛下が後戻りできぬ誤ちを侵す前に、それを止めるご許可を――この我が身にお与えください」
その姿を見て俺はようやく理解した。
クローゼさんはあくまで俺の言葉には従わないということらしい。
これは、従者としての――クラリスに従うメイド、クローゼとしての覚悟の表明。
彼女なりの誓いだった。
クラリスは大きく目を見開く。そして、すぐに驚きを引っ込め王女としての顔を繕った。
「我が願いを叶えたまえ」
「御心のままに……」
メイドと王女の誓い。
いや、そんな簡単な言葉だけでは言い表せない、俺には知らないもっと深い繋がりがあるのだろう。
「……さて、ジーク様。私はリェンツェ国王陛下を止めるために本格的に行動を開始します。無論最善を尽くしますが、最悪のことを想定しなければなりません。貴方の話通りなら、私は黒い剣士――死神に殺されます。その際は、私の代わりに貴方がクラリス様をお守りください」
クローゼさんは自分が死ぬ話はするが、決してクラリスが死ぬ話はしない。
それ以上最悪のことはないという前提。起こしてはならないという決意の表れだろう。
「言われるまでもないよ! その時は力づくでもクラリスを連れていくつもりさ!」
「無論です。たとえ、クラリス様が望まなくても、誘拐してでも連れて行きなさい!」
「ちょっと、貴方達は何を言ってるんですか!」
困惑するクラリスを無視して、俺たちは話を続ける。
「じゃあ、ジーク様はもっと強くならないといけませんね。少なくともノームよりは」
そうだ、今のままじゃいけない。
俺は強くなって、それこそ世界最強にならないといけないんだ。
死神よりも、リェンツェよりも、誰にも負けないくらいに……!
「ああ、父さんを越えてやるよ!」
俺も二人の前で誓いを立てた。




