↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男爵令嬢は断罪されたい~不幸を換金していたら冷徹公爵に捕まりました~  作者: ほしよみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/18

第6話 新しい朝

新しく買った屋敷の扉を開けると、

温かい灯りが出迎えた。


「エレノアお嬢様、お帰りなさいませ!」


かつての使用人たちが、笑顔で並んでいる。


侍女のマルティナが、真っ先に駆け寄ってきた。


「もう、お嬢様なんて――」

「いいえ、お嬢様はお嬢様です!」


有無を言わさぬ笑顔に、エレノアも思わず笑った。


「ただいま」


その一言が、こんなにも自然に出てくることに、自分でも驚いていた。


それから、日々は静かに、けれど確かに

動き出した。


高等部を卒業したエレノアは、迷わず宮中への

就職を決めた。


男爵令嬢としてではなく、一人の文官として。


「本気ですか、お嬢様」

「ええ。もう、決めたことよ」


マルティナの心配そうな顔に、

エレノアは笑って頷いた。


採用試験は、決して簡単ではなかった。


けれど、幼い頃から叩き込まれた教養と、

独学で積み上げた知識が、しっかりと力になった。


合格通知が届いた日、久しぶりに、

日記帳に嬉しい出来事を書いた気がした。


――

そして、初出勤の朝。

エレノアは、鏡の前に立った。


映るのは、文官として仕立てられた、簡素だが清潔な制服姿。


「……行ってきます」


誰に言うでもなく、小さく呟く。


玄関では、使用人たちが並んで見送ってくれた。


「いってらっしゃいませ、お嬢様!」

「本当に馬車をご用意しなくても良かったのですか?」

「え!初日だから歩いていくわ。

それに、わたし魔力が高い分、何かあっても大丈夫よ!」


「さぁ、行ってきます!」

「はい、お気をつけて!」


温かい声に背中を押されるように、

エレノアは屋敷を出た。


王宮までの道のりは、思ったよりも長く感じら

れた。

けれど、緊張よりも、期待の方が大きかった。


門をくぐり、案内係に導かれるまま、

配属先へと向かう。


文官室の前でノックをする。


「本日付で配属となる、

エレノア・フォン・ベルクです」


案内係の声に、扉の奥から、静かな返事があった。


「――入れ」


低く、感情の読めない声だった。

エレノアは、小さく息を吸い、扉を開けた。


案内係の声に、扉の奥から、静かな返事があった。


「――入れ」


低く、感情の読めない声だった。


エレノアは、小さく息を吸い、扉を開けた。


「失礼いたします。本日より配属になりました

エレノア・フォン・ベルクでございます」


机に向かっていた男が、ちらりと顔を上げた。


黒髪、青灰色の瞳。

噂通りの、冷たい印象の男だった。


「あ、定刻通りだな」


それだけ言うと、すぐに書類へ視線を戻す。


「わたしがここの責任者だ。

詳しい仕事はアレに聞け。以上だ」


「あっ、はい。よろしくお願いいたします」


エレノアは一礼した。


ここの室長はクロード・フォン・グランヴィル。公爵家の嫡男だ。


(クロード様って噂通り、他人に興味ないのね。

それはそれで助かるわ)


そして、エレノアは、室長から指示された

彼の元へと向かう。

彼はここの文官長――グレアム。


「グレアムだ。よろしくな、ベルクくん」


文官長のグレアムは、

人の良さそうな笑みを浮かべて手を差し出した。


「エレノア・フォン・ベルクです。

よろしくお願いいたします」


握手を交わしながら、グレアムはちらりと

室長の執務机の方を見やり、声を潜めた。


「みんな、室長目当てで入ってくるんだけどねぇ」


エレノアが答える前に、ため息交じりに続ける。


「ああも素っ気なくされちゃ、続かないのも

仕方ないが。ベルクくんは、続けてくれよ? 

せっかく仕事を教えても、辞められちゃ意味が

ないからな」


エレノアは、少し戸惑いながらも頷いた。


「わたくしは、その……室長目当てでは

ありませんので」


グレアムが、驚いたようにこちらを見た。


「ははっ!初めはみんなそう言うよ」


そう言って、愉快そうに笑った。


初出勤の日、日記の右端

―――――――――――――――1200G

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。