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68. 決闘(その1)



 決闘。

 それは古来より伝わる紛争や物事を解決する手段の一種。要は「まどろっこしいから暴力で決めようぜ」というやつだ。


 とはいえ魔物という人類の脅威が立ち塞がる世界。基本どこの国でも「命を賭した」決闘は固く禁じられており、往々にして紛争の解決手段として定められた厳密なルールに則ることとなる。


「両者共に手持ちの杖は没収する。使用するのは決闘用の短杖と木剣のみ。それで両者よろしいか! フェリペ殿下、パウル殿」

「ああ」

「……ええ、構いません」


 決闘用の杖はあえて魔力の伝導率を極限まで鈍らせ、本来より殺傷力の低い魔法しか撃てぬよう調整されている。フェリペは杖を受け取るや、幾度か人のいない方向に向け魔法を放つ。念の為、道具に不具合がないかの確認をしているのだろう。


 結局あの後、流れるようフェリペとパウルの決闘が行われることが決まり、皆で宴席を切り上げランバル邸の庭に出ることとなった。


 夜も深い中、それでも周囲はランバルの従者らが使う魔法や掲げる灯火により、明るく照らされている。


 両者は立ったまま、審判の合図を待っていた。

 戦いの勝敗はただ一つ。相手が膝もしくは背や尻を地面に付けた状態で、剣もしくは杖をその身に突きつけることのみ。


「両者、名乗りを」


 その言葉に応じ、フェリペとパウルが順に己が名を告げる。数秒の沈黙の後、審判の一言と共に戦いが始まった。


 互いに杖をかざし、呪文を詠唱する。決闘では、詠唱速度と最初の数節で、おおむね魔法の放たれるタイミングを推測する必要がある。この場合、早いのはフェリペか。高速の火の矢が放たれるより前、パウルが身をひるがえし、撃ち込まれたそれを回避する。


 次いでパウルの杖から、凄まじい速度の光が宙を跳ね返るよう展開された。雷の魔法。火属性と風属性の複合により発動するそれは、全属性の中でもっとも素早く敵を射抜くのだと、ロミアスから習ったことを思い出す。


 案の定フェリペはその一撃を回避できず、まともに魔法の直撃を喰らってしまう。元々威力は調整した上で、決闘用のそれから放たれた魔法といえど、数秒体の自由を奪うには十分だろう。

 

 パウルは長剣を構え、相手の方に近づく。電撃を食らったフェリペは、体を震わせているものの辛うじてその膝は地面に着いていなかった。相手が麻痺している内に、剣で突き倒し勝負を決めるつもりなのだろう。しかし。


「ハッ……見た目どおりの坊ちゃんだこった」


 フェリペはそう言って微かに笑うと、素早く片足を振り上げパウルの長剣を上空に弾き飛ばす。

 あっと相手が声を上げる間もないまま、彼は腰から引き抜いた木剣の刃先でパウルの肩を叩き、そのまま床に転がった男の身に剣を突きつける。


 

 一人の男を巡る戦いの勝敗は、瞬く間に決した。



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