第36話 ハッピーエンド! <第3部 完>
アンズ先生から、
「花森。
この本を作ったら、ララサンシャイン社を辞めて、私のマネージャーになってくれれない?」
と言われて。
「は、はい!?
アンズ先生、何を言っているんですか?」」
と、花森が戸惑いながら聞き返すと。
「マネージャーだった塚本は、群馬の劇団で頑張りながら、東京進出を狙うとか言ってて、こっちに帰ってこないし。
今度、ママが市長選に立候補することになって、アサイ企画も議員事務所になっちゃうし。
改めて個人事務所を立ち上げなきゃいけなくなったのよ。
でさー、花森にマネージャーをやってほしいのよ」
「えー、そんなこと言われても!
私、本づくりをまだはじめたばかりですし!
無理です!
安島さんか、OCHAN.先生でいいじゃないですか!」
「はー! まさか断る気なの!?
いいじゃん!
いまでも花森って、私のマネージャーみたいなもんじゃない!
うちのスタッフはみんな料理バカすぎて、マネジメントなんてできないのよー!
本だって、出版社にいなくても、作れるでしょ。
お願い! ほかにいっしょにやりたいと思える人がいないの!
私を助けて!」
「急な話しすぎます!
会社も、なんていうか……」
「ララサンシャイン社には、貸しがあるから!
『引き抜き』だとかって、文句は言わせないわ!」
「あのときの『貸し』って、そういう意味だったんですか!」
と驚きながらも、『これ、私が断ったらどうするつもりなんだろう』と思うと、アンズ先生の行き当たりばったりな性格に不安しかない。
だけど、自分の〝推し〟に「私を助けて」とお願いされて、これまで文字通りアンズ先生に命を捧げてきた花森が、断れるはずがなかった。
「わかりました。やります!
だけど、アンズ先生の活動は『サバイバルうま飯』と『スイーツ』の二本立てですからね!」
とスイーツのことを念押して引き受けることにした花森に、アンズ先生が質問する。
「ねー、花森。私のスイーツへのこだわりって、いったいなんなの?
あんたって、そんなにスイーツ好きだったっけ?」
「……学園ドラマ『料理やろうよ!』で、料理部部長だったキョウコ様の特技と言えば?」
「『スイーツづくり』……。
えー!!! あんた、そんな理由で私に『スイーツ本を作れ、作れ!』ってうるさかったの!? なにそれー!」
「キョウコ様は、いつまでも『スイーツ作り』が一番大好き、大得意なんです!
ドラマの中で、一番仲のいい『ヒカリ』といっしょに、スイーツを食べることがキョウコ様にとって一番の幸せなんです!
この設定は、絶対守ってください!」
と、やっかい迷惑オタとして。
心に秘めていた想いを、「推し」に伝えることができた、花森だった。
こうして、ドラマの中での、
「辛いときは無心に美味しいスイーツを作って食べるんだけど。
とっておきのスイーツを一人で作って、食べすぎると太るから、ちょっとだけしか食べれないの!
でも、これからは二人で作って食べようよ」
という、キョウコ役のアンズ先生が放った名言を胸に刻み、アンズ先生を世界一の料理研究家にすることを、心に誓った花森だった。
<第3部 完>
fin.




