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異形の冒険者  作者: まる
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装備を鑑定する

【奴隷編 装備を鑑定する】


ギルドの依頼の結果については、詳細は語らない。

彼らは喜びや悲しみなど多くの経験をした・・、その一言で十分である。


「ギルドの依頼が一段落した」

「・・長かったような、短かったような」


ウォックとズウェイトのフォローとケアに、全く役に立たたなかったアザゼル。

仕事もあり、部外者でもあるウハーを当てにする事は出来ない。


ほぼほぼセッチ一人で、2人の依頼へのフォローとケアを行ってきたのである。




一段落するとダンジョン検証の二回目に取り掛かる。


「ズウェイトが行った様に、今度はウォックに頼みたい」

「分かりました」


一階の壁に埋もれた宝箱から得られるアイテムを調べるためだ。


「前回に話したが、別のダンジョンで確認をしたい」

「はい」

「続けて、ズウェイトが開けたダンジョンに戻って確認をする」

「どちらがやりましょうか?」


今回で二人には装備が出揃う事になる。


「私も参加しても良いのかしら?」


そこでセッチが割り込んでくる。


「構わないが、欲しい物があるのか?」

「いや、そうじゃなくて。検証なんだから戦闘職以外が開けたらどうなるかも、是非やってみたいのよ!」

「なる程、尤もだ」


試す人数が多ければ多い程、欲しい物が増える程、より正確な結果が導き出せる。


「ではダンジョンへ向かう準備をして、今日の所は早く休む事にしよう」


町へ必需品の買い出しの準備するアザゼルの後姿を見守る。


「うーん、全くブレないわね・・」


やりたい事は無いのか、欲しい物は無いのか、全くの謎。

常に無私の精神で自分たちと接してくる。


「これでも、ご自分の弱さを隠そうとしているのでしょうか?」

「それとも、自分をしっかりと持っている、強さなのでしょうか?」

「先日のアザゼルさんの過去を聞く限りだと、どっちとも言えないわねぇ」


三人は先に玄関を出て行くアザゼルを追い掛ける。






西の町から二番目に近いダンジョンを前に、セッチが皆に呟く。


「今度はどんな装備かしらねぇ」

「分からないな」


実は前回のズウェイトの装備は、未だに『倉庫』に眠っていた。


「ズウェイトちゃんゴメンね。装備の鑑定できなくて」

「大丈夫です」


学者の変なこだわりのせいで、止せば良いのに鑑定を請け負ってしまったのだ。

何となく小さい子に、自分の凄さを見せたいだけの様な気がするが。


「ここだ」


早速ダンジョンの中に入り、アザゼルの道案内で宝箱の埋まる壁の前に来る。


「ちょっと待って」

「ん? どうした?」

「ウォックちゃん、ズウェイトちゃん、何か変な所ないか見てくれる」

「「分かりました」」


3人は盗賊系の能力を持っていないので、素人同然だが事前に見ておけるだけ見ておく。

壁を叩いたり、撫でたり、上から下まで確認して見る。


「やっぱり何にもないと思うんだけど・・」

「そう思います」


一階から、そんなに分かりにくいトラップが設置されているという話は聞いた事が無い。


「むむぅ・・、仕方が無い。アザゼルさん、やっちゃって」

「分かった」


大剣で一撃、破壊された壁から宝箱が現れる。


「そもそもこんな簡単に、ダンジョンの壁って壊れる物かしら?」


セッチの呟きは置いておいて、ウォックが宝箱を開ける。


「剣、ブロードソードです。しかも双剣・・」


獣人族が両効きと言う訳ではない。スピートを生かした装備が好まれはする。


「ダンジョンが必要と判断したのかしら?」

「使えないのか?」

「いいえ、その様な事はありません。私のスピートを生かす武器には違いないので」

「そうか、次に行ってみよう」


