星を取りに行くんだ!
ドンの背中はとても楽でしたが、ゆっくり進むので、なかなか先には進めません。
けれど、ドンはニィやチィよりずっと長く生きています。
トトとカカが二人くらいの年齢だったころのこと、同じようにドンの背中に乗って旅をしたこと——そんなお話をたくさん聞かせてくれたので、旅はますます楽しいものになりました。
やがて太陽は真っ赤に染まり、まるで山のお家に帰るように、ゆっくりと山の向こうへ沈んでいきます。
三人はその美しい夕日を眺めながら立ち止まりました。
「ニィ、お空が真っ赤だね!」
キャッキャとはしゃぐチィに、ニィは微笑んで言いました。
「チィ。こういう時は“美しい”って言うんだよ」
空はやがて、真っ赤から紫へ、そして深まる夜の色へと変わっていきました。
ドンは夕日に照らされながら、きらきらした瞳で夕空を見つめる二人を、優しく見守っています。
太陽がすっかり山のお家へ帰ると、空は深い紺色に染まり、月の光と小さく瞬く星々の世界になりました。
森は暗くなっていきましたが、二人は少しも怖くありません。
だって、お星さまは夜空に輝くものなのですから。
ドンのやさしい背中に揺られながら、二人はどんどん森の奥へ進んでいきます。
すると、カラスの三兄弟——フゥ、クゥ、スゥが「カー」と声をかけてきました。
「あれ? 子猫の兄弟、こんな遅くにどこへ行くの?」
フゥに声をかけられて振り向くと、クゥが心配そうに言いました。
「二人のお母さん、心配していたよ」
「森は暗くなると怖いんだよ」
スゥの言葉に、チィは元気よく答えます。
「星を取りに行くんだよ! それに、ニィとドンが一緒だから怖くなんかないよ!」
三羽のカラスたちは顔を見合わせ、ひそひそ相談を始めました。
(きっと……トトとカカに居場所を教えて、迎えに来させてしまう)
ニィはそう思い、慌てて言いました。
「チィの夢を叶えてあげたいんだ。
お願い……星の住む泉へ行かせて!
それに、今はドンが運んでくれてるから大丈夫だよ!」
ニィの必死の言葉に、三兄弟は背を向けてさらに相談を始めます。
(せっかくここまで来たのに……)
二人が祈るような気持ちで見つめていると、クゥが「カー!」と一際高く鳴きました。
すると、森の奥から——
プラチナ色に輝くペガサスのルゥ が姿を現したのです。
クゥはルゥに言いました。
「二人が星の住む泉へ行きたいらしいんだ。
でも、亀のドンでは時間がかかる。
だから、送ってあげてくれないか?」
するとドンも、深く頷きながら言います。
「あぁ、ちょうど良かった。
オレも二人をお前のところへ届けるつもりだったよ。
二人は大切なサンドイッチを分けてくれたんだ。
どうか、頼むよ……連れて行ってやってくれ」
ドンのまっすぐな願いを聞いて、二人も慌てて頭を下げました。
ペガサスのルゥは、クゥとドンの話に相槌を打ちながら優しく答えます。
「チィとニィの家のトトとカカには世話になっているからな。
本当は願いを叶えてあげたいのだが……」
ルゥは深い溜め息をつきます。
二人が不安そうに顔を見合わせたそのとき、
「——あの泉へ行くには、森の守り神〈シュウ〉の許可が必要なのだよ」
ルゥは静かにそう告げました。




