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第6話 企画バトル開催!

 刑事たちが来てから数日後、無事に退院したアンズ先生から、各出版社の担当者に、呼び出しの連絡があった。

 芸文館の的場、コスモス出版の細井、ララサンシャイン社の花森はアンズ先生の事務所にうかがい、MARUYAMA社の黒川だけがオンラインで打ち合わせに参加することになったのだが。

 事務所の会議室で、待っていたアンズ先生から衝撃的な発表が行われた。


「次のレシピ本は、この中で一番素晴らしい新企画を提案してくれた出版社から出します!」


 その言葉に、コスモス出版の細井が悲鳴をあげる!

「アンズ先生! 次はうちの会社の番ですが!

 お約束をお忘れでしょうか!?」

「それは、私が()()()()状況になる前の話でしょ?」

「で、でも、前からそういうお話でしたし。

 企画内容も、すでに決まってます」


「あのさー、企画が決まってるって言っても、仮タイトルと概要だけじゃん!

 バズった後で、『簡単でコスパ重視、でもバズるレシピ』なんて、ぬるい企画の本を出してどうするのよ!

 私が発表済みのレシピのアレンジと、これから考えるレシピをかき集めて、手軽に作った本が、次の本であっていいはずないでしょ!

 そんな企画は、キャンセルよ!」

 そうアンズ先生から言われた、コスモス出版の細井は真っ青な顔になる。


 さらに塚本マネージャーから、

「アンズ先生は、これを期に出版活動を見直したい、ご自身の次の代表作になる本を作りたい、とおっしゃています」

と言われる。


 それに対して細井が、

「そ、そんな。こちらにも出版計画というものがありまして……。

 次の本は今期中に発行しないとまずいんです!」

としつこく食い下がるが、


「うるさい!

 ガタガタいうと、今出してる本を全部引き上げるわよ!

 私がバズったからって前の本を増刷することを決めちゃって!

 そんな売り方しかできないの、あなたたち!」

とアンズ先生が痛いところをついてくる。


 確かにそのとおりで、4社合同でアンズ先生の本の「復帰記念フェア」を、ネット書店とリアル書店で企画したところ大変好評で、ララサンシャイン社でも、すでに発売しているアンズ先生の本を軒並み重版することが決まったのだった。


「とにかく! 今のバズった私にふさわしい、これまでにないレシピ本の企画を出してきた出版社から、次の本を出すわ!

 企画検討の期間は、1週間よ!」

とアンズ先生が宣言した!


 それで、各社「大変なことになった」と、急いでこの話を会社に持って帰ったのだった。

 花森も、すぐに会社に戻って部長の山下に報告して、この1週間で会社総出で、練りに練った企画書を用意して、次の本の企画プレゼンに挑むことになったのだった。



 次の日。花森は今日は在宅勤務なので、自宅のパソコンの前で最近のレシピ本の状況をおさらいする。

 いまのレシピ本のトレンドは、「せいろ蒸し」だ。

 「せいろ」という蒸し器を使った料理が、油を使わないヘルシーな料理として注目されている。

 この「せいろ蒸し」が、健康志向とSNSでバズる料理として、流行になっている。

 その流行のちょっと前は、世界的なウイルスの影響により、自炊が流行ったことで、簡単に安くできるレシピが人気になり、今でも人気がある。


 ただ花森が、アンズ先生で作りたい本は、スイーツ本だ。

 アンズ先生の母親、大物俳優の浅野涼子は、群馬の旅館「彩栄館」の娘で、和食料理が得意なことで有名で、過去に勝利本を出したことがある。

 アンズ先生は、小さいころから母親の手ほどきを受けていたらしい。

 だが、アンズ先生がSNSにアップしたのは、とにかく簡単でネットで映えることを重視した鮮やかな料理で、でも映えるだけではない、とても美味しい料理の数々だった。


 バズったのが、みんなが自炊しなければいけない時期だったから、アンズ先生のレシピはおかず中心だったのだが、アンズ先生のレシピで自宅で料理するようになった花森は、そのおかげでやせられたのだった。

 花森は、特にアンズ先生がたまにSNSにあげるスイーツが大好きで、それらのスイーツは本当に華やかで、でもダイエットや健康にも気を使われていて、甘さ控えめだけど、どれもとても美味しくて、ふわふわで、夢中になって作って味わったのだった。



 1週間が経ち、プレゼン当日を迎え、各出版社の編集者全員がアンズ先生の事務所に集結した。

 新しいレシピ本の企画案は、年齢順に発表することになって、花森が最後の順番になった。

 各々の企画内容は秘密なので、一人ずつ事務所の会議室に入っていき、企画書を配ってアンズ先生と塚本マネージャーにプレゼンしていった。

 こうして行われた各社のプレゼンだったが、その結果は……。

 すべて『不採用』に終わった。


 事務所の会議室に再招集された編集者4人に向かって、アンズ先生から、

「どれもこれも、ありきたりの企画ばかりね!

 これが、私の次の代表作になる企画だって言うの!

 特に新人の花森さん!

 あなたにはちょっと期待してたのに、がっかりだわ!

 それ、本当にあなたの企画なの?」

という、お叱りの声が飛ぶ!


 アンズ先生、鋭い! そうなのだ。

 今回、花森が提案した企画とは別の企画はあったが、社内の会議で否定されてしまっていたのだった。

 前任者の中沢がまだ面会できる状態でないため相談もできず、前回の企画の反省を活かして、売れているスイーツ本を徹底的に分析して、渾身のスイーツ本企画を提案した花森だったが、社内では、

「スイーツ本は、おかず本より市場規模が小さい」

「スイーツ本では、アンズ先生の実績がない」

「スイーツは、コスパが悪く、いまじゃない」

などの理由で、会議で否定されまくってしまった。

 せめて中沢から「ダメだ」と言われるのならまだ納得できる花森だったが……。


 結局、今回は中沢が入院する前に検討していた『時間いらず。超速、映えるバズ飯』の企画を提案してみることに社内で決まったのだったが、案の定ダメだったわけだ。


 アンズ先生が、4人を見回すと、

「こうなったら……私から、新企画を提案します!

 この企画に乗っかれる出版社と、次の本を出します!」

と宣言する。

 その瞬間、全員のスマホが反応し、一枚の企画書が、塚本マネージャーから送られてきた。


 花森が企画書を開くと、そこには『サバイバルうま飯』というタイトルが書いてあった。

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