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異形の冒険者  作者: まる
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装備を整える

【奴隷編 装備を整える】


旅立った今更ではあるが、セッチは一応確認の意味も含めてアザゼルに聞いてみる。


「一つ聞いておきたいんだけど?」

「何か?」

「彼女たちに合う装備が出る保証はあるの?」

「ない」


ダンジョンのアイテムは、人に合せたアイテムが得られる訳ではない。

故に、ダンジョン産のアイテムを求める依頼が成立する。


「じゃあ、どうしてダンジョンに?」


分かり切った事をするために、ダンジョンへ向かうほど馬鹿なのだろうか?


「実は、マジックバックの中に、100を超える小手、ブーツ、大剣がある」

「へぇー」

「殆どがダンジョンから、必ずこれらの物が得られる宝箱が存在するエリアがある」

「・・そのダンジョンだけの特性じゃなく?」


宝箱は真っ先に探索される以上、その様な特性があればすぐに分かってしまう。


「行く先々のダンジョンで試した結果が、100と言う数なのだが」

「・・それは不思議ね」


不思議? そんな言葉では言い表せない、絶対にあり得ない事だ。

そもそも何故、宝箱が残されているのか?


「もしかしたら宝箱を開けた人物に、必要なアイテムが出るのではないかと考えた」

「宝箱は隠されているの?」

「多分、そうだと思う」

「なる程・・」


アザゼルだけに見つけられる中身が同じ宝箱・・。非常に興味を魅かれる。


「面白い、確かに変で面白いわ。やって見ましょう」


宝箱の方で、その様な判別をしているか分からないが、試す価値はあるだろう。






西の町に一番近いダンジョンに到着すると、ダンジョンの傍の村で念入りに準備をする。


「問題のエリアって、何処にあるのかしら?」


その様な摩訶不思議なエリアともなれば、かなり深くまで行く必要があるだろう。

学者である自分が研究のためとはいえ、足手まといになるつもりも無い。


「行けばすぐに分かる」

「・・そう」


ウォックとズウェイトの話では、アザゼルの戦闘能力が高いとの事だ。

自分も守れると考えているのかもしれない。


「じゃあ、出発しましょう」


此処まできたら一蓮托生。万が一の時は・・


「もし私に何かあったら、あいつの事恨んで死んでやるから」

「大丈夫だと思います・・けど」

「私たちの不利になる事はされないと・・思います」


セッチの呟きに、苦笑いで2人が答えるが、アザゼルを全て理解できている訳ではない。


「秘密なのは分かるけど、せめて階数ぐらい教えて欲しいわ・・、ん?」


ダンジョンの中をドンドン進み、返事と同時に、どかーんと大剣で壁を破壊する。


「「ええぇぇぇぇっ!?」」

「いきなり何やってんのよ!」


こっちの嫌味が聞こえてイラついたからって、壁に八つ当たりした事を文句を言おうとしたその時・・


「「「ええぇっ!?」」」


アザゼルが破壊した壁の中を見て驚く。


「壁の中に・・宝箱? しかも1階? 隠し部屋じゃなくて?」


セッチは混乱する。隠し部屋やトラップであれば、盗賊職が見抜けるだろう。

素人目では分からないが、その様な仕掛けは無く、本当に埋まっていたように見える。


「どっちか開けてくれ。今まで罠は無かった」


ウォックとズウェイトが顔を見合わせて、エルフが頷いて宝箱を開ける。


「弓・・です」


宝箱の中には、短弓が納められていた。


「ふむ。やはり宝箱を開けた人物に合わせたアイテムが出る様だ」


一人満足げに頷いている。


「木製では無い様です。金属なら私は・・」


エルフ族は精霊との親和性が高く、精霊魔法という術を使う事が出来る。

精霊は金属を嫌う特質があり、金属なら特別な素材である必要がある。


ダンジョンの1階はランクEが必要。ドロップするのもランクEに近い金属・・


「ちょ、ちょっと待って。それ金属じゃないわ」

「えっ!?」


流石に学者だけあって、セッチは鑑定能力を持っていた。

ズウェイトが短弓を、彼女と一緒にまじまじと見てみる。


「骨・・、でしょうか?」

「いいえ牙みたい」


短弓とはいえ、骨や牙から作りだせると言う事は、かなりの大きさの素材だ。

間違っても、一階から出ないと言う先入観も手伝って、素材の確認を失念していた。


「使えるなら良かった。次に行こう」


唖然としている3人に声をかけると、露払いをしながら先を進む。


「鎧が出ました・・」


二つ目の宝箱が眠る壁をアザゼルが壊し、再びズウェイトが開けたのだ。

