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お姫様と魔物少年  作者: あしあと
1章 出会い
11/29

補足?小話集

どうでもいいような、いくないような、思いついたノリで出来た短い話を5話程ですが、どうぞー。

♭散歩をする魔物たち


「この地図って本当、凄いよね。色が付いてるだけでも驚きなのにすごく細かいところまで描いてあるみたいだし……なんか、行ったことなくてもこれさえあればなんかどこにも行けちゃいそうだなあ」


 そう言ってコウは楽しそうに地図を捲る。

 城から殆ど出たことの無い私としては羨ましいことこの上ない話だ。


「コウは今までどこに行ったことがあるの?」

「んー、どこの森かなあ? 地名がわからないからここだってはっきりしたことは言えないけどまあ、基本、どこかの森」

「ええ、そうなの? 森だけ?」

「うん」


 空を飛べるのだから何処にでも行けれるはずなのに、森しか行ったことが無いという答えには驚いた。


 でもそれには理由があって、森なら食べ物が豊富だからいがみ合いも少なくて隠れられる場所もあって、という安全面を考えてのことなんだとか。

 もう少し自信がついてから他の場所へ冒険しに行く予定らしい。


 コウは今でも充分強いような気がするけど、今回が初めての一人散歩だったらしく、まずはのんびり落ち着ける場所に行こうと出逢ったあの森を選んだそうだ。


 しかし初めて、ねえ。

 そのわりに堂々としてて、とてもそうは見えないんだけど……。


「そういえばここはどの辺り? 地図変わったからわからなくなっちゃって」

「えーっと……あれ、どこだろう? シルヴァニア国内のどこかではあるはずだけど……」

「じゃあ、シルヴァニアを探せばいいのかな?」


 ここに印を描いたのは幼い頃のこと。しかもお父様に聞きながらだったので私もここが何処かわからないことに気がついた。

 とりあえず国名をあげたのを頼りに、コウはペラペラと探し始める。


 そんななか、ふ、と辺りが陰って思わず上を見上げると、私たちをパクリといけそうなほどの大迫力で見下ろすカーラさんがいた。


『さっきから見てるそれは何なの?? 面白いの?』

「これは地図って言って、今大体何処に居るのか、他の場所もどんな感じなのかとかが載ってるすごい本なんだよ。人が作った、すごーく便利なものなんだ」


 そう語るコウは我がことのように誇らしげで、なんだか子供っぽくて微笑ましい。


『へ~、そんなものがあるのねえ』

「そういえば、カーラさんって(ここ)のひと? こういう森でそんな明るい毛色ってまず見ないからちょっと気になってたんだけど」

『まあ、目立ちすぎるものね。ここでの狩りに適さない色合いだというのは近づく前に逃げられるからよおく実感したわ。私の生まれは氷の大陸よ』

「へー、氷の? 行ったことないけど遠目には知ってる。それならその色も納得だね。でもじゃあカーラさんはここまで歩いて旅をしてきたんだ?」

『そうよ。あそこで一生を終えるのが本来の在り方なんでしょうけど、他にも世界が在るのを知ってしまったからね。いつかはと思ってて、坊やを身籠ったのをきっかけに動くことに決めたの』

