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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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「民事判決」

事件から約一年後 午後1時〜午後6時 

判決は午後一時に言い渡された。

「原告の請求を一部認容する」という言葉が、法廷に響いた。

加奈子は傍聴席で聞いた。原告席には弁護士だけが座っていた。加奈子は傍聴人として来た。弁護士の勧めだった。「判決の場では原告席より傍聴席の方が、全体が見渡せます」と言われた。

認容された損害賠償額が読み上げられた。

レイジ・村上怜司に対して、二百八十万円。まとめサイト運営者に対して、百二十万円。電凸呼びかけアカウント三名に対して、それぞれ四十万円から八十万円。

合計で五百九十万円だった。

弁護士が事前に「全額は難しい」と言っていた。難しかった。しかし一部は認められた。法律が、真司の死に関係した人間に対して、賠償を命じた。

それが、加奈子には重かった。

法廷を出た。廊下で弁護士と話した。被告側が控訴するかもしれないという話だった。「控訴されても続けますか」と弁護士が聞いた。「続けます」と加奈子は答えた。

夕方、彩の学校に迎えに行った。

校門の前で待っていると、彩が友達と話しながら出てきた。笑っていた。友達と別れ、加奈子を見つけると「お母さん」と言って走ってきた。

「今日どうだった?」と加奈子は聞いた。

「判決、あったんでしょ」と彩が言った。

加奈子は少し驚いた。「知ってたの?」

「今日だって言ってたから」と彩は言った。「どうだった?」

「一部、勝ちました」と加奈子は言った。

彩は少し考えた。「一部って、全部じゃないってこと?」

「そう」

「じゃあ、半分勝ちってこと?」

「そんな感じ」と加奈子は答えた。

彩は「ふうん」と言った。それから「半分でも勝ちは勝ちだよ」と言った。

加奈子は彩の手を握った。

歩き始めた。いつもの帰り道だった。一年前と同じ道だった。しかし一年前と違うのは、加奈子の手を引く人間がいなかった。加奈子が引く手があった。

「パパ、知ってるかな」と彩が言った。

「知ってると思う」と加奈子は答えた。

「どこで知るの?」

「どこかで」と加奈子は言った。「どこかにいるから」

彩は「そっか」と言った。それ以上は聞かなかった。

冬の夕暮れが、二人の後ろから伸びていた。影が長かった。

加奈子は前を向いて歩いた。

止まらなかった。


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