アザゼルの前に、セッチ、ウォック、ズウェイトが壁を壊そうとするが出来なかった。


「多少傷は付けられるけど、ただの一振りで壊せるようなものじゃないわよ」


壁の硬さを三人が確認した上で、残り三か所の壁をアザゼルが壊し、宝箱をウォックが開けて行く。


「やはり開けた人物によって、中身が変化する様だな」

「そう見たいね・・」


アザゼルが何度か開けた際には、自分用の装備だったと言っていた。


ダンジョンは人知を超えた部分が多く、その様な仕組みがあると思うしかない。


「くっ・・、今回も私の鑑定では調べる事が出来ないとは」


非常に悔しそうなセッチだが、鑑定能力は高くなく、精々ランクFを鑑定できる程度。

ダンジョン自体、ランクEからしか入れないのだから、当たり前と言えば当たり前。


「宝箱から出たのは?」

「ブロードソードの双剣、腿まであるブーツ、肘までの小手、胸当てです」

「ちゃんと鑑定すれば分かるんでしょうけど、ウォックちゃん用で間違いないかな」

「では一度、地上に戻ろう」


再びアザゼルの露払いで、ダンジョンから脱出する。




マジックバック(『倉庫』)から、セーフティエリアアイテムを取り出す。

セッチに手渡すと、身を翻す彼の服の背中を、三人が笑顔で引っ張る。


「どこへ行くのかな?」

「ダンジョンに・・」

「セッチ様の話を覚えていないのですか?」

「話・・?」

「チャンスは皆にもです」

「むっ!?」


絶対にダンジョンボスを片づけに行く気だったのだろう。


笑顔の三人に気圧されつつ、お説教されつつ、最初のダンジョンへと向かう。




セッチがダンジョンの前で、ハイハイハイと手を上げてにこやかに宣言する。


「今度は私の番で良いわよね」

「頼む」

「「どうぞ、どうぞ」」


妙なやる気を見せる彼女に、ダンジョンに入ってアザゼルが告げる。


「宝箱は復活している」

「アザゼルさんの情報通りと言う訳ね・・」


彼が嘘を吐く人物では無いと分かっていても、正直に信じ切れる物では無かった。


「では、よろしく」

「うむ」


壁をいつものように一撃で破壊し、セッチが宝箱を開ける。


「おっ!? 違うものよ! ・・って、帽子?」


魔女が被る様な帽子であり、爬虫類の目を思わせるアクセサリーが一つ付いていた。


「使えそうか?」

「ゴメン、良く分からないわ」


多分使える物なのだろうが、彼女の鑑定能力では調べきれない。


「そうか、では次に行こう」

「そうね」


次の壁を壊し宝箱を開けて行くと、先の二人とは違うアイテムが出てくる。


「今度は、マント・・いえ、ローブかしら?」

「使えそうか」

「ゴメン分かんない」

「そうか。では次に」


次の宝箱からのアイテムは、セッチを非常に喜ばせた。


「マジックポーチ! これは良い、すごく良い、とっても良い、欲しかったー」

「それは良かった」


アザゼルのマジックバックの大きさの10分の1程で、容量も大きさに合わせて少ない。

しかし普段使いには十分だし、自分の研究の資料をしまうのには最適である。


マジックポーチを抱きしめて、くるくると回っていた。


「次に行っても良いだろうか?」

「そうね、行きましょう」


楽しい思いを邪魔するのはどうかと、遠慮気味に声をかける。


そして最後の宝箱から出てきたアイテムは、非常にヤバい物だった。


「・・それは、眼鏡か? セッチ殿は目が悪いのか?」

「いいえ、視力は良い方よ。でも何で?」


自分に必要な物が出る宝箱から、今の自分には必要のない物が出てきた。


「ちょっと着けてみるわ。特に度が入っている訳じゃあ・・・・えっ!?」

「どうかしたのか?」


眼鏡を着けたり外したりしながら、自分のマジックポーチを見ている。


「ヤバい、コレヤバ過ぎるアイテムだわ」

「そうなのか?」

「鏡、鏡、鏡・・って、汚れた自分が嫌で持って来てなーい!」


そう言うかと思うと、アザゼルの首を絞めて叫び始める。


「帰るわよ、今すぐに、とっとと帰るわよ!」

「・・分かった、分かったから」