材質は鱗を組み合わせているようで、肩、胸、腹、腰当までを覆う鎧である。


アザゼルに導かれて三か所目の壁を破壊し、宝箱を露出させる。


「小手・・ですね」


指抜きの手の甲から肘までの、鎧と同じ材質の小手である。




そして遂に四つ目の宝箱、壁の中にある最後の宝箱のある壁の前に並ぶ4人。


「どうぞ、やっちゃって下さい」


セッチもここまで来ると、自分の理解を越えたのか話し方が変である。


「うむ」


どごーんと一発、壁をぶち壊し、ズウェイトが宝箱を開ける。


「・・ブーツです」


材質は鎧や小手と同じようで、つま先から膝までを覆うタイプのブーツである。


「では、一旦退却しよう」

「・・そうね」

「「そうですね・・」」


一階なので、そのまま出口へ向かうだけでOKである。

こんな簡単に高級な装備が一階で出る、しかも壁の中から・・


「「「はぁ・・」」」


ダンジョンに入って、四つの装備を回収して戻ってのに、殆ど時間が立っていない。


「少し待っていてくれ」

「待つって、何処へ行くのよ?」

「ダンジョンボスを倒すと、あの宝箱もリセットされる。他の人でも同じか試したい」

「・・ボスを倒してくると?」

「その通りだ」


正しい事を言っているのだが、何か、何処か間違っている。ただ説明が出来ない。


「ちょ、ちょっと待ってよ。うら若き女性三人を残して行くつもり?」

「む・・、そうだな」


セッチと、ウォックと、ズウィットの身に何かあっては元も子もない。


人気のない所へ3人を連れだって、マジックバックから食料などを取り出す。

最後にセーフティエリアアイテムを、セッチに手渡す。


「「「なっ!?」」」


三人が驚く。使い方、使う時・・、守るなので正しいのだが、やはり何か間違っている。


「では、行ってくる」


そのままダンジョンに向かって行くアザゼルを見送り、アイテムを使う。


「何か人とズレていると言うか、馬鹿と言うか・・変!」


セッチの一言に、ウォックとズウィットも、しっかりと頷く。


「食糧とか大量に置いて行きましたけど、大丈夫でしょうか?」

「2日3日ぐらい飲食しなくても、何とかなるでしょう・・馬鹿だから」


いやいやいやそれはないないと、2人は激しく首を横に振る。






今回のアザゼルは、一味も二味も違っていた。


前の世界で自分がしたことの罪の重さ、この世界での罪の償い。

ダンジョンに潜る事も、人の必要を満たすため、罪の償いの一つだったかもしれない。


しかし三人の女性のためにも、ダンジョンボスを倒さなければならない。

セーフティエリアアイテムは100%安全とは言え、急いで戻るにこした事はない。

そして皆との共同生活には、ドロップ品は必ず役に立つ。


何と言う高揚感、誰かのためにと言う思い、久しく忘れていた感情。



最速での移動、最短でのモンスターの撃破、一つ残らず拾い集めるドロップ品。

普段の何十倍の速度で、ダンジョンの最深部へ到達しボスをアイテムと化す。


地上へのゲートが開くと、飛び込んでいく。


セッチとウォックとズウェイトの驚いた顔に、何故か喜びを感じてしまう。






真っ白な空間・・。この世界の管理者が住まいし場所。


アザゼルを横取りした女性管理者が、椅子に座り、左手で頬づえをついて、自分の世界を見るための、幾つかのモニターの内の一つをじっと見ている。


「一つよろしいでしょうか? 力天使テュナミス


いつの間にか、女性管理者の傍に女性が現れる。


「なぁーに?」


画面から目を逸らし、背伸びをしながら、相手・・部下の天使に目をやる。


「何故、元天使アザゼルはこれ程の力、ダンジョンボスを一撃で葬れるのですか?」

「うーん・・、どうしてだと思う?」


嬉しそうに・・、まるで質問してきた生徒に、自分で考えさせるように導く。


「幾ら人間の器のステータスが高いとはいえ、あれだけの力は出ないはず・・。貴女の特訓があったとはいえ、ダンジョンボスを幾らなんでも一撃とは・・」

「他には?」

「あと考えられるのが、封印の不完全さと思ったのですが、天使とは言え残された力では、現在の戦闘力の説明が付きません」

「ふむふむ、なる程」


自分なりに考えて答えを出すが、正解には程遠いと考えているのだろう。


「実は今回の一件は、かなりのイレギュラーなのよ」

「・・えっ?」

「他の管理者だけじゃなくて、上層部の管理者も注目しているわ」

「えぇえぇぇぇぇ!?」


自分がおかしいと思った事は、管理者全員が興味を持っている事実に驚く。


「今回のケースは、裏技? 隠し技?・・、どちらかと言えばバグに近いかしら?」

「バグ・・、ですか?」


世界の管理上のシステムに、何らかの問題があったと言う事か?


