第14話 真犯人は……
花森が推理した、パーティー会場で甲殻類エキスを料理に混入させた犯人は……アンズ先生だった。
「えー、私が犯人!? なんでそう思うの?」
と驚いた様子のアンズ先生だったが、ちょっと楽しそうだ。
深く息を吸って、はーっと吐き出した花森が、改めてアンズ先生の瞳を見つめて話し出す。
「甲殻類エキスが混入されたのは、アンズ先生が完成した料理の味見をした後になります。
先生が、味をチェックしたことは、スタッフさんたちが証言しています。
そして、状況からして、スタッフの誰かによって混入された可能性は高いはずです。
なのに、ことあるごとにアンズ先生は、『犯人はスタッフじゃない』とおっしゃています。
アンズ先生は、スタッフが免罪になることを恐れていたんじゃないですか?」
「それは私が『犯人』だから、ってこと?
ずいぶん強引なこというのね、あなた」
「それだけじゃありません。
アンズ先生……。パーティーの途中から、ずっと調子が悪そうでしたよね?
てっきり、お疲れだからだと思っていたのですが……。
先生、パーティの前に〝甲殻類エキス入り〟の春雨を試食したんじゃないですか?
試食したから、パーティーの途中で、アレルギー症状が出始めていた。
さらに、パーティー会場で出された料理を食べたから、症状を悪化させたんじゃないですか?
もちろん個人差はありますが、締めに出された小さいお椀に入った春雨でした。そのぐらいの量で、あそこまで激しいアレルギー反応が出るとは思えなくて。
ネットでも、『大げさ』とか『嘘くさい』とか書かれてましたけど。
自らの意思で、危険な量のギリギリまで料理を食べたんじゃないですか?」
「 へー。面白言うことを言うのね。
じゃーなんで、自分が犯人なのに『犯人を見つけた会社から本を出す』なんて言って、犯人を探させたの?」
と、その美しい顔と大きな瞳で、じっと花森を見つめる。
思わずポーッとなりながらも、
「それは……。
被害者である先生を疑う人が出ない自信があったから?
あるいは。
犯人がアンズ先生だとわかっても、編集者なら『本を出すためには黙っておくしかない』と思うはず、だからじゃないですか?」
と花森が言うと。
アンズ先生が満面の笑みを浮かべて、
「正解よ! よくわかったわね!
私が犯人よ!」
と言ったのだった。
あまりに堂々と犯行を認めるので、驚く花森だった。
「やっぱりアンズ先生が、犯人だったんですね!
なんでこんなことを……」
「そんなの〝本を売るための話題作り〟に決まってるじゃない!
紙の本はもう限界だ!
って、最近はどの出版社でも言っているわ!
戦争と物価高と円安で、紙代もインク代も輸送代もあがっているんでしょ?
書店もドンドン無くなっているし!
私の本も、新刊を出すたびに数字が落ちているし。
これぐらいのことでもして話題作りしないと、本が売れない、と思ったの!」
「そんな理由で、ご自分の料理に甲殻類エキスを入れたんですか……。
自分が何をしたのか、わかっていますか!
命にかかわっていたかもしれないんですよ!」
「それはさー。
ふだん使ってない調味料だから、味付けがうまくいかなくて。
思ったより、味見することになっちゃって……。
スタッフからも『味見し過ぎすぎです、先生!』って怒られたんだけどね」
「ということは、スタッフさんもグルなんですね!
最初から甲殻類エキスを入れる予定で、料理を作ったんですね!
アンズ先生!」
「そうなんだけど……。
でも、ここまで大事件になったのは、あなたにも責任があるのよ!」
はっ? 私の責任? いったい何のことだ?




