第19話 盗作を告発したのは誰?
ファミレスに行くと、サトウは全く同じ様子で、同じ席に座っていた。
花森が席に着くと、早速サトウが本題に入る。
「実は、最初の投稿者だけでなく、盗作を告発した投稿者もプロファイリングを進めていました。
両者の関係性を見ることで、最初の投稿者の情報も補完されるので。
それで、アカウントをを削除した最初の投稿者より、匿名でも投稿が残っている第二の投稿者のほうが、その正体を暴くための材料が集まったんです。
ただ、最初の投稿者と、第二の投稿者の特徴がかなり似ていて、私は同一人物ではないかと疑っていたんです。
ですが、そうではなかった」
というと、フリードリンクのアイスコーヒーをぐっと飲み込むと、話を続けた。
「そこで、第二の投稿の候補者から、加藤ほかララサンシャイン社の人物をすべて除きました。
また、アンズ先生のところの現スタッフも除いてみて、犯人候補の洗い出しを行ったところ……」
と言って、花森のほうにパソコンを向けてきた。
「一人、面白い人物に行き当たりました」
パソコンの画面には、ある女性のSNSの画面が映っていた。
「この女性は……」
「北千住より少し千葉方面に住んでいる、30代の料理研究家です。
『OCHAN.(おーちゃん)』という名前で、料理研究家として活動しています。
アンズ先生のレシピ盗作疑惑を投稿したアカウントは、OCHAN.の裏アカだと思われます。
OCHAN.は料理研究家として、公式SNSでレシピを公開したり、調理を配信したり、自宅兼料理スタジオで料理教室を開いたりしています。
そして、OCHAN.先生は一時期、神保町にある出版社、コスモス出版に頻繁に出入りしていました。
ですが、アンズ先生が山中で殺害されかける事件が起こった後は、神保町に行かなくなっています」
「えっ! あのコスモス出版ですか……」
「そう、アンズ先生を殺害しようとした細井さんが勤めていた、あのコスモス出版です」
と確認し合う、花森とサトウ。
「そして、OCHAN.先生がコスモス出版に頻繁に行ってた理由が、料理研究家として利用している公式SNSへの投稿から、わかりました」
と言って。
OCHAN.先生が、過去にした公式SNSの投稿を、花森に見せてきた。
そこには、こう書いてあった。
『コスモス出版様から、初めてのレシピ本の発売が決定しました!!!
詳しいことはまだ書けませんが、この夏には発売できそうです!!!
私の夢がかないました!!!!!!』
「花森さん。たしかコスモス出版の料理本の編集部は、例の事件の責任を取る形で解散になったんでしたっけ?
コスモス出版から、OCHAN.先生が料理本が出せなくなったことは想像できます。
ですから、OCHAN.先生について調べてみてはいかがでしょうか?」
料理研究家であるOCHAN.先生の住所は、自宅で料理教室を開いていたので、調べてすぐわかった。
花森が、OCHAN.先生の料理教室のホームページを目にしながら、
「あの、この人が、二回目の投稿者だという証拠はありますか?」
とサトウに聞くと。
「盗作を告発した投稿者とOCHAN.先生の公式SNSの投稿は、内容が非常に似ていて、時間的に日中と夜とで、二つのアカウントを使い分けているようです。
内容だけでなく、使っているスマホ、SNSアプリ、写真アプリも一緒です」
「そうですか……。ただ、それだけで犯人だって言えますか?
なにかもっと決定的な証拠はありませんか?」
「もちろん、あります。
こちらがOCHAN.先生が公式SNSで投稿した写真で、こちらが裏アカウントに投稿された写真です。見切れているカーテンとテーブルの柄が、両方とも同じです。
撮影場所が同じで、公式SNSには『部屋で撮影した』ものだと書かれています。
この家に踏み込めば、証拠が見つかるはずです」
そこで、花森は黒川に協力を急遽お願いして、恋人同士という設定でOCAHN.先生の料理教室の体験レッスンに応募することにした。
幸い、平日なら昼間の時間に空きがあったので、次の日の体験レッスンに応募することができたのだった。
次の日、黒川と向かった料理教室の場所は、駅から10分ほど歩いた一軒家だった。
玄関でインター―フォンを鳴らし、
「こんにちは! 料理教室の体験レッスンにうかがいました」
と花森が言うと、
「はーい。あなたが新山さん?」
という女性の声がする。
花森は用心して新山という偽名と適当なプロフィールで登録していたのだった。
「はい。私が新山で、こっちが石井です」
と花森が、自分と黒川の偽名を名乗ると、
「そうなの? ……ごめんなさい。ちょっと待っててね」
と言う声がした。
そのまま、少し待たされて、ガチャと玄関が空き、少し緊張した面持ちの女性がヌッと出てきた。
OCAHN.先生は、オシャレメガネをした黒髪の美人だったが、かなりの長身で大柄で、体つきも引き締まってて、やや威圧感を感じた花森と黒川だった。
「ごめんなさい。少し準備に手間取ってしまって。
いらっしゃい」
と言うと、1階の教室になっているリビングにまで、二人を招き入れた。
そこで、OCAHN.先生が、ウェルカム・ドリンクとして、スムージーを出して二人を出迎えてくれた。
ただ、そのスムージーは健康重視なのか、お世辞にもおいしいとは言えず。
料理研究家としてのOCAHN.先生の腕前に、不安を感じる花森と黒川だった。