「そうだったんだ。これで見ると簡単に見えるけど結構な距離来たよね」

『そぉねぇ。まあでも、楽しかったわよ』

「うん、お散歩楽しいよね。カーラさんでお散歩仲間二人目だ」

『あらそうなの。一番じゃないのは残念だけど光栄だわ』


 世界全体が載った最初のページを開くと、コウは白い色の地からシルヴァニアまでを指でなぞった。

 それがカーラさんの歩んだ道なのかと思ってよく見てみれば、なんと二つの国を跨いでいて、カーラさんは逞しい経歴の持ち主らしい。


 それにしても、話から察するに笑いあっているだろう二人に混じりたくてしょうがない。

 魔物との会話もそうだけど、私も気軽に散歩が出来る身分だったらなあとも思わずにはいられない。


「そういえばコウのお家はどこになの? この近く?」

「近くじゃあないね。空飛んで半日ぐらいかな? でも場所はちょっと……ああ、思い出した。確かリリシエールって言うところのどこかの島だったはず」

「……ごめん、この質問はまだ早かったね」

「ん?」


 そういえばコウはまだ地図初心者だった。

 前はどんな地図を見ていたのか知らないけど、色付きのに感激してるくらいだ、世界名(・・・)であるリリシエールを地名と認識してもおかしくないかもしれない。


 彼にとってのリリシエールが海名扱いになっていて、これのせいで逆に迷子になりかけたという話を聞くのは、また先の話となる──。


 余談。


「そういえばこのPってなに? 隣に数字とあるこれ」

「そのページに行くとこの辺りが載ってるよってことだよ。隅っこに数字がふってあって、この数字のところに行くと──」

「ほおお、なるほど~!」


 人としての立ち居振舞いには違和感が全くないのに常識(当たり前)が抜けてるところにはなんだか不思議な思いをしつつ、私でも教えれることがあるというのはちょっと嬉しいなと思えた。




♭シュレイアの性別


 集落の伝書鳩というポジションであるシュレイアだが、気を許した者以外には手紙を請け負うどころか攻撃を仕掛けるほど気難しい性格をしていた。

 元が偵察鳥(スパイバード)という種族名が付けられるほど警戒心の非常に高い種故か、数年共に過ごしても受け入れたのはごく一部、女性陣くらいのもの。とは言うものの、攻撃されずに済んでいるだけで触れるのはまた別の話だ。


 それがどうだろう?

 会って間もない魔物の少年とはもう打ち解けた様子で肩に乗ったり腕に留まったり、さらには相手に積極的に付いて回るなどあり得なかった光景が目の前にある。

 ああやって振る舞ってもらえたら、シュレイアは里の癒しになるんだが……。


「シュレイアって名前、綺麗な響きしてるよね。格好いい」

『へへー、ありがとな!』

「ふふ、そう言って貰えると嬉しいわね~。この子の名前は私が頑張って考えたのよ。成鳥したらすらっとして凛々しくなるって聞いていたから貴婦人をイメージして付けたんだけれど、もうぴったりじゃない? 他者を寄せ付けない、って感じがもう特にっ!」


 名前の賛辞には誇らしげに語るも、対する少年は「貴婦人……?」と困ったように言葉を濁した。


「あら、どうしたの?」

「ええと……ひょっとして雌だと思って名前付けたのかなって思って」

「えっ違ったのっ?」

『!?』


 告げられた事実には皆が驚いた。シュレイアも驚いているのか、その動きを止めている。

 首輪のような赤い輪の他に尾羽とか翼等の先端がほんのりと色付いてて華やかな姿には皆メスだと思っていたが、どうやら違ったらしい。ここにきて始めて知った真実。


「じゃあ、ひょっとして城に居る方が雌だったのかしら……」


 ぽつりと呟いた王妃様の言葉に城に居た方の容姿を思い浮かべる。それは記憶が正しければ確か、首元の赤い輪の他は黒一色の全く飾り気のない姿だった。

 まあ、どちらも暗がりに溶け込んでしまえるほど全体的に地味という点では一緒なのだが。


「あら、悪いことしたわね。シュレイア相当ショック受けてるんじゃない?」

「まあ、親に性別間違えられてたわけだし、ね……」

「……ええと、じゃあ名前変えてあげた方がいいのかしら?」

「うーん、そこはもうこのままがいいんじゃないかなあ。シュレイ、とかって呼び方を略したりして工夫すれば。馴染んだ名前を今から別のにってわりとストレスになると思うし」