ウォックとズウェイトは、あまり見た事のないセッチの姿に驚いて顔を見合わせる。






大急ぎで西の町に戻り、早速アイテムの鑑定のため鏡に向かって悲鳴を上げる。


「キ、キタ―! 超優良アイテムきたー!」

「大丈夫でしょうか?」

「きちんと説明してくれるだろう」


あまりの奇抜な行動に、流石にウォックやズウェイトも心配になっていた。


狂ったように歌い踊り、ドン引きのウォックとズウェイトを連れてお風呂に入って行く。




自分の中で嬉しさを完全に消化できたのか、照れ気味に説明をしてくれる。


「嬉しさのあまり、お見苦しい所を・・」

「余程良い物だったのだろう」

「もう最高!」


正に天にも昇るといった感じで、セッチの周りがキラキラ輝いているようにさえ見える。


今までダンジョンの壁の中の宝箱から出てきたアイテムを、マジックバックから出させる。


「先ずこの眼鏡の説明からするわね」

「うむ」


狂乱の切っ掛けから話してくれるようだ。


「私の鑑定能力が弱いから分からなかったんだけど、この眼鏡をかけるとより詳しいアイテムの情報が得られたの」


あの時、マジックポーチを眼鏡を着けたり外したりして見ていた理由だろう。


「と言う事は、鑑定能力を高めてくれるんですか?」

「その通り」


ウォックの推測が正しい事を教える。


「正しくこの眼鏡の能力を知るには、自分でかけて鏡を見るしかないの」

「そうですね」

「で、急いで帰ってきて鏡を見てみたら、この眼鏡に付与されている能力が、鑑定能力、しかもMaxだったのよ!」


鑑定能力は、この世にあるあらゆるものを調べる事の出来る能力である。

この能力にもランクが存在し、最高がMaxで全て調べられる。


「・・・えっ!? 鑑定能力Maxって・・」

「国宝級に匹敵するのでは!?」


ウォックとズウェイトが驚くのも無理はない。


この世に鑑定能力Maxを持っている人物が何人存在するか。

身に着けるだけで、誰でもその能力が得られるアイテムなど簡単に手に入るだろうか?


眼鏡に使われている材質自体はランクC程度なのだが、付与されている能力の方が半端無い。


「だ・か・ら、内緒ね」


セッチはウインクをするが、バレれば皆の死を意味しているに違いない。


「勿論デメリットもあってね。これ着けて鑑定しても、自身の鑑定能力のレベルアップにはならないのよ」


借り物の力なのだから仕方があるまい。そもそもデメリットと言えるかどうか。


「じゃあ、ドンドン鑑定して行きましょう」


片っぱしからアイテムを調べて行く。


「先ずは私用として出た帽子とローブからね」


両方身につければ、どっからどう見ても魔女に見える装備である。


「帽子は遠見の帽子で、探知系の能力が付与されているわ」

「探知系?」

「周囲にモンスターや罠の有無などが分かる能力よ」

「ふむふむ」


生地の表裏に、びっしりと幾何学模様や魔法言語が刺繍されているローブを手にする。


「ローブは魔除けのローブ、モンスターのあらゆる感覚器官から私を隠してくれる」

「使えるのか」

「勿論使える装備だけど、欲しい物とはちょっと違うかな」

「どう言う事だ?」

「これらは外、特にダンジョンでは必須と言っても良いわ。ただ私自身がインドア派だし、研究にはあまり役に立たないと言う意味ね」


基準として宝箱を開けた人物がダンジョンで過ごすのに、必要なアイテムと言う事らしい。

もう1つ共通点として、付与されている能力を除くと、素材はほぼCランクという事。


「じゃあ、次ね。どっちの装備から鑑定する?」

「では、私のからお願いできますか?」


最初に宝箱を開けた、ズウェイトが名乗りを上げる。


「了解了解。じゃあ一丁、拝見・・・しま・・しょうか・・ね」

「どうかされましたか?」


パチパチと目をしぱたかせ、上を向いては目頭をマッサージする。


「あー・・落ち着いて聞いてちょうだいね」

「・・はい」


余程、酷いアイテムだったのだろうか?


