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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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73/100

「追加起訴」

事件から約一年後 午前10時〜午後7時 

追加起訴の資料が受理されたのは、木曜日の午前だった。

桑田は検察からの連絡を受けた後、早瀬のデスクに来た。「通りました」とだけ言った。

早瀬は顔を上げた。

「追加起訴か」と言った。

「はい」と桑田は答えた。「不正競争防止法違反。二年前の企業情報漏洩、拓海の関与が認められました」

早瀬はペンを置いた。

二年前の事件。被害企業の開発データが流出し、競合他社に渡ったとされた案件。被疑者不明で未解決のまま棚上げされていた。それが今、拓海の罪状に加わった。

「被害企業の反応は」と早瀬は聞いた。

「複雑みたいです」と桑田は言った。「今更という気持ちと、やっぱりそうかという気持ちと。担当者が『二年前に分かっていれば』と言っていたそうです」

「二年前に分かっていれば、な」と早瀬は繰り返した。

縦割りの問題は今も解決されていなかった。別の部署が持つ捜査記録を統合して参照する仕組みは、この一年で少し改善されたが、まだ不十分だった。早瀬は上に何度か提言していた。しかし組織は動きが遅かった。

「拓海の弁護士は」と早瀬は聞いた。

「否認していません」と桑田は答えた。「こちらも認める方向だそうです」

早瀬は窓の外を見た。

冬の空だった。低い雲が広がっていた。

拓海は今、刑務所にいる。懲役四年の服役中だ。そこに追加の罪状が加わる。刑期が延びるかもしれない。あるいは併合されて変わらないかもしれない。それは裁判所が決めることだった。

「桑田」と早瀬は言った。

「はい」

「よくやった。本当に」

桑田はしばらく黙った。照れているのか、別のことを考えているのか、分からなかった。

「一つ聞いていいですか」と桑田が言った。

「なんだ」

「拓海は、二年前の情報漏洩も父親への復讐の一部だったと思いますか。それとも別の動機ですか」

早瀬は答えを持っていなかった。

「分からない」と正直に言った。「動機は拓海本人にしか分からない。聞けば答えるかもしれないし、答えないかもしれない」

「聞きに行きますか」と桑田が聞いた。

早瀬は少し考えた。

「いずれ」と言った。「今すぐではない。しかしいずれ」

桑田は頷いた。デスクに戻った。

早瀬はまた窓の外を見た。

低い雲の下を、高速道路の車が流れていた。止まらなかった。どこへ向かうのかも分からないまま、ただ流れ続けていた。

早瀬もまた、書類に向かった。


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