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男爵令嬢は断罪されたい~不幸を換金していたら冷徹公爵に捕まりました~  作者: ほしよみ


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第7話 頂こう、サンドイッチは二個

働き始めて、すぐに分かったことがある。

この部署は、目が回るほど忙しい。


「エレノアくん、この書類も頼む」

「はい、ただいま」


朝から積み上がった書類の山は、

減るどころか増えていく。

気がつけば、昼食を取る暇もない。


(もう!この忙しさ、絶対、日記に書いてやるんだから!)

心の中で、そっと呟く。


けれど、目の前に積まれた書類の山を見て、

エレノアは小さく拳を握った。


(くそ……!負けないから!)


そして、不思議と不幸を数える余裕すらない

ほどの忙しさに、少しだけ笑えた。


「エレノアくん、もう上がっていいぞ」


帳が近づく頃、グレアムの声が響いた。


「え……でも、まだこんなに」

「今日はここまでだ。続きは明日でいい」


肩を落としながら、エレノアは決意した。


(明日は、一時間早く来てやる。

そして、料理長にお願いしてサンドイッチを

作ってもらって、絶対昼も食べる!)


その日の日記の右端

―――――――――――――――885G


翌日、一時間早く出勤したはずのエレノアだったが、

クロードは既に席について仕事を始めていた。


「……おはようございます」


挨拶にも、顔を上げない。


(社会人として、終わっているのではないかしら?

……まあ、関係ないけれど)


気を取り直し、机の隅に山のような

サンドイッチの包みを置く。


『ご自由にお召し上がりください』

小さなカードを添えて置いてみた。


それから小一時間ほどたって、皆が出勤して来た。


「うわ、サンドイッチだ!」

「誰が用意してくれたんだ?」


グレアムたちが喜ぶ中、

クロードだけは、サンドイッチに手をつけなかった。


(……まあ、いいけれど)


期待していたわけではない、

とエレノアは自分に言い聞かせた。


その日の日記の右端

―――――――――――――――750G


翌朝、サンドイッチの隣に、

もう一つ荷物を置いた。

魔術保温器に淹れたコーヒー。


自分がサンドイッチと一緒にコーヒーを

飲みたかったからだ。

飲み物なしでサンドイッチを食べるのは、

正直キツかった……。


この日も目の回る忙しさだったが、

軽く摘めるサンドイッチと、

ホッと息をつけるコーヒーのおかげで、

迫られるような恐怖感を感じることなく、

一つ一つ書類を終わらせることができた。


その日の日記の右端

―――――――――――――――550G


一ヶ月が経ち、エレノアは仕事にも慣れていた。

ある朝、いつもよりまた少しだけ早く出勤した。

クロードが目をぱちぱちさせて、こっちを見ている。


(ぱちぱちする室長!かわいい。

……あっ、ダメダメ、絆されてるわ)


「ゴホンっ。おはようございます、室長」

「あぁ、早いな」


いつものように、サンドイッチとコーヒーを置く。


「えぇ。午前中に終わらせたい書類がありました

もので」

「室長、コーヒー召し上がられますか?」

「あぁ、頼む」


――さらに一ヶ月が過ぎた頃。


「おはようございます、室長」

「あぁ」

「コーヒーどうされます?」

「頂こう。サンドイッチは、二個」

「はい、かしこまりました」

こんな風に、距離は少しずつ、縮まっていった。


その日の日記の右端

―――――――――――――――1220G


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