「えーっと、全てのアイテムは同じモンスターから得られたものよ」

「短弓とはいえ、これを削り出せる牙って、かなりの大きさだと思いますが?」

「その通りよ。何だと思う?」

「えーっと、ダンジョンの一階はランクEですから・・」


ランクEのモンスターで、それほどの大きさのモンスターは記憶にない。


「答えは、シーサーペントです」

「・・はい? ・・シー、サーペント? ラ、ランクSオーバーの?」

「おしい。そっちはシ―ドラゴンね。海蛇がモンスター化したのがシーサーペント。強さとしてはランクC何だけど、海と言う戦い難さが1ランクUPのBね」


協会の方がランクBと言えば、Bには変わりがない。


「それで短弓の方なんだけど・・」

「何かあるのですか?」

「そう何があるのか、いえ無い方に問題が・・、いらないと言うべきか」

「??」


セッチの言いたい事がさっぱり分からず、首を傾げる。


「どう言う事でしょうか?」

「矢がいらないのよ」

「・・・えっ!?」

「弦を引いて放つだけで、水の矢が放たれるわ」

「アクアバレット?」


水の精霊による魔法の一つを上げる。


「こっちの魔法じゃ、ウォーターアローだけどね」


弓のメリットは遠距離からの攻撃であり、デメリットは矢と言う消耗品のコストだ。

矢が不要であるならば、この短弓はメリットの塊である。


「流石に短弓とはいえ、牙から削り出したのじゃなくて合成弓ね。防具の方は、シーサーペントの革や鱗を加工して作られた物よ」

「ひぇー!?」


ズウェイトは声を裏返した上、ガクブルの状態である。




今度はウォックの装備の方をチラッと見やる。


「最後にウォックちゃんの番」

「お、お願いします」


自分のは普通で、ノーマルでお願いと心で願う。

しかし眼鏡をかけて彼女の装備を見て、天を仰ぐセッチに儚い希望だった事を悟る。


「よーっく聞いてね」

「とっても嫌な予感がしますので、拒否でお願い・・」


ウォック耳を塞ぐ両手を、セッチが全力で外しながら説明を始める。


「剣を除くアイテムは、素材は同じデーモンウルフの革ね」

「デーモンウルフって、あのランクCの?」


人間をひと飲み出来る大きさの、角持つ狼がモンスター化した物だ。

ランクEからと考えられている、ダンジョンの一階から出るアイテムでは無いが、それ程珍しくない事に一安心する。


「それでね胸当て何だけど、ナインヒュドラの心臓を使った付与があるの」

「・・・はぁ!? ナインヒュドラって、ランクAの?」


わざわざランクCの素材に、ランクAの素材を付与に使うのか意味が分からない。


「ヒュドラは首一つに、能力があったと思いましたが?」

「そうね。火、水、土、風、氷、雷の属性と、毒、麻痺、混乱の状態異常の九つ」

「心臓を使った付与と言うと・・、もしかして?」

「うん、それら九つの抵抗値向上ね」


それを聞いただけで、ウォックが倒れそうになり、ズウェイトが支える。


「ブーツの方だけど、加速と跳躍強化の付与が付いているわ。また小手が凄いのよ? 両利きの付与が付いているの」

「両利き・・?」


ふと未鑑定のブロードソードの双剣に目をやる。


「もしかして双剣のために?」

「うーん、違うと思う。獣人族だから両手を攻撃にと言うコンセプトで小手が先。双剣は二つ揃ってだけど、剣速と斬撃力の強化が付与されているわ」

「・・・」

「そうそう。その剣に使われている金属はCランクの物なのよねぇ、やっぱり」


笑顔で語るセッチに、ウォックはズウェイトを巻き込んで倒れそうになる。


「良かったわね、ウォックちゃん向けの装備で。珍しさで言えばズウェイトちゃん、売値ならウォックちゃんの装備ね」


お互いの肩を抱き合いながら、慰め合う二人を見ながら不謹慎な事を考える。


この子たちの装備を売れば一生遊んで暮らせるんじゃねぇ?と。

勿論自分のアイテムは売らないけどと付け加えておく。





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