暇
ポーン。
ポーン。
ポーン。
新しく借りた家の天井を見ながら、この間リゼちゃんと買いに行ったビジョンカートリッジを意味もなく差し替えてみる。
服の見た目が変わる。
当然それ以外のことは何も起こらない。
・・・暇だなぁ。
「ねえ、エイタ。暇だからなんか面白い話してよ。」
「すみません。僕にはできません。」
無機質な声が返ってくる。
この子はこの家のホームクリエイター。
家を借りる時、ホームクリエイターの初期設定をして、
今では名前を呼ぶと色々手伝ってくれる健気な子なのだ。
ちなみに名前は『クリ=エイタ』。
うん。我ながら素晴らしいネーミングセンス。
「エイタ、今日の天気は?」
「晴れですよ。」
「そう。」
「はい。」
・・・。
暇だ。
ミスレトゥ行こうかな?
う~ん。でも昨日も行ったしなぁ。
あんまり行っていっくんにウザがられても嫌だし。
いっくんの家を出てからもう3日。
化粧品も・・・昨日一通り買いそろえたし、服もビジョンカートリッジあるし、
日用品も大丈夫。
・・・そろそろ本格的にこっちでも仕事探し始めた方がいいのかしら。
またしばらく天井を眺めた後、ビジョンカートリッジを入れ替えようとしたその時、
トランスレーターが鳴り、目の前に着信の文字が浮かび上がる。
ラムさんからだ。
「もしもし。」
「もしもし。カエデさんの番号でお間違いないでしょうか?
ドリフター支援センターのラムと申します。」
「はい、カエデです。お久しぶりです、ラムさん。」
「おひさしぶりです。カムニアの生活にはもう慣れましたか?」
「おかげさまで、なんとか。ホームクリエイターも使いこなしてます。」
「それは何よりです。本日お電話差し上げたのは、以前にお話しした日本のドリフターの方と連絡がついたのでそのお知らせです。」
「ああ。」
やばい。普通に忘れてた。
「今日の夕方頃ご都合どうでしょうか?相手方もあってお話したいとおっしゃっておりますが。」
「あ、お願いします。」
暇だったし丁度よかった。いい人だといいな。
「かしこまりました。それでは詳細は後ほどお送りしますので、ジェネラルでご確認ください。
場所は前に来ていただいたドリフター支援センターです。
ではお待ちしておりますね。」
「はーい。また後で。」
通信が切れた。
「ねえ、エイタ。」
「なんでしょうか?」
「夕方お出かけするんだけど、こっちとこっちどっちがいい?」
ポーン。ポーン。
ビジョンカートリッジを差し替えて服をエイタに見せてみた。
「僕にはわかりかねます。が、カエデさんにはどちらもお似合いだと思います。」
「そう?」
「ええ、どちらもすごく素敵ですよ。」
ういやつういやつ。後でご褒美をあげよう。
ホームクリエイターって何好きなのか知らないけど。




