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お姫様と魔物少年  作者: あしあと
3章 
24/29

引き止め方は正攻法で

明けましておめでとうございます~

相変わらずのんびり更新ですが今年もよろしくお願いいたします。

「……えーと? つまりはあれだ? ファイとおたくらは知り合いだったと?」

「そーだよーぉ」


 レクターさんの問いに、ニモさんに潰された状態の、ファイと言うらしい赤い鳥さんが動かせる翼を上げて応える。

 ――コウが先程投げつけてた物は現状から見てニモさんだったらしいよ。

 相変わらずいつここに来たのかわからないけど、来てすぐ物として投げられるとか……相手に物投げつけるなんて意外性を見せたコウにも驚いたけど、それでいいのニモさん。


「ファイを連れてきてくれてありがとう、そこの御方。貴方のお陰で探し回らずに済んだよ。何か迷惑はかけなかっただろうか?」

「あーいや、俺も面白かったし迷惑とか全然。喋るのには驚かされたけど。これってどのくらいかけて仕込めばここまでになるんだい?」

「仕込む? ……そうだねえ。十年もあれば出来るのではないかな? 学ぶ当人の興味の度合い(頑張り)次第によるだろうけれど」

「十年か。長いけどまあ……今度いい鳥見つけたら仕込んでみるかなあ」

「ああ、でも十年と言うのはあくまでも単語程度の話であって、この様に会話が成り立つかの保障はしかねるよ? ファイ(これ)はこれでも60年以上は生きているからね」

「はぁ60っ!? 俺より長く生きててこんなん? ……いやでも鳥だし、会話が成り立つだけすげーのか」


 納得するレクターさんを余所に、「馬鹿で良かった」やら「馬鹿だからこうなったんだ」ってひそひそ声が傍らで聞こえてくる。

 うーんと、ファイさんは鳥に見えるけど鳥じゃなくて、コウやローディスさん達と同じドラゴン、でいいのかな? だとするとコウは7歳でああだし、その60歳は……言われてもしょうがないのか。


 その後レクターさんは「鳥より木の方が知的に話せるんだな」と呟いたハーレイ団長の言葉に食い付き、ジィギさんの所に行くと嬉々として退室していった。

 ハーレイ団長も案内で一緒に部屋を出たので、残ったのは内情を知る者のみ。


 それからのコウ一家(?)の振る舞いは人側の誰も口を挟めなくなるほどに凄くなった。

 ファイさんとノアさんが周囲の物に興味を抱いては荒らして回り、コウが嗜めつつ説明したり直したりして回り、ローディスさんはにこにこと微笑んでそれを見守り……あれ、一番幼いだろうコウが一番まともなことをしてる様に思うのは気のせいじゃないよね?