「そう……じゃあそれでいい? ごめんなさいと、改めてよろしくね? シュレイ」


 シュレイア改めシュレイは、王妃様に応えるようにキュイッと一鳴きして返すとその頭上を旋回していた。


 そして相手がオスだったが故に知る事実。


「シュレイって城に居るククイットと違って近くを通る男の人にすごく攻撃的じゃない? 威嚇してばっかり。なんでそういうことするのかな? 縄張りとか、そういうの?」

「えーと?」

「キキュイッ!」

「野郎が寄ってきて喜べるかー、だって」

「……そーなんだ」


 下の姫様の疑問は動物に癒しを求めたかった男たちにトドメをさした。




♭亡骸の行方


 亡骸の処理はとても困る事項であった。

 土に埋めるにしても隠れて棲む事情から土地を広げられず、そうなると掘り返す場所も限られてくる。

 今回は数が数で、短期間でやるにはまた色々と難しい。

 それに労力を傾けると日々の生活や辺りの警戒も疎かになってしまうが、だからと言って放置していたら臭いで他の生き物を招きかねない為やらざるを得ない。


 それにあたる人員をどうするか、そう数人で話し合っていると少年姿に全くの違和感の無い魔物の少年がこちらにやって来た。


「それっていつもどうしてますか? 食料にしたり、皮を剥いだりとか、生活に役立てられそうですか?」


 その言葉に俺たちは顔を見合わせる。

 今のところ、物は足りている。いや、それを目的として狩ったわけではないからすぐに思い付かないというのが正直なところか。


「もし用途が無いんであれば、そのままにしておけばいいですよ。スライムたちが自然(魔力と土)に還してくれますから」

「えっ?!」


 伝えたかったことはそれだけですから、と少年は姫様たちのいる方へとすぐに立ち去っていった。

 詳細を聞くべきだったのだろうが、あまりな内容に動くことができずタイミングを逃してしまって……しかし、スライムが死体処理を?

 多少少年のことは信頼出来ると見なしているので、その少年が会話が出来るという、スライムの有り様を疑うわけではない……だが、それでもまだ恐怖が拭えない相手である。

 その予想外の生態をまた、素直に受け入れられるわけもなく。


 詳しい話を問えぬうちに慌ただしく少年たちは飛び立ってしまい、そして迎えた翌朝──。

 なんと、大小様々あった亡骸は綺麗サッパリと消えていた。

 血の痕も何も無く、昨日の出来事をまるで夢の様に思わせる。

 昨日の今日でやってくれたというのか? それもたった一晩で……?


 気になって眠れなくて窺ってたらしいやつの話では、暗くてスライムの姿を確認することは出来なかったが、一つ一つ消えていく様は見えたんだと(おのの)いていた。


 スライムはやっぱり、理解しがたい存在である……。




♭スライムネットワーク


 世界中に蔓延るスライムたち。

 彼らは分裂して個体数を増やす元は一つの生き物であった。

 個の感情はあれど他の者も自分自身である。

 故に遠く離れた場所のスライムとの会話は容易い。


(浄化追いつかないので助っ人おねがいしまーす)←緑辺りのスライム

(りょーかーい)

(お腹いっぱいだからぼく無理)←ヘドロ系

(それどころじゃあああ喰われ……)←緑以上、黄色未満

(わーリンクきってえー)

(いやーまっくらー)


 と、このように内容は大抵土地の状態や修復状況、自身の近況といったやり取りが主な内容だ。

 だが、ここ数年は一人の魔物の子のことも話題に上るようになっていた。


(わー、あの子がいたー!)

(ほんと! どこーっ?)

(近いならぼくも見に行こうかなー)

(おはなし、いーなー)

(おーさまにもおしらせねー)

(もちろーん)


 かの子供はスライムたちの頂点に位置する王様のお気に入りであった。

 だからという訳じゃないが、スライムたちもその少年を気に入っている。


 何故ならスライム(自分たち)を気にかけ心通わす存在は稀なのだ。言葉を発する器官を持たない自分たちは相手とコミュニケーションする術もない。道端の小石、害も益もない風景の一部、そんな風に見られていた自分たち。


 そして何よりその子供は自分たちの判別もできているらしい。


 それがまた嬉しくて、スライムたちは少年が自身の持ち場近くを散歩しに来ないかと心待ちにしている。

 ただ……あまり押し掛けると浄化作業が捗らないばかりか王様の機嫌も損ねるので、ほどほどに。


 王様と呼ばれるその存在は、その少年とは幼い頃に一度邂逅したきりだった。


 各地を巡るうちに月日が流れ、再会すること無く今日まで至ってしまい、今では忘れられているかもしれないことを恐れて近付けないでいる。

 近況は知りたいからと、ついでにその護衛──実際は話し相手程度で守るとか無理!(黄色種以外の談)──がてら自分達を向かわせるものの、でも必要以上にくっつくのは駄目、と注文は多かった。

 会いに行けばいいのに、というスライムたちの総意は却下されている。


(王様ー、あの子ひとのすみかに行くってよー)

(……!!)


