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第35話 まるっと解決?

「おかあさん? おかあさん! おかあさん!!」


と浅野先生が、女将に駆け寄って声をかけるものの、意識がない様子だ!


「だれか、だれか! お医者さんを呼んできて!

 救急車、救急車も呼んで!」

 と半狂乱になる浅野先生に、女将が苦しそうに、

「リョウコ、リョウコ……」

と、息も絶え絶えに呼びかける。


「何、おかあさん!」

「アンちゃんが継いでくれなそうだから、やっぱりあんたが旅館を継いでくれないかい」

というと、ニタリと笑う女将だった。


「もう! 死にそうな振りなんかして! 人騒がせな!」

と、元気な様子の女将に怒り心頭の浅野先生に、

「えー! いいじゃん! ママ。

 ここにパパもいるんだし!

 ママが引退して、おばあさまの後を継ぎなさいよ!」

と、アンズ先生が提案した。


「いー、やー、よー!!!

 私、まだまだ現役の女優よ!

 表舞台に出ないで、裏方にまわるなんて、まっぴらごめんだわ!」


「じゃあ、どうするのよ!

 こんな裏家業のある実家なんてことがバレたら、芸能活動なんて無理じゃん!

 ママが継がないのなら、もう旅館を閉めるしかないよ!」


「バカ、いま辞めたら、どこから旅館のヤバい情報が漏れるか、わからないわ!

 そうなったら、私たち一家は破滅よ!」


「じゃあさー! ママ、()()()に出なさいよ!

 いまのままじゃ、誰が旅館を継いだって、同じよ!

 こんなヤバい経営していたら、いつかバレるって!

 ママがここの市長になって、市ぐるみでこれまでのヤバい件を、全部きれいにして。

 ここを、健全な高級老人ホームに生まれ変わらせなさいよ!

 それしかないって!」

と、アンズ先生が驚きの提案をすると。


 ハッとした表情に変わる、浅野先生。

「私が市長……」

「ママ!

 裏稼業で旅館や街を延命させたって、未来なんてないって!

『超・高級老人ホーム』を中心にしたクリーンな街に生まれ変わらせて、が市長として街を引っ張るという、表舞台にママが立ちなさいよ!」


「そうね……。私の友人の元・女子アナも、都知事になってるもんね……」


「そうよ! ママを目当てにしたお客さんがまだ泊まりにきているうちに、旅館ごと、この街の経済を作り変えて、なんとかしなさいよ!」

と、アンズ先生に言われると。まんざらでもない表情を浮かべる、浅野先生だった。


 こうして、親子三代のすったもんだがあったものの、最終的には浅野先生が引退して、旅館を継ぐことで、ひとまず話が落ち着いたのだった。


 群馬での怒涛の日々を乗り越えて東京に戻った花森は、新刊のPRに忙殺されながらも、いろいろと相談に乗ってもらっていた鴻上と黒川の二人だけには説明しておかないといけない思って、後日二人をランチに誘ったのだった。

 この日も、神保町集合だ。ランチは中華料理店にして、花森がおごることにした。


 食後にジャスミン茶を味わいながら、群馬で起こったことを手短に話した。

 もちろん、旅館「彩栄館」の真実の姿は話せないので、新刊本のPRのために群馬に行ったところ、偶然にも駅前で劇団に所属して隠れていた塚本マネージャーを見つけたことと、塚本マネージャーは俳優を目指すために事務所を辞めたのだった、ということにして手短に伝えたのだった。

 花森のつたない説明では、二人の疑いの目をはらすことはできなかったものの、最終的には、なんとなく事情を察して二人とも受け入れてくれたのだった。


 それで、さらに浅野先生が芸能界を引退して実家の旅館を継ぐことと、市長選に出馬することになったので、アサノ企画が議員事務所に変更することになったこと話したところで。

 当然ながら、

「それなら、アンズ先生はどうするの?」

 という話になったわけだが。

『それなんだよねー。これって二人には話してもいいのかな……』

と、アンズ先生との会話を、思い出す花森だった。


 さかのぼること数日前、アンズ先生の自宅で、『アンズ先生のサバイバルうま飯』の次の本として発売が決定した『アンズ先生の映えるスイーツレシピ』の打ち合わせを行っていたとき。

 アンズ先生が考案したレシピをチェックしながら、本のコンセプトを相談したり、撮影日程や予算のことなどを、あれこれと花森が考えていると。


 その様子を見ていたアンズ先生が突然、

「ねぇ花森。

 この本を作ったら、ララサンシャイン社を辞めて、私のマネージャーになってくれれない?」

と言い出したのだった。

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