 ***


 とにもかくにもファイさんと無事合流出来たのでコウのお祖父様たちはあと帰るだけ。

 そして、やっぱり私の想像通りコウはお祖父様たちと一緒に帰ることになってしまった。

 ただお祖父様たちもこの機会に(人の地)を見学してみたいと言い、出立は明後日へと延びたけど。……それでも思ってたよりはずっと、短い。


「どうしよう、明後日なんてあっという間だよー」

「そうですね……もう会えなくなるんでしょうか」


 お父様の私室を出た私はアデイルと二人、人気のない花壇の片隅――コウのお気に入り場所のひとつだ――で黄昏ていた。

 コウはお別れの挨拶がてらノアさんたちの案内、というか監視でそっちに付ききりになるのでここにいない。夜に時間がとれるかどうかもあやしそうな気がしてくる。

 一緒に居たくて名残惜しいと思うのは私たちだけ、なのかなあ。


「やあ、ここにいたんだ。ちょっとお話いいかい? お二人さん」

「ローディスさん」


 声のした方へ振り向けば、ローディスさんがゆったりとした足取りで歩いて来る所だった。

 アデイル並みの若い見た目なのに、丈の長いローブ姿でそんな歩みをされると年上の貫禄みたいなものが感じられる不思議。

 ファイさんが60歳で既にお爺さんと呼べそうな年齢なのに、お祖父様だと言っていたこの人はおいくつになるんだろう。


「話とは…?」

「予定より早くコウを連れ出してしまうお詫びを、ね。君たちは随分と好いてくれているみたいだったから。

 急な話になってすまなかったが、一旦コウは返しておくれ」

「……――いったん?」


 何を言われても結局コウが帰る事実は変わらないと話半分で聞いていたけど、ふと最後の不思議な言い回しが気にかかった。


「そう、一旦。私達は朔の日とその前後は島で過ごす決め事があるけれど、それ以外の日は各々自由だ。だからその後は君たちの行動次第だよ」

「――それって!」

「??」


 アデイルにはローディスさんの言葉の意味がわかったようですごくくいついていたけど、私ってまわりくどい言い方はちょっと苦手なんだよね……。


「お嬢さんにはこんな言い方じゃ解りにくかったかな? これからもコウと仲良くしても構わないよ、って言えば通じるかい?」


 ローディスさんはそうわかりやすく言い直してくれると、私を目線を合わせるように屈んで頭を優しく撫でてきた。

 それはつまり、一旦コウは帰るけどまた会えるチャンスがあると。一緒に居てもいいと、いうこと……?

 でもコウは人と居ることに抵抗があるような――あったような感じなのに、そのお祖父様であるこの人はかなり弛いというかおおらか? だよね。この反応の違いはなんでなんだろう。一緒に居てもいいよって言ってもらえたのはすごく嬉しいんだけど、なんでなのかもすごく気になる。


「ローディス殿はあの……人と過ごすのは反対ではないんですか? あの昔話みたいな共存は可能だと?」


 アデイルも同じことを思っていたようで不思議そうに問いかける。


「昔話? が何を指すのかはわからないが私は反対ではないよ。付き合う相手が余程の者でなければ個人の自由で良いと思っている。住処に招き入れるのでもなければ後は自己責任だろう」

「自己責任、ですか……あと、それともうひとつ気になっていたことがあるんですが」

「なんだい? 答えられることなら答えてあげるよ」

「ええっと……あの、7歳って子供、なんですか? それとも一人前……」


 アデイルの質問になるほどと思う。動物と人は年の取り方が違うって言うし、魔物だってそういうこともあるのかな。

 コウはすごくしっかりしてるから年下でも年下っぽく感じないし、実はもう大人って言われても……でもアデイルみたいにお兄さんって感じには思えないからどうなんだろう。

 ファイさんは60過ぎであんな風らしいから、余計にわからなくなったかも。


「ああ、コウはまあすごくしっかりした子に見えるだろうが、あの子はまだ歴とした子供だよ。7歳でああも地に足が着いているようなのは私達の中でも稀というか……育ちの違いかなあ。

 さっきの件で多少は察してもらえるだろうが、コウはファイに幼い頃から何かと振り回されてきててねえ。でも今に至るきっかけはそうだね――初めて外に行った3つの時だろうなあ。保護者であるはずのあのお馬鹿が方向音痴で島に戻れなくなる事態に陥ったことがあって。その時に自分がしっかりしなければと悟ってしまった様なんだよねえ」

「3つで悟り、ですか……」

「全く、元々大人しかったコウを子供らしく作戦だと言うから許可を出してあげたのにとんだ裏目に出たものだよ。本当、あれには困ったものだ」


 ローディスさんは心底やれやれといった感じでため息をつく。

 そっかぁ、コウは小さい時は大人しい子だったんだなあ。それでもってしっかりしてて。

 3つの時の私というと……姉様もお母様もいなくなって寂しがってた頃かなあ。


「でもそれでなんですね。もうしっかりしているから一人行動をさせられると」

「あー、その事については……私たちは島の中、そして同族に対する力加減しか知らないから環境を壊しかねなくてねえ。それで長いこと表に出ずにいるうちにすっかり出不精になってしまったきらいがあって。

 あのお馬鹿(ファイ)はそんな中で例外だけれど、ああやってはぐれていたからコウの一人行動は初めてであってないようなもので。しばらく我慢させていたしコウも引き際は心得ているだろうから多少なら、とね。

 ……けれどそれがまさか数日で戻ってくるどころか人と関わりを持ってしまうとは思わなかったよ。ここ最近は平穏だったものだからうっかりしていたが、やはり外出は侮れないなあ」


 それまで穏やかな雰囲気で語っていたローディスさんが、私でもわかるどこか含みをもった物言いへと変わった。

 優しそうなローディスさんだけど、なんだかんだやっぱり人を良く思ってなかったりするのかな。やっぱり関わるのは無しとか言われちゃうんじゃ。


「ああっ、悪く言ったように聞こえたならすまない。勘違いしないでくれ? 少なくとも私は君達とコウが出会った今を歓迎しているよ。おかげで少しコウが子供らしくなっていたから」


 そんな思いが表に出ていたのか、私を見たローディスさんは慌てて謝罪をしてきた。

 でもその後に意外な言葉を言わなかった?


「……あれで、子供らしい……ですか?」


 アデイルもそう思ったらしくてまた代弁してくれた。

 あれで子供らしいって、じゃあ私はどうなんだっていうのよねえ。うーん、馬鹿? 自分で言えちゃうけどもちょっと嫌かも。


「いやぁ、あの子は本っ当に昔から大人しくて聞き分けが良くて人を立ててその後を付いて回るような、周りを煩わせるようなことなんてまずしなくてねえ。甘えてくることもなかったし、ファイ関連でないと感情の起伏も少なかったし、接し方がちょっと悩ましい子だったんだよ。年の近い君と居て肩の力が抜けたのかなあ、雰囲気が柔らかくなっていたんだよ? これは念願の、コウに我が儘やおねだりをされたり甘やかせる日が来るのも遠くないかもねえ」


 そう言って微笑むローディスさんは本当にコウを愛でたいって感じの顔をしていた。世で言うお祖父様が孫に甘いってこういうことなのかな。愛されてるんだなあコウ。


「そんなわけでひとつ、コウを変えてくれたお礼に君達に良いことを教えてあげよう」



 ***


 コウが部屋に戻ったという話を聞き、ローディスさんの言葉を思い返しながらコウの部屋へと向かう。

 お祖父様からの良い話、それはコウの接し方とも呼べる内容だった。


「コウはね、嫌なことは嫌とはっきり言うんだ。だからお願いでも頼み事でも、もしそう言わなかった場合はファイみたいに振り回してもなんだかんだ付き合いはいいから、多少強引でもいいんだよ。手始めにこれからのことをお願いしてみたらいい。あ、即答で悪い返事にはならないだろうことは保証するよ」


 これからのこと。

 それはまたここに来てもらえるように、今の関係を続けていけるようにすることだ。

 元から引き止めたい気持ちはあったし、ローディスさんもああ言ってくれていたけど――でもいざ言おうと思うとなんだかどきどきしてきて普段より部屋に向かう足取りは重い。きっぱり断られることは無いらしいけど……。


「あ、来たねミリー」


 部屋の前で深呼吸。ノックをし、意を決して思い切り開けた扉の奥には、ソファーに座って本を読んでいたらしいコウが顔をあげてこちらを見ていた。

 ……なんか初めて出迎えられたというか、歓迎されたような気がする。名前を呼ばれるようになったから? でも口振り的に私のことを待ってたっぽいよね?

 今までなかったことに呆気にとられていると、動かない私を不思議がりつつ「入らないの、座れば?」とまで促される。

 そうして大人しく従った私をまた不思議がっていたが、コウはあのねと先に口を開き、思いがけなかった話をし始めた。


「――え、また来る、の?」

「うん。これ、作るのすごいお金掛かるんだってね? アドアさんが言ってて」


 そう言ってコウが持ち出してきたのは先日作った身分証カードだった。

 お金は、かかるよ?

 国経由のだと一般のと違って頻繁に更新する必要はないし、他者からの信頼度も得られやすい分、より高額。一般人にはとてもじゃないが払えない額だって聞いたような気がする。……けど、


「国って、そこに住む人達のお金で成り立ってるんだよね、たしか。それを余所者の俺がただでお世話になるってのはおかしいじゃない。そしたら働いて返せばいいよって王様が言ってくれてさ。頼まれてた件も解決してないし、だからまた来ることに決めたから。またしばらくお邪魔するね」

「……」


 ……まさかの引き止め手段だったわ、お父様。

 でもそれを至極当たり前のように受けるコウもどうかと思うの。


 どこまで真面目君なの。

 本当、魔物らしさって何。


 一緒に過ごせる確約が出来たから嬉しいことは嬉しいけど、でもちょっと素直に喜びきれないのはなんでだろう――。



ニモさんは物防高め設定。

元が非生物だから感覚が鈍いともいう。


コウの歓迎姿勢はちゃんとノックをしたからです。


次話は王様視点か小話かその両方かな~

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