 現在その少年と共にいて黄色さんと呼ばれているスライムは、現状を王様に伝えた。


 返ってきたものは言葉にすらならない、数多の感情の奔流。

 ひとつだけくみ取れたとすれば、付いていけということぐらい。


 少年に"黄色"と呼ばれるスライムは、スライム種の中では上位に位置する。

 一番の下っ端である緑に次いで襲われにくく、戦うことも出来れば浄化作業も速いと勝手がいい存在なのだ。


 そうして、以降しばらくの護衛兼近況報告はその黄色が担うことになった。

 空に飛び立つ際、少年の足元にこっそりと、でも落ちないようにと必死にしがみついてついていく。ま、少年は聡いのですぐにばれて逆に気遣われて飛ばれたわけだが……。


 その一方で、夜の人の集落にて。


 王様と呼ばれる、目視することも難しく輪郭までもが朧気な巨大なスライムは草木も揺らさずひっそりとその地を訪れた。

 驚異的な早さで飲み込んだ亡骸を次々と自然へと還し、終わった後も夜明けまでのひとときを少年のいた場所を惜しむように過ごしていた。


 ちなみに、この作業は放置され行く死体を憐れんだ少年の発言から始まった、ごく最近の話である。




#魔物少年の留意事項


 人と共に暮らすにあたり、出発前に彼の簡単な常識チェックを集落のみんなで質問を持ちより行われることになった。

 識字や、道具の扱い方に、物事の考え方。

 人姿に全くの違和感のなかった彼に、それはほぼ杞憂に終わった。

 寧ろ、月の満ち欠けを一ヶ月──新月を一日目とした三十日間──と数え、十二ヶ月で一年という人の暦まで知っていて驚いたくらいだ。


 そうして城に着いてお父様とこれからの段取りを話し終え、明日に備えて寝ようという今に至って──彼はやば、と言葉を漏らした。


「すっかり忘れてたけど、ここにいる間は人の姿でベッドとかで寝ることになる?」


 私たちにとっては至極当たり前のことを、彼は困ったように口にする。そしてその理由はすぐに語られた。


「寝るときは人型禁止って言われてるんだ。魔物時と比べて人型は打たれ弱くなってるから無意識に警戒してるらしくて。眠りが浅くなって良くないし、何より一番の理由は緊急時(叩き起こされたとき)の寝起きが最悪で」


 詳しく聞けば、そうなった時の反撃は相手の息の根を止めにかかるほどに容赦がないんだとか。

 うっかり寝て起きてみたら辺りが血の海とか実際にあったそうで、次は御免だと言っていた。


 これは彼に限らず彼の家族もそうらしいんだけど、寝込みを襲う卑怯者には情け無用の鉄槌をの精神からきているらしい。

 ちなみに魔物時だと多少の攻撃なら平気になるので起きることはないという。

 今一イメージが沸かないけど、温厚な人が怒るととても恐いっていうやつに似た話になるのかな?


 そして夜の話に戻るけど、魔物時の大きさは多少なら変えられるとのことで、コウには彼用に宛がった部屋の室内でなんとか寝てもらうということで落ち着きました。

 本人としては外の方が良かったみたいだけど、外で寝てて誰かに見られるのはまずいからね。


 それで、実際に丸まってもらった時の大きさは二人掛けのソファー並だった。

 見上げるくらいの大岩サイズだったのに比べればましだけど、ベッドで寝るにはちょっと……と思ってたら床で寝るんだとか。

 使われないだろうベッドを見てふと思ったが、これは憧れのお泊まり会というやつが出来るかもしれない?


タイトルの♭は少し前の捕捉、#は現在か先に進む話って感じでふってます。なんとなく


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