「『神罰執行』・・って、何だか知っている?」

「えーっと、それは試されているのですか? それとも馬鹿に?」

「単なる確認よ」


全天使が魂に刻まれている程の事を、何ゆえ質問されるのかと思ってしまう。


「『神罰執行』とは、世界の管理者の命により、天使が代行して世界の何かに罰を与える事です」

「じゃあ、何故それが成し得れるか考えた事は?」

「・・・えっ!? どう言う事ですか?」

「相手だって逃げるし、抵抗もするでしょう。ギフトやタラント、アビリティ、スキルによって天使に等しい力を持つ者もいるでしょう」

「それは・・、そうですが・・」

「ならば何故、100%絶対に、完璧に全うされるのかしら?」

「えっ・・と、それは」


考えた事は無い、当たり前のことだと思っていたから


「今回のイレギュラーで、その何故が分かったのよ」

「どうしてなんですか!」


ふと湧きあがった疑問の答えが知りたくて、自分の上司に喰い付く。

そんな部下に苦笑いしながらも、答えを教える。


「『神罰執行』が、100パーセントの達成率を誇る理由・・。それは世界が世界管理者たる創造主に従うから」

「・・・当然では?」


えっ、何今さらそんな事言ってんのっ?て顔になる部下。


「えー、とっても大事なことなのに。世界は創造主に従う、その部下たる天使にも従う。従うと言う事は、敵対、即ち傷つける事さえもあり得ない」

「当然です」

「つまり元天使も天使。世界は物質、分子、原子、素粒子に至るまで元天使にも従う」

「・・・えっ!?」

「天使に敵対する事は、自らの行動が意思に反して止まる。一切の攻撃、防御、回避といった行動、魔法や科学とそれに伴う副次的作用などの、全ての動作が、その世界の物質に由来する限り絶対に不可能。ただ本人が得た意思にして魂のみが、この理から逃れる事ができる」


何も出来ずに滅びるだけの本人にとっては、絶望の感じるだけの時間でしかない。


「なっ・・!?」

「そして天使の一撃は、この世界からの強制退場を意味する。故に一撃必殺と化す。相手にとっては自殺と言えるかもしれないわね。この世界に居る事を自ら否定するんだから」


バグ・・、確かにバグだ。使い方を間違えれば・・


「まあ元天使であるためか、それとも封印の影響か、時折攻撃が当たったり、避けられたり、逃げられたり、防がれたりもするわ」

「なる程・・」

「これから先、『神罰執行』が使えると気付き、意識して使うようになれば、更に状況は変化すると考えられるわ」

「そ、それは、あまりにも危険なのでは?」

「だからこうやって、私自ら監視を行っている訳よ」

「そうでしたか・・」


世界の管理者自らが監視する理由は当然であろう。


ふと部下である天使は、気付いてはいけない、見てはいけない物を見てしまう。


「・・も、もしかして、そちらの画面は・・?」

「ん? あら見つかっちゃった?」


操作して、画面を部下に見える様にする。


剣や槍、斧、杖、弓、鎧、盾、兜、マント、ローブ・・色々な装備が描かれている。


「想像通りよ。彼を滅する、もしくはあの世界に封印するための物ね」

「やはり・・」

「あの世界の物質である限りは、元天使に触れる事さえ叶わない。世界の理を越えた、正に神器や聖具と呼ばれる物が必要となる。もしくは・・」

「・・えっ!? もしくは?」


神器と呼ばれる者以外に、天使を傷つける事が可能なのだろうか?


「それ相応のギフトを持った、他の世界からの召喚者ね」

「なっ!?」


再び異世界から、神たる天使と同等の力を持つ存在の召喚・・。

間違いなく世界管理者の直接介入スレスレの状況である。


「こ、この事を・・、教えていただいても・・?」

「勿論、かまわ・・・・、どうかしら?」


即答しようとするが、ふと視線を逡巡する。


「まあ良いわ。貴女の胸の内に仕舞っておきなさい」

「か、畏まりました」


そう言うと、天使は女性管理者の前から姿を消す。


「まだまだ、貴方は力を使いこなせていないわ。自分で目覚めさせるのか・・、それとも再び私の前に現れる?」


楽しそうに女性管理者は、画面を指で弾く。






アザゼルがそこそこの時間で戻ってきたとはいえ、もうすぐ日が暮れようとしていた。


「ダンジョンボスを倒したのは良いけど、もう遅いわねぇ」


どうするのと言う質問が、セッチの顔にはありありと浮かんでいた。


「ダンジョンボスが復活するのが、最短で一日、長くて一週間だ」

「ふむふむ」

「明日まで待って、復活していなければ一旦町へ戻ろう。一つ忘れていた事もある」

「そう、分かったわ。今日の所はこのまま休むとして、このセーフティエリアは何時まで保持されるのかしら?」

「確か・・、全員が出るまでと言う話だ。試した事は無いが」

「そうでしょうね・・」


2日前後でダンジョンを踏破する人間に、こんなアイテムを使用する意味が無い。


ただしセーフティエリアの性質上、出る事は可能なのだが入る事は出来ない。


アザゼルは未婚の女性3人と同衾するつもりもなかったので、入れなくても構わなかったし、普通に外で休むつもりでいた。




翌日、セーフティエリアを3人が出ると、アザゼルの言葉通りアイテムは壊れてしまう。


村の情報から、ダンジョンボスが復活していない事を確認する。

念のためと、一行はダンジョンの中へ入り、宝箱が無い事も調べておく。


最初のダンジョンでのすべき事を全て済ませると、4人は西の町へと戻る事にする。





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