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第11話 事件は二日目に起こった

 登山二日目。


 朝食は、キャンプ飯で定番のホットサンドメーカーを使った料理をいろいろ試す。

 食パンに卵とベーコン、ほうれん草などを挟んで、いろいろな調味料を使って焼いただけでも、とっても美味しい!

 糖質オフを考えて、パンで挟まずに、ホットサンドメーカーで下ごしらえした肉や魚を直接焼いてみたり、チーズや餃子の皮でくるんだりしてみたけど、やっぱりパンで挟むのが、一番美味しい!

 定番を外しつつ、美味しいレシピを考えるのは至難の業で、試食をたっぷり味わいながらも、自分ならどうするかと考え込む花森だった。


 朝食を済ませると、その細い体からどこにそんな脚力があるのか、アンズ先生が次のキャンプ場を目指して、山道をドンドン進んでいく。

 なんとか食らいついていく花森と黒川の若手チームだったが、荷物が重くて置いてかれ気味の安島ほかスタッフと、さらに遅れる的場と細井の熟年チーム。


 細い道を黙々と歩いていると山の天気は変わりやすく、次第に雨が降ってきた。

 それで、空が暗くなり、雨で視界もかなり悪くなってきた。

 下り坂になっている箇所の下り切ったところで、アンズ先生、花森、黒川の三人で遅れている人たちを待っていると、安島たちが追いついてきた。

 だが、的場と細井がぜんぜん追いついてこない。

 なので、一番体力がある黒川が、「心配何で、俺、様子を見にいきますよ」と言い出す。

「雨の中で待っているのも大変だから、みんなは次のキャンプ場まで進んで待ってて」

と言って、来た道を引き返そうとする黒川に、

「一人で大丈夫? はぐれたりしない?」

と心配する花森だったが、

「ここまで一本道だったから、大丈夫だと思う。

 ここならまだGPSも生きているし」

といったやり取りをして、先に進むことにしたアンズ先生一行だった。


 そのまま、一本道の山道を進んでいると、左側が川になり、 なだらかな坂になった狭い道を進む。

 木が生い茂った道で、小雨に視界が遮られる。

 そして、坂のてっぺんあたりに、先を急ぐアンズ先生が到着した瞬間……。


 突然横から出てきた黒い物体が!

 アンズ先生にタックルして、 横に吹っ飛ばした!

 そのまま、横の川にドッボーンっ! と突き落とされる、アンズ先生!


 アンズ先生が、黒ずくめの不審者に、川に突き落とされたんだ!

と、目の前で突然起こった凶事に、一瞬ついていけなかった花森だったが。


 濁流の中を、アンズ先生が流されていく! とハッと気づいた、その瞬間!


「先生!」


と花森の体が勝手に動いて、気が付いたときには、川に飛び込んでいた!


 思わず川に飛び込んでしまった花森だったが、泳ぎは得意ではない。

「先生! せんせーい!」

と川の中で、先に流されているアンズ先生を追いかけながら、濁流に巻き込まれて、意識を失ったのだった。



 花森が目が覚ますと、そこは浅くなった川の中だった。

 だいぶ流されたようだが、川の浅瀬に流れ着いて、なんとか一命はとりとめたようだ。

 だが、頭がガンガンする。頭に手を当てると、ぬるっとする。

 手のひらを見ると、血だ。


 何とか起き上がると、少し先の川の中に、横たわっている人の姿を発見した。

 『アンズ先生だ!』

となんとか力を振り絞って、よろよろと浅くなった川の中をざぶざぶと歩いて、アンズ先生のところまでたどり着いた。


 川の浅瀬に乗り上げたアンズ先生に、

「先生、アンズ先生!」

と朦朧としながらも、必死に花森が声をかける。


 アンズ先生は、呼吸と脈はあるようだが、意識を失っているようだ。

 花森はスマホを取り出し、助けを呼ぼうとするが、圏外になっていて、どこにも連絡が取れない。

 頭の痛みもあって、考えがまとまらない。

「どうしよう……」

と途方に暮れていた、そのとき!


 川に沿って、上流からこちらに歩いてくる二人の人影が見えた。

 雨の中、こちらに向かってくる二人組は黒いレインコートを着ていて、フードをかぶっているので、誰だかよくわからない。


 人影に向かって、必死に手を振って、

「おーい! おーい!

 こっち、こっち!

 アンズ先生が、人が、川で溺れて、危険な状態なんです!

 早くスマホがつながる場所まで移動して、救助を呼ばないと!

 助けてください!」

 そう、花森が叫ぶと。


 用心した様子で近づいてきた人影が、

「ということは、アンズ先生はまだ生きているんだな」

とがっかりした声で言ってきた。


 その声で、花森には誰だか、わかった。

 芸文館の的場だ!

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