表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/29

第12話 犯人、現る

 花森とアンズ先生のところに、芸文館の的場が近づいてきて、

「あーあ、アンズ先生が死んでくれていたら、君は助けられたのに」

と悔しそうに言うと、さらににじり寄ってくる。 


「的場さん……。的場さんじゃないですか!

 どういうことですか?」


「本当に残念だよ。

 これで二人とも殺さなければいけなくなってしまった。

 この状況なら、二人が溺れ死んだことにして、私たちが見つけたことにすれば、不自然じゃないだろう? なあ?」

と言って、後ろにいる、もう一人に声をかける。


 雨の中で、後ろでフードをかぶって顔を隠しているけど、レインコートの下に着ている服がちらっと見えてわかった。

 コスモス出版の細井だった。

 黒いレインコート姿が、さっきアンズ先生を突き落とした黒い影と重なる。

 そうか、そういうことだったのか!

「あなたたちが、アンズ先生を川に突き落としたんですか!」

 と花森が叫ぶ。


 すると、後ろの細井が!

「ぜんぶ、アンズ先生が悪いんじゃない!

 私との約束を破って、新刊本の発売をキャンセルするから!」

と叫び返した。


「そんな理由で……そんな理由で!

 先生を川に突き落としたんですか!」


「新人編集者のあなたには、わからないでしょうね!

 アンズ先生の新刊を出せるかどうかに、今季の編集部の数字がかかっているのよ!

 数字が悪かったら、編集部から別の部署に異動になるかもしれない!

 私、今こんなお遊びに付き合ってる場合じゃないのよ!」


 そんな細井の言葉を受けて的場も、

「俺だってそうだ。

 もうあと数年で定年だってのに、今さら新しいことに挑戦しろだぁ?

 もう出版業界全体が危機かもしれないってときに、何を言ってるんだ!」

と意識のないアンズ先生に向かって、吐き捨てる。


「そうよ!

 先生が、こんなおばさんと新しいことをいっしょにやろう、なんて思うわけないわ。

 これは、ていいのいい、リストラ、解雇宣告じゃない!」

と細井も同調する。


「だから、二人で考えたんだ。

 いま、先生が死んで、『アンズ先生・追悼フェア』を大々的にできれば、新刊が出なくても、既刊の増刷や改訂版で稼げるだろうって。

 そうすれば、今期の数字も安泰。定年までの時間も稼げる。

 だから、アンズ先生には死んでもらうことにした」

と言って、さらに近づいてくる的場と細井に、花森の中で激しい怒りが沸き起こる。


「ふ、ざけんなー!

 お前たちは、アンズ先生の担当編集者だろう!

 編集者が作家を殺そうとするなんて、何を考えているんだ! 許せない!」

と強い言葉をぶつける花森だったが、二人には響かない。


「バカな娘だ。

 アンズ先生を追って川に飛び込まなければ、こんなところで死なずに済んだのに。

 お前も、ここで死ぬんだ!」

と言うと、的場が花森に襲い掛かって、羽交しめにした!


「ゆり香、いまだ! アンズ先生を、川で窒息させろ!」

と的場が細井に促すと、寝そべっていたアンズ先生を、細井が川に引きづっていく。

 川でちっ息させて、溺れたように偽装するつもりなのだ。


「アンズ先生!」

 花森がジタバタするが、動けない!


 そのとき!

 小雨で暗くなった川べりに、一筋の光が差し込んだ。

 懐中電灯をもって、川下から走ってくる男がいた!

 鴻上刑事だ!


 鴻上が走ってくると、そのまま細井に突進した!

 細井がアンズ先生の体を投げ出して、倒れ込んだ。

 それを見た的場が、あわてて花森を放り出して、鴻上に襲いかかったものの、鴻上が背負い投げで、的場をぶん投げた!

 地面に叩きつけれられて、的場が動けなくなる。


 倒された細井がよろよろと起き上がったものの、その様子を見て、その場で立ち尽くした。


 鴻上が二人に手錠をかけると、花森のところに駆け寄ってきて、

「大丈夫かい!! 頭から血が出てるよ!」

と心配すると、よろけながらも、

「川の中でどこかにあたって、ちょっと切ったみたいだけど。

 意識はしっかりしています。

 それより、アンズ先生が! 先生が危険な状態なんです!」

と花森が伝えると、

「応援を呼んでいるから、大丈夫だ!」

と力強く言って、花森に横になるようにうながす、鴻上だった。


 それから救護隊が駆けつけると、アンズ先生と花森は担架で山のふもとまで運ばれて、病院へ直行となった。

 幸い、二人とも川に流されたときにあちこちを打ったケガと、少し水を飲んだりしたものの、命に別状はなく、数日間の入院